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日印関係最新情報

月間インドニュース(2018年9月)

2018年10月19日掲載


1. 内政
【連邦政府/連邦議会】
9月1日
モディ首相は、デリーにおけるイベントで、前UPA政権が癒着による多くの融資により発生した多大な不良債権という地雷をインド経済の中に埋め込んでいたとして、UPA政権を批判した。モディ首相は、2兆ルピーとされていた不良債権が実際には9兆ルピーであったことがモディ政権樹立後すぐに判明したとし、この事実が公表されれば印経済を管理することが難しくなっていたであろうと述べた。また、現政権が既にこの地雷を取り除いたと述べた。
9月28日-30日
インド軍によるパキスタン支配下カシミール(PoK)におけるテロ拠点地に対する管理ライン(LoC)越境「外科的攻撃」の2周年に伴い、9月28日より3日間に亘り、国内で印軍の勇敢さを祝し、犠牲を弔うための式典(Parakram Parv)が実施された。
【下院総選挙】
9月1日
シン内相は、デリーでメディアに対し、次期下院総選挙の日程が早められることはなく、選挙は予定通りの時期に実施され5月15日までに完了されるであろうと述べた。
【野党連合の動き】
9月10日
コングレス党の呼びかけに対し21の野党が支持を表明したストライキ(バーラト・バンド)が全国で実施された。ラーフル・ガンディー・コングレス党総裁は、デリー市内の抗議集会において、ガソリン価格の上昇、ルピー安、ラファール戦闘機購入に係る疑惑、失業問題、女性の安全等のイシューを取り上げてモディ政権を批判した。
【最高裁判所】
9月6日
最高裁は、同性同士の性交渉を禁じる刑法377条は違憲であるとの判決を下した。
9月13日
法務省及び首相府は、コヴィンド大統領がゴゴイ最高裁判事を次期最高裁長官に任命した旨のプレスリリースを発出した。ゴゴイ判事は、ミスラ長官の引退後、10月3日に長官に就任するとされている。
【アッサム州】
9月10日
ソノワール州首相は、デリーにおいてメディアに対し、不法移民流入の問題はアッサム州に限った問題ではなく、全ての州が国民登録簿(NRC)を実施すべきであると述べた。
9月19日
最高裁は、バングラデシュからの不法移民と正式なインド国民を判別するNRCから除外された400万人からの要望及び異議を受理する手続きを26日より開始するよう命じた。
【テランガナ州】
9月6日
ラオ州首相は、テランガナ州議会を解散した。同州首相は、記者会見において、11月に、他の4州議会選挙(ラジャスタン州、マディヤ・プラデシュ州、チャッティスガル州、ミゾラム州)と同時にテランガナ州議会選挙が実施され、12月に開票されるであろうと述べた。
9月11日
コングレス党、テルグ・デサム党(TDP)、インド共産党(CPI)の党州支部指導者が会合を開き、テランガナ州議会選挙において連合を組むことに合意した。

2. 経済
【ルピー安対策を含む経済対策】
9月14日-15日
インド政府は、モディ首相が議長を務めるインド経済情勢に関する政府ハイレベル会合を開催。初日にあたる14日は、翌15日のモディ首相が出席する会合に向けた首相府と財務省における準備会合の形式で開催し、経常収支対策と5つの外貨流入策で構成される印ルピー安対策を中心とする経済対策を打ち出した。15日に開催された会合では、新たな対策案の公表はなく、政府の財政規律維持を中心に議論され、14日時点で財務大臣が述べた通り財政規律を堅持する姿勢を改めて示した。
【電化製品等の輸入関税引上げ】
9月26日
インド政府は、経常赤字縮減を目的として19品目に関する輸入関税の引上げを発表した。関税引上げ対象とされた主要品目は以下のとおり(2018年9月27日より適用)。
(1)エアコン (2)家庭用冷蔵庫(3)洗濯機(容量10Kg以下)(4)エアコン、冷蔵庫用コンプレッサー(5)スピーカー(6)フットウェア(7)車用ラジアルタイヤ(8)非工業用ダイヤモンド(原石除く)(9)ジュエリー(宝石及び貴金属製)及びそれらの部品等(10)プラスチック製バスタブ等(11)プラスチック製キッチン用品等(12)プラスチック製オフィス用品等(13)航空機用タービン燃料 

3. 外交
【印米関係】
9月6日
スワラージ外相及びシタラマン国防相は、訪印中のポンペオ米国務長官及びマティス米国防長官との間で米印閣僚級2+2をニューデリーで開催し、共同声明が発出された。また、ポンペオ米国務長官及びマティス米国防長官はモディ首相を表敬した。
【印・北朝鮮関係】
9月20日
インド外務省は、18日-20日にかけて行われた南北首脳会談を歓迎する旨のプレスリリースを発出した。
【印パキスタン関係】
9月21日
インド外務省は、前20日に開催を発表していた国連総会の際の印パ外相会談を実施しない旨のステートメントを発出した。
【印モルディブ関係】
9月24日
インド外務省は、モルディブにおける第3回大統領選挙の成功裏の完了を歓迎し、選挙に勝利したイブラヒム・モハメド・ソリ氏を心から祝福する旨のプレスリリースを、また、同日にモディ首相がソリ・モルディブ次期大統領に祝意の電話をかけた旨のプレスリリースを発出した。
【国連総会】
9月29日
第73回国連総会出席のため訪米中のスワラージ外相は、同総会の一般討論演説で演説を行った。また、同外相は、国連総会の傍らで、河野外務大臣、ペイン豪外務大臣、トゥルヒージョ・コロンビア外務大臣、バレンシア・エクアドル外務大臣、モゲリーニEU上級代表、ブリタ・モロッコ外務大臣、ポラック=ビゲリ・スリナム外務大臣、クナイスル・オーストリア外務大臣、ムナツァカニャン・アルメニア外務大臣等と会談したほか、ネルソン・マンデラ平和サミット、パレスチナに関する非同盟運動諸国(NAM)閣僚委員会、BRICS外相会合、G4外相会議、SAARC非公式閣僚会合、第9回IBSA三カ国閣僚委員会会合等に参加した。

4. 日印関係
9月27日
第73回国連総会出席のためニューヨークを訪問中の河野太郎外務大臣は、9月27日午後6時15分(現地時間;日本時間28日午前7時15分)から約20分間、インドのスシュマ・スワラージ外相と会談した。
(1) 冒頭、河野大臣から、3月末の訪日に続き再会でき嬉しい、インドは自由で開かれたインド太平洋を実現する上での最重要パートナーであり、外相間の連絡を緊密にし、日印関係を更に盛り上げていきたいと述べた。これに対し、スワラージ外相からは、再会でき嬉しい、本年のモディ首相訪日に向けてしっかりと準備していきたい旨発言があった。河野大臣から、安全保障、経済・経済協力、人的交流の各分野で具体的成果を出すべく調整していきたいと述べた。
(2) 両外相は、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、インド太平洋地域における情勢について意見交換を行った。両外相は、朝鮮半島の非核化に向けて、引き続き、国際社会が安保理決議の完全な履行を確保することの重要性を確認した。

今月の注目点:第73回国連総会一般討論演説におけるスワラージ外相演説ポイント

第73回国連総会の一般討論演説におけるスワラージ外相演説(9月29日午前)のポイントは以下のとおり。

①インドは、SDG(持続可能な開発目標)を早期に達成するため、モディ首相の下、大規模な経済社会変革に取り組んでいる。その結果、3億2000万人が新たに銀行口座を持ち、5億人に裨益する医療保険計画と、2022年までに2100万戸を目標とする最大の住宅整備計画を開始した。同時に職業訓練と起業家育成のための計画もスタートした。1億4000万人がこの計画による融資を受け、その76%が女性である。国力向上のためにはすべての分野における女性のエンパワーメントが重要。これまで5000万の無料ガス接続が提供された。6週間しか育児休暇がない先進国もある中、インドは26週間の育児休暇を実施する。

②世界が直面する最大の脅威は気候変動とテロである。

③気候変動の最大の犠牲者は途上国。先進国は資金と技術を途上国に提供すべき。パリ協定においても、異なった責任とそれぞれの能力は繰り返されている。インドは、仏と共に国際太陽光連盟(ISA)を設立した。この功績により、モディ首相とマクロン大統領は、国連地球賞を受けた。現在、68カ国がISAのメンバーであり、今年三月のISA会合には120カ国が参加した。

④テロは、インドの場合、国境の西側すぐで生まれている。隣国はテロの温床を作るだけではなく二枚舌で悪行を隠す専門家である。二枚舌の最も顕著な証拠は、オサマ・ビン・ラディンを国内に匿っていたにも拘わらず、特殊部隊が彼に正義をもたらした後は、何事もなかったように振る舞っている。正式な政策手法としてのテロに対するパキスタンのコミットメントはいささかも減じていない。FATFがパキスタンをテロ資金提供国家としていることが示すように、世界はイスラマバードをもはや信じない。

⑤インドは、パキスタンとの対話プロセスを阻害していると非難されるが、それは全くの嘘である。パキスタンとの対話がこれまで数多く開始されたが、それが止まるのはパキスタンの行動のためである。パキスタンとの対話が開始してもパキスタンによるテロ攻撃が行われる。こうした中でどうして対話を継続できよう。

⑥パキスタンは、インドは人権侵害国家であると非難するが、テロリスト以上の人権侵害者がいるだろうか。
パキスタンは自国の罪を隠すため、インドに対して欺瞞のほこりをかけることを常套手段としている。昨年、パキスタンの代表は、インドの人権侵害の証拠写真を示したが、後にそれは他国のものであることが分かった。

⑦インドは過去5年間にわたり、テロリストとその保護者をチェックするためにはリストだけでは不十分である主張してきた。国際法により彼らに説明責任を負わせる必要がある。1996年、インドは国連包括テロ防止条約(CCIT)を提案した。しかしながら、それはまだ条約案のままである。テロと闘わなければならないにも拘わらず、テロを定義することができない。そのため、賞金がかかったテロリストが賞賛されることになるのである。この条約の早期合意を訴える。

⑧国連は、その敬意と価値を失い始めている。このままでは国際連盟と同じ運命を辿るかもしれない。国際連盟は改革できなかったため自滅した。国連は、根本的な改革を必要としている。現実に見合ったものとなるよう国連を徹頭徹尾変える必要がある。安保理も必要な改革を行わなければならない。この総会ではマルチラテラリズムが多く議論されてきたが、インドはマルチラテラリズムを弱めるようなことは決してしない。インドは、世界は家族であると信じている。家族は取引ではなく愛により形作られる。だからこそ、国連は家族という原則に依拠しなければならない。国連は、「私」により運営されるのではなく、「我々」によって初めて機能する。