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インド総選挙の結果と評価

インド人民党の圧勝でモディ政権の続投決まる

2019年5月24日掲載


1.5月23日、インド下院総選挙の開票が行われ、ナレンドラ・モディ首相率いるインド人民党(BJP, 形式的には党首はAmit Shah氏)が圧勝した。この結果、モディ首相率いる国民民主同盟 (NDA)が引き続きあと5年は政権を担うことになった。

2.5月20日に日印協会webサイトに掲載し、次いで会員の皆様にも拙論で紹介した出口調査では、NDAは277~352議席獲得の予想であったが、5月24日午前,現在の結果は, 予想上限の349議席であり圧勝といえる。NDAの中核BJPは303議席を獲得しこれまでより21議席増やした。

 他方、野党第一党で政権復帰を期したインド国民会議派(INC)は、ラフール・ガンジー総裁や人気の高いプリアンカ・ガンディー・ヴァドーラ幹事長(ラフールの妹)などの努力は報われず、これまでより10議席増の53議席にとどまり、はるかに及ばなかった。国民会議派が中核となっている統一進歩連合(UPA)は計83議席であり、NDAに遠く及ばなかった。

もっとも、国民会議派は、かろうじて野党第1党の地位は守った。


3.主な政党の獲得議席は、次のとおりである。1議席以下は省略。

(カッコ内は、前回2014年総選挙との比較)


4.主要政党の州別の勝敗をまとめると次の通り。

(小さな連邦直轄地などは省略)

 BJPがデリー首都圏をはじめ、主要な州をすべて席巻し、第1党となった。国民会議派は、パンジャブ州以外は大きな州で惨敗した。

・BJPが第一党となった州: ウッタル・プラデッシュ、マハラシュトラ,ビハール, デリー首都圏、ハリアナ, ラジャスターン、グジャラート、カルナタカ,マディア・プラデシュ,チャティスガール、アッサム、ジャンム・カシミール

・INCが第一党となった州: パンジャブ州、ケララ州、メガラヤ州、ナガランド州

・地域政党(カッコ内)が第一党となった州: 西ベンガル州(TMC),タミルナド州(DMK),アンドラ・プラデッシュ州(YSRCP),オディッシャ州(BJD)、テランガナ州(TRS) 


5.選挙結果に関する筆者の評価

出口調査はBJPの勝利を予想していたが、その上限ぎりぎりまで議席数を増やしたこと

は、国民のBJP特にモディ首相への支持や期待が極めて大きいことを物語る。

この大勝利について、インドのマスコミ各紙は、モディ首相と津波を合わせた造語「ツナモ」が起きたと表現している。

勝因について筆者の(主観的?)観測を披露すれば下記の通り。

(1)なんといっても、モディ首相が「強い指導者」のイメージづくりに成功するとともに、「強いインドを」とのメッセージが国民に受けた。さらに同首相の卓越した発信力(演説のうまさで有名だった先輩の故ヴァジパイ首相並みの演説のうまさ)なども勝利に貢献した。

勝利が確定後、モディ首相は「ともに成長し繁栄し、ともに強いインドをつくろう」とツイートした。

(2)BJPの勝利に貢献したのが、皮肉なことにヒンズー至上主義政党とされるBJPを特に嫌うパキスタン(イスラム教が国教)であった。去る2月に起こったパキスタンからの越境テロに対し、パキスタン領内にまで入って空爆したインドの強硬な姿勢が国民を熱狂させ、それまでの「BJPか国民会議派どちらが勝つかわからない、ひょっとしたらBJPは下野するか?」という状況を一変させて形勢をBJPに傾けた。

(3)モディ首相が行ってきた改革(外資規制の緩和、物品サービス税の創設など)、汚職に対する厳しい姿勢、各省庁への強い掌握力、インフラ建設・整備の公約、まだ途上であるが「Minimum Government, Maximum Governance」(最小の政府による最大の統治)というキャッチフレーズの訴求力などが複合的に作用した。

(4)経済成長が遅れている農村での劣勢が伝えられ、国民会議派の働きかけがかなり奏功したが、農村重視の姿勢を強化し農村票を食い止めた。

(5)インドの国際的地位は急速に上がりつつあるが、その大きな要因はモディ首相の活発な首脳外交の成功特に良好な対米関係、これは、「自由で開かれたインド太平洋ヴィジョン」を掲げるなど理念を前面に出すとともに活発な首脳外交を展開するわが安倍総理にも通じるところである。安倍・モディ両首相は大変ウマが合うが、外交スタイルも似たところがある。安倍総理は、勝利が確定した昨晩、モディ首相に電話で祝意を表した。


6.今後の組閣と施政方針演説

 今後、BJPはNDA構成の諸政党とともに内閣改造、新政権の施政方針などを協議していくことになる。BJPが圧勝したために、連立内閣の組閣は比較的に容易であろうし、基本的な政策もBJP中心に早急にまとまると予想される。

 それらについては、7月8日(月)に桜田門外の法曹会館で開催予定の日印協会主催シンポジューム(参加要領は日印協会機関誌「月刊インド」ないし本ウエッブ・サイトからお申し込みを)で専門家、実務家からの説明に期待していただきたい。



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