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モディ首相の訪日と成果(10月27-29日)― 平林理事長による評価―

2018年10月30日掲載 NEW!


モディ首相の訪日と成果

平成30年10月30日

文責:日印協会理事長 平林 博


インドのナレンドラ・モディ首相は、10月27日(金)夜に来日、28日(土)と29日(日)の二日間、首脳会談ほかの行事をこなして離日した。下記は、その内容と意義に関し取り急ぎまとめたものである。


1.安倍・モディ首相の親密さと安倍総理による破格の接遇

今次訪問は、日印特別戦略的グローバル・パートナーシップの一部をなす「両国首相による隔年ごとの相互訪問」の約束に忠実に従った実務訪問であった。両首相が会談するのは、今回で12回目であり、両首相の親密さと日印関係の緊密さがわかる。しかも、今回は、安倍総理による異例に手厚い待遇が待っていた。

28日、安倍総理はモディ首相を山梨県の富士のふもとにある自らの別荘に招待した。昼食はホテル・マウント富士での実質的な内容のある非公式昼食会であり、夕食は安倍総理の別荘におけるアット・ホームなものであった。破格の待遇と言える。午後には、FANUCの工場を視察し、その後特急に同車して東京に帰った。なお、霞が関や永田町界隈の主要道路には日印両国の旗が飾られるという公式訪問に近いものであった。

よく知られているが、わが国の総理が外国の首相を私的な別荘に招いたのは、1983年に中曽根康弘総理が親しかったロナルド・レーガン米国大統領を東京の奥多摩、日の出町にある私的山荘に招いて、世界にロン・ヤス関係を誇示して以来のことである。安倍総理がモディ首相を別荘へ招待したのは、昨年にモディ首相の出身地であるグジャラート州のアーメダバードを訪問した際に安倍総理夫妻を破格の待遇でもてなした答礼の意味がある。内外に向けて、日印両国の特別親密な関係と安倍・モディ両首脳の個人的信頼関係を発信した意義は大きい。筆者の長い外交官生活(44年)の中でも稀にしか見聞・経験したことのない我が国総理による外国首脳に対する破格の待遇であったといえる。


2.実務日程

29日 午前

・在日インド人代表たちとの会合

・河野外務大臣、世耕経済産業大臣、二階自民党幹事長、岸田自民党政調会長が順次モディ首相に表敬訪問

・日印ビジネスリーダーズ・フォーラム(中西経団連会長他)と会合、その後経団連・日本商工会議所など財界との昼食会

 午後

・日本経済新聞・JETRO共催のシンポジューム「Make in India, Digital Partnership and India-Japan Partnership in Africa」でモディ首相が講演

(以上すべて、宿舎の帝国ホテルにて開催)

夕方から夜にかけて総理官邸で

・首脳会談、各種協定の署名式

・共同記者会見

・安倍総理主催公式晩さん会      

その後、特別機で離日。


3.訪問の成果

多くの成果が挙がった訪問であったが、概要は次の通り。

首脳会談の冒頭、安倍総理は、国際会議での会談のほかに毎年首相が相手国を相互訪問する慣行は日印関係の原動力であり、「強いインドは日本の利益」「強い日本はインドの利益」、「日印関係は世界でも最も可能性を秘めた二国間関係」であるとして、モディ首相とともに地域や世界の平和と繁栄に貢献したいと述べた。これに対しモディ首相は同感の意を表し、歴史ある二国間関係を新しい分野に広げ、交流を強化したいと応じた。

これまで日印間では多くの合意がなされ、実施中であるが、今回の首脳会談で新たに合意したことを整理して下記に掲げる。なお、以下は、官邸のホームページを参照するとともに、外務省がまとめたものを土台にしていること(外務省のホームページ参照)をお断りしておきたい。ホテル・マウント富士での非公式昼食会では、地域情勢における日印協力のほか、直前に行われた安倍総理の訪中に関する報告・議論と北朝鮮への対応に関する日印の協力が話し合われた模様だが、事柄の性質上公開されないであろう。

(1)安全保障

・次官級で開催してきた外務・防衛対話(2プラス2)を閣僚級に引き上げることを決定 

・地域の連結性(Connectivity、道路・鉄道・港湾など人とモノの移動を容易にするインフラ建設などの施策)向上のため、インドとアセアン諸国を結ぶ東北インドの開発やバングラデシュ等における開発案件につき協力

・防衛に関する物品役務相互提供協定(ACSA)の正式交渉開始決定

・海洋安全保障に関する海上自衛隊とインド海軍の協力取り決め作成、全軍種(陸海空)間での交流強化

・日印宇宙対話の立ち上げ

(2)経済協力、高速鉄道

・ムンバイ・アーメダバード間500㎞の新幹線協力計画(昨年は1000億円を供与)、インドの在来線の鉄道安全に関する協力の一層の推進(JICAによる技術協力など)など7件に3164億円の円借款の供与を約束

(3)経済関係

・日印通貨融通協定(スワップ協定、規模は750億ドル)の合意

・日印デジタル・パートナーシップの促進

  ―日本の産業技術総合研究所とインドの工科大学ハイデラバード校(日本がハード・ソフト両面で協力中)によるAI技術の共同開発

  ―ロボティックス分野での共同開発

  ―次世代無線通信規格5Gの協業

  ―スタートアップ企業の相互進出への支援 

・「インド長寿化計画」と日本の「アジア健康構想」の連携

・食品加工工業など農業分野での協力推進

・新たなモノづくり学校の開校(すでに4校が開校済み)

・特許審査ハイウエイを通じた投資促進

・日印エネルギー協力転換プラン合意を含むエネルギー分野での協力推進

(4)人的交流

・観光、ビジネス、スポーツ、有識者、地方政府、国会議員等の人的交流の抜本的拡大

・来年1月からのインド人に対するさらなるビザの緩和

・デリーでの日本語教師育成センター立ち上げなど日本語の普及

(5)グローバルな協力

・インドが主導する「太陽に関する国際的な同盟(ISA)」の枠組み協定を日本が受諾

・エネルギー転換・脱炭素化に向けた世界的取り組みに日印で緊密に連携

・国連創設75周年に向けた安保理改革のためのG4での協力を日印主導で加速

・核兵器のない世界を目指し、対話継続

・東アジア包括的経済連携協定(RCEP)交渉の年内の実質的妥結に向けて協力、世界貿易機関(WTO)の重要性を再確認

・安倍総理からインドのシップ・リサイクル条約の早期締結を慫慂