1 内政
【連邦政府/連邦議会】
2月5日:モディ首相は,下院議会で,最高裁の判決に従いアヨーディヤにラーマ寺院建設のための信託組織(trust;Shri Ram Janmabhoomi Teerth Kshetra)を設置することを発表した。
【デリー(DL)準州】
2月8日:DL準州議会選挙が実施され,投票率は62.59%。
2月11日:印政府選挙管理委員会は,DL準州議会選挙の開票結果を発表。庶民党(AAP)は,前回よりも議席を減らしたものの,過半数を大きく上回る議席を獲得し,引き続き単独政権を樹立した。
【ジャンム・カシミール(JK)準州】
2月6日:JK準州政府は,公共安全州法(Public Safety Act,PSA)に基づき,アブドゥッラ元州首相及びムフティ前州首相らの軟禁期間を3か月延長することを決定した。
【改正市民権法(CAA)】
2月10日:デリー(DL)市内のジャミア・ミリア・イスラミア大学(JMI)の学生等が無許可で大学から国会議事堂までデモ行進を試みたが,デリー警察がこれを阻止。デモ隊はバリケードを乗り越えようとする等して,警察との間で小規模の衝突が発生した。
2月12日:プデチェリー準州議会は,CAAの撤回を連邦政府に求める決議を採択した。
2月23日:同日夜,DL準州北東地域の複数箇所(Gokulpuri,Bhajanpura,Maujpur)において,CAAにそれぞれ賛成及び反対する活動参加者による大規模な衝突が発生し,投石や建物等への放火,威嚇射撃が行われ,居合わせた警官1名が死亡。
2月24日:前日DL準州で発生した同衝突が大規模化したため,DL準州北東地域10地区に4名以上の集会を禁止する刑事手続法第144条が適用され,また,複数メトロ駅の出入り口が封鎖,同地域の学校は休校となった。これまでに,合計5名(市民4名,警官1名)が死亡,少なくとも50名が負傷。
2月25日:DL準州での放火及び投石が継続したことから,中央警察予備部隊(CRPF)及び武装警官らが同地域に配備された。また,複数地域(Maujpur,Jafrabad,Chand Bagh,Karawal Nagar)において外出禁止令が発出され,準州警察は,適用されている刑事訴訟法第144条を1か月後の3月24日まで適用すると発表した。
2月27日:DL準州警察は,同暴動発生地域に平常が戻ったと発表した。
2 経済
2月1日:シタラマン財務大臣は,2020年度本予算案を国会に提出し,財政演説を行った。
2月6日:インド準備銀行(RBI)は,2019年度第6回金融政策決定会合を開催ししたところ,概要以下のとおり。
ポイント:2019年度第6回金融政策決定会合
(1)政策金利(レポ・レート)は5.15%のまま据え置き(委員全員一致)。
(2)金融政策に対するスタンスは「緩和的(accommodative)」で維持。政策スタンスの先行きについて,「インフレ率がインフレ目標範囲内に留まることを確保しつつ,経済成長を享受するために必要な限り,緩和的スタンスを維持」とのフォワードガイダンスは前回に引き続き維持。
(3)インフレ見通しは,2019年度第4四半期は6.5%,2020年度上半期は5.0~5.4%,2020年度第3四半期は3.2%。(注:前回のインフレ見通しは,2019年度下半期は4.7~5.1%,2020年度上半期は3.8~4.0%。)
(4)2020年度のGDP成長率は6.0%,うち,上半期は5.5%~6.0%,第3四半期では6.2%。(注:今年度の成長率見通しについて,政府が5.0%と予測している事に言及。また,前回の成長率見通しでは,2020年度第1四半期は5.9~6.3%。)
(5)政策金利での長期流動性供給を通じて長期貸出金利の低下を促すLTROs(Long Term Repo Operations)の導入や自動車ローン,不動産及び中小零細企業向け等の特定セクター向け貸出支援策,中小零細企業向け貸出に関する現金準備比率規制の緩和及び中堅企業向け貸出金利低下促進策など,オペレーションの見直し及び規制緩和を行い,政策金利以外の手段による事実上の金融緩和を実施。
2月28日:統計・計画実施省(MOSPI)傘下の国家統計局(NSO)は,2019年度第3四半期(2019年10月~12月)のGDP成長率を4.7%と公表した。前年同期(2018年度第3四半期)の同5.6%及び前四半期(第2四半期)の同5.1%(改定前は4.5%)を下回り,27四半期ぶりの低水準となった。また,2017年度以降の第1~第3四半期の統計について遡及改定を行い,今年度の成長率は5.0%となるとの見通しを公表した。
3 外交
(印パキスタン関係)
2月6日:印外務省は,パキスタン・マレーシア共同声明において,カシミール問題が言及されたことに対し,(パキスタン・マレーシア共同声明に)インドの不可欠かつ不可分であるジャンム・カシミールについて言及されたことを完全に拒否するとする印外務省報道官の声明を発表した。
(印米関係)
2月24~25日:トランプ米大統領が国賓として訪印(アーメダバード,アグラ及びデリーを訪問)。アーメダバードでは,サバルマティ・アシュラムを訪問した後,市内スタジアムで開催された「ナマステ・トランプ」イベントで演説。アグラではタージマハルを観光。デリーでは,首脳会談や印企業とのミーティングを行った。
(EAS)
2月6日:インド外務省は,チェンナイで第4回海洋安保協力に関する東アジアサミット(EAS)会議を開催した。
今月の注目点(その1):アヨーディヤ問題:ラーマ生誕地巡礼地信託の設立
1.背景
2019年11月9日,最高裁は,アヨーディヤの係争地をヒンドゥー側に帰属させ,ムスリム側には政府が代替地を与える判決を下した。ヒンドゥー側は判決を歓迎,ムスリム側も判決を受け入れ,見直しを求めないことを表明。最高裁は,連邦政府に対し,ラーマ寺院建設を担当する信託を判決後3ヶ月以内に設立するよう命じた。
2.神託概要
「ラーマ生誕地巡礼地信託」(Shri Ram Janmabhoomi Treeth Kshetra Trust)は,ヒンドゥー側に帰属することとなった元係争地(通称,ラーマ生誕地)におけるラーマ寺院の建設を監督する任務を負い,独自の意思決定権を有する。政府によって接収された67.703エーカーのラーマ生誕地は全て同信託に委譲される。
同信託は15名の理事によって構成され,アヨーディヤ問題の係争においてヒンドゥー側の弁護士を務めたパラサラン元法務長官が理事長を務め,ダリット1名を含むヒンドゥー教関係者の他,連邦政府及びUP州政府により指名されるインド行政職(IAS)2名,アヨーディヤ県長官が理事を務める。RSS及びRSSの宗教ウイングである世界ヒンドゥー教会(VHP)関係者は理事に含まれていない。
同信託は,個人及び団体から無条件で広く寄付を募ることができる。
3.マスジッド建設用代替地
連邦政府は,マスジッド建設用の代替地として,ラーマ生誕地より約25キロの地点にある5エーカーの土地をムスリム側に与えることを発表した。この土地は,最高裁判決を受けUP州政府が連邦政府に提案した3つの候補地の中から,交通の便,参拝者の便宜,宗教間の調和,法と秩序の観点から連邦政府が選定したものである。ムスリム側は,政府からの正式な提案を待ち,24日に予定される会議において代替地提案の受け入れ是非を決定する予定である。
今月の注目点(その2):「ナマステ・トランプ」におけるトランプ大統領の演説(米ホワイトハウス発表トランスクリプト)
1.冒頭
米国はインドを愛している,米国はインドを尊敬している,米国は常にインド国民に対し誠実で忠実な友人である。
皆さんは米国民に対して素晴らしい敬意を払ってくれている。メラニアや私の家族共々,今回の(インドによる)素晴らしいホスピタリティを常に忘れない。今日から,インドは,我々の心の大変特別な位置に居続けるだろう。
2.インド,米印関係について
今やモディ首相は,広大なインド共和国で非常に成功した指導者である。昨年,6億人以上が(下院総選挙の際に)投票に行き,世界最大の民主的選挙において同首相に類いまれなる圧倒的勝利をもたらした。モディ首相は,グジャラートの誇りであるだけでなく,努力と献身さをもってすればインド人は何でも達成できるということの生きた証である。
我々はインドを非常に誇りに思う。インドという国の物語は,目を見張る進歩の物語であり,民主主義,並外れた多様性,そして何より強く高貴な人々の奇跡である。インドは全人類に希望を与える。インドは,たった70年の間に経済大国となり,歴史上最大の民主主義国となり,世界中で最も素晴らしい国の1つとなった。21世紀に入ってから,印経済の規模は6倍以上に成長し,10年で,印では2億7000万人が貧困から抜け出した。
インドは,まもなく世界で最大の中産階級を抱える国となるだろう。そして10年以内に,インド国内の最貧困層は完全に消滅すると見られている。インドの可能性はとても信じられない。インドの繁栄し独立した国家としての台頭は,世界中すべての国家のお手本であり,今世紀における最もめざましい功績の1つである。インドが民主国家として,平和国家として,寛容な国家として,そして大いなる自由の国として成し遂げたからこそ,一層(インドの台頭は)感激させるものなのである。世界には強制(coercion),脅迫,そして攻撃によって力を求める国と,自国民を自由にし,夢を追いかけさせることによって台頭する国との違いが存在する。インドは後者である。だからこそインドの過去70年間の功績はどこに行っても類を見ないのである。
米国とインドでは,我々は皆高貴な目的のために生まれてきたことを知っている。すなわち,我々の最大の可能性に到達すること,卓越性と完璧性に向けて取り組むこと,あらゆる栄光を神に捧げることである。この精神に則り,印国民と米国民は常により素晴らしくなろうと常に努力しており,だからこそ両国は文化,商業,そして文明の中心として世界中に光と活力をもたらしているのである。
インドは,数多くのヒンドゥー教徒,イスラム教徒,シク教徒,ジャイナ教徒,仏教徒,キリスト教徒,ユダヤ教徒が調和の中でそれぞれの神を敬う場所として,世界中で常に賞賛されている。インドでは,100以上の言語が話され,24以上の州がある中,インドは常に一つの偉大な国として断固としてそびえ立っている。インドの統一性は世界を鼓舞するもの。
3.軍事協力
米軍は完全に再編成され,未だかつてないほど強い。そして,我々は世界中の同盟や友好関係を,迅速に再活性化させている。我々は米軍再編のため2兆5千億ドルを投じた。世界で最も強力な軍隊である。私がインドにやってきたのは,愛情と友好の精神で,驚くべき力と可能性を有する米印間の大切なパートナーシップを拡大させるためである。
米国は,米印の防衛協力を継続するにあたり,この星で最も優れ最も恐れられている軍事装備品をインドに提供することを楽しみにしている。米国は,航空機,ミサイル,ロケット,艦艇等,史上最高の兵器を作っている。米国は最上級品を造る。そして今,米国はインドと取引をしている。これは最新の防空システムや,武装及び非武装無人航空機を含む。
私は,明日,米印の代表者が絶対的に最強で最新鋭の軍事ヘリコプターを含む30億ドルを超える装備品の取引に署名することをここに発表することを嬉しく思う。私は,米国がインドの最高の防衛パートナーでなければならないと信じており,そしてそれが良い結果を生んでいる。米印は共に主権と安全を擁護し,我々の子供たちと将来世代のために自由で開かれたインド太平洋地域を守っていく。
4.対テロ協力
米国とインドは,イスラム過激派テロの脅威から自国民を守るとの鉄壁の決意の下に固く団結している。米国は,価値観を共有し,米国民を愛する者は歓迎するが,米国の国境はテロリストやいかなる過激主義に対しても常に閉ざされているという点は明白にしている。このような理由から,多額の費用を投じて,米国民の安全を脅かしうる者が入国しないような歴史的措置をとってきた。米印はテロリストを食い止めるために共に取り組み,テロリストのイデオロギーと闘うことにコミットしている。現米国政権は,パキスタン国内で活動するテロ組織及び過激派の取締りに向けてパキスタンと前向きに取り組んでいる。米国とパキスタンとの関係は大変良好である。このような取組のおかげで,我々はパキスタンとの協力において大きな進捗が見えてきている。そして米国は,南アジアにおける緊張が軽減され,より大きな安定がもたらされ,南アジアの全ての国々にとって調和的な未来になることに期待を寄せている。
5.経済協力
今次訪印中,モディ首相と自分は二国間の経済関係の拡大のための議論を実施する予定。米印は,これまでの貿易取引の中でも最も大規模なものの一つになる貿易ディールを締結するだろう(we’ll be making very, very major-among the biggest ever made- trade deals)。米印は,両国間の投資の障壁を取り払うための素晴らしい貿易取引の交渉の初期段階にある。モディ首相がかなりタフな交渉人であるという点を除いて,自分は我々首脳間で協働することで,ファンタスティックな合意に達することができると楽観的にみている。
6.宇宙協力
米印は将来の宇宙探査協力のために緊密に連携している。チャンドラヤーン2号計画は素晴らしい進歩であった。米国はインドとの宇宙協力の拡大を楽しみにしている。インドは有人宇宙飛行分野も含め,現在の限界の壁を越えようとしている,それは素晴らしいことである。米印は星と宇宙への旅路における友人となりパートナーとなる。