モディ首相は、7月7日、内閣の改造を断行した。2019年5月に発足した第2次モディ内閣では、最大規模の改造であった。
全体で78人の閣僚からなるが、うち閣内大臣(Cabinet Minister)は21人から30人に増員した。そのほかには2人の独立所掌を担当する閣外大臣(Minister of State, Independent Charge)、45人の閣外大臣(Minister of State)が内閣を構成する。
2014年5月の第1次内閣の発足時には、モディ首相は Minimum Government, Maximum Governance(小さな政府で最大の統治)を標榜して閣僚を絞った。インドの政治においては、閣僚ポストは首相、与党の政権基盤を強化する役割が否めないこともあり、今回は大規模な改造となったと解釈できる。
以下は、インドのマスコミを参照しながらの筆者のコメント。
1. 内閣の若返りを図った。3年後の下院総選挙を見据え、それまでに若手有能な政治家を養成する目的もある。インド人民党(BJP)の最初の内閣・ヴァジパイ内閣で閣僚を経験したものは2人(国防大臣、マイノリティー大臣)に減った。
2. ただし、シン国防大臣、シッタラマン財務・企業大臣(女性)、ジャイシャンカル外務大臣、イラニ女性・児童育成大臣(女性)、ゴヤル商工・消費者・食料公共配給・繊維大臣などの重要ないし有能な閣僚は据え置いた。
3. 下位カースト(その他の後進カースト、OBC)から27人を登用し、とかく上位カースト政党ではないかと見られているBJPの政治基盤を拡大する姿勢を示した。
4. 総選挙で重要とされる大きな州であるが、ほかの政党が支配するウッタル・プラデッシュ、マハラシュートラ、カルナタカなど各州出身の政治家の一部を登用し、これらの州へのBJPの政治的浸透を視野に入れた。
5. シンディア民間航空大臣(マディアプラデッシュ州)は最近まで国民会議派に属していたがBJPに鞍替えした。元マハラジャ(グアリオール城)の名家出身であり、父親も国民会議派の重鎮で民間航空大臣も経験。マディアプラデッシュ州における影響力に期待したものと思われる。
<閣僚名簿>
★モディ首相
兼務:人事・公的苦情・年金,原子力エネルギー,宇宙,その他重要事項,他の大臣が担当していない所掌
【閣内大臣(Cabinet Ministers)】
●継続、〇新規入閣、△閣外大臣から昇格
1. ●ラージ・ナート・シン国防大臣
2. ●アミット・シャー内務・協力相(新設された協力省の所掌追加)
3. ●ニティン・ジャイラム・ガドカリ道路交通(中小零細企業大臣、所掌減)
4. ●ニルマラ・シタラマン財務,企業大臣
5. ●ナレンドラ・シン・トーマル農業・農民福祉(農村開発,町村自治,食品加工業、所掌減)
6. ●ジャイシャンカル外務大臣
7. ●アルジュン・ムンダ部族大臣
8. ●スムリティ・ズビン・イラニ女性・児童育成大臣(繊維、所掌減)
9. ●ピユーシュ・ゴヤル商工,消費者、食糧公共配給、繊維大臣(鉄道、所掌減)
10. ●ダルメンドラ・プラダーン教育、技能開発・起業促進大臣(石油・天然ガス、鉄鋼から所掌変更)
11. ●プララド・ジョシ議会,石炭,鉱山大臣
12. 〇.ナラヤン・タトゥ・ラネ中小零細企業大臣
13. 〇サルバナンダ・ソノワール港湾・海運・水路、AYUSH大臣
※ AYUSH:Ayurveda, Yoga and Naturopathy, Unani, Siddha and Homoeopathy
14. ●ムクタール・アッバス・ナクビ・マイノリティー大臣
15. 〇ヴィレンドラ・クマール社会正義・能力開発大臣
16. ●ギリラージ・シン農村開発、町村自治大臣(畜産・酪農・水産から所掌変更)
17. 〇ジョティラディティヤ・M・シンディア民間航空大臣
18. 〇ラームチャンドラ・プラサード・シン鉄鋼大臣
19. 〇アシュウィニ・バイシュナウ鉄道、通信、電子・IT大臣
20. 〇パシュ・パティ・クマール・パラス食品加工業大臣
21. ●ガジェンドラ・シン・シェカーワト水活用大臣
22. △キラン・リジジュ法務・司法大臣
23. △ラージ・クマール・シン電力、新・再生可能エネルギー大臣
24. △ハルディープ・シン・プリ石油・天然ガス、住宅・都市大臣(住宅・都市(専管),民間航空(専管),商工(副大臣)から閣内入)
25. △マンスク・マンダヴィヤ保健・家庭福祉、化学・肥料大臣
26. 〇ブペンドラ・ヤーダブ環境・森林・気候変動、労働・雇用大臣
27. ●マヘンドラ・ナート・パンデイ重工業大臣(技能開発・起業促進から所掌変更)
28. △パルショッタム・ルパラ水産、畜産・酪農大臣
29. △G.キシャン・レディ文化、観光、北東部開発大臣(内務担当閣外大臣より閣内入り)
30. △アヌラグ・シン・タークル情報・放送、青年・スポーツ大臣
