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日印関係最新情報

月間インドニュース (2022年3月)

2022年4月15日掲載


1 内政
【州議会選挙】
3月10日
印国内5州の州議会選挙(ウッタル・プラデシュ州、パンジャブ州、ウッタラカンド州、ゴア州、およびマニプール州)の開票が行われた。開票の結果、モディ首相率いるBJPがパンジャブ州を除く4州で第1党となった。パンジャブ州では、州与党のコングレスが18議席と大きく議席数を減らし、ケジュリワル・デリー準州首相率いる庶民党(AAP)が政権を奪取した。
【BJP】
3月11日
5州議会選挙でのBJPの大勝を受け、モディ首相はグジャラート州を訪問し、勝利パレードを行った。モディ首相は2日間の日程で同州を訪問し、今年末に実施が予定されている同州議会選挙に向け、BJP活動家や党幹部との会合、演説を行った。
【コングレス】
3月11日
コングレス党内の変革を求める議員グループ(G-23)は、デリー市内で会合を開き、この度の5州議会選挙におけるコングレスの選挙結果について議論を行った。
3月12日
現地メディアは、バナジー西ベンガル州首相が、5州議会選挙の結果を受け、「コングレスは信用を失っている、コングレスへの依存を止め、地域政党は協力をすべきである」と述べた旨報じた。
【予算国会】
3月14日:予算国会が再開された。
【パンジャブ州】
3月16日
バグワント・マン新パンジャブ州首相(AAP、新任)が就任し、宣誓式を行った。
3月25日
マン・パンジャブ州首相は、全てのパンジャブ州議会議員は、その当選回数に関係なく、受給できる議員年金を1期分のみとする旨発表した。
【マニプール州】
3月21日:ビレン・シン・マニプール州首相(BJP、継続)が宣誓式を行った。
【ウッタラカンド州】
3月23日:プシュカル・シン・ダミ・ウッタラカンド州首相(BJP、継続)が宣誓式を行った。
【ウッタル・プラデシュ州】
3月25日
アディティヤナート・ヨギ・ウッタル・プラデシュ州首相(BJP、継続)が宣誓式を行った。
3月26日
アキレーシュ・ヤーダブSP党党首が、ウッタル・プラデシュ州議会における野党議員団長に任命された。
【ゴア州】
3月28日:サワント・ゴア州首相(BJP、継続)が宣誓式を行った。
【アッサム州、メガラヤ州】
3月29日
アッサム州及びメガラヤ州の両州首相は、シャー内相立ち合いのもと、州境を巡る衝突の発生している12の地域の内、6つの地域で問題の解決に向けた合意書に署名した。

2 経済
3月8日
インド航空総局(DGCA)は、2020年3月22日より継続してきた国際定期商用旅客便のインドへの飛来禁止の措置を今月26日23時59分をもって終了し、翌27日午前0時より国際定期商用旅客便の通常運航を再開する旨発表した。
3月29日
インド準備銀行(RBI)は、4月26日に50億ドルのドル・ルピー間の通貨スワップ取引のオークションを実施することを発表した。RBIは、先渡し取引に関する満期構成を長期化し、先渡し資産に関する受取額を平準化するため、4月26日に50億ドルのドル・ルピー間のスワップ取引のオークションを実施する。本取引では、RBIはスポットレートでドルを売却し、満期を迎える約1年半後に売却時と同じ金額のドルを買い戻す。取引に参加する銀行は、RBIからドルを購入し、先渡しレートで満期日に同額のドルを売却する。RBIは3月8日にも同様の50億ドルのスワップ取引のオークションを実施しており、この影響により国内の余剰なルピー資金は減少していた。現地エコノミストに見方によれば、今回の取引により、対ドル相場でのルピー安の抑制、ルピーの過剰流動性の低下、為替リスクのプレミアムの減少といった効果が期待できる。また、輸出業者の為替利益を圧迫し、輸入業者を利することにもつながるとされる。
3 外交
(日米豪印)
3月3日
印外務省は、モディ首相が、バイデン米大統領、モリソン豪首相、岸田総理と共に、日米豪印首脳テレビ会議に参加した旨発表した。本年この後開催される日米豪印首脳会合までに、具体的成果を達成するとの目的を持ち協力を加速させることで合意した。モディ首相は日米豪印がインド太平洋地域における平和、安定、繁栄を促進するとの中心的目的(core objective)に集中し続けねばならないと強調した。モディ首相はウクライナ情勢について、対話と外交の道筋に回帰する必要性を強調した。
(印・ウクライナ関係)
3月7日
印外務省は、モディ首相がゼレンスキー・ウクライナ大統領と電話会談を行った旨発表した。モディ首相は、暴力の即時停止を求める訴えを再度強調し、まだウクライナに残っているインド人学生の速やかかつ安全な避難の必要性を強調した。
3月13日
印外務省は、キーウのインド大使館を一時的にポーランドに移設する旨プレスリリースを発表した。
(露印関係)
3月7日
印外務省は、モディ首相が、プーチン露大統領と電話会談を行った旨発表した。モディ首相は、プーチン大統領とゼレンスキー大統領との直接対話は、平和的解決に貢献する可能性があると述べたほか、スムイに取り残されているインド人学生の安全について懸念を伝達した。
(印・オランダ関係)
3月9日
印外務省は、モディ首相がルッテ蘭首相と電話会談を行った旨発表した。両首脳はウクライナ情勢について議論し、人道的状況に対する懸念を共有した。モディ首相は、ルッテ首相による早期のインド訪問を希望する旨述べた。
(印・ハンガリー関係)
3月9日
印外務省は、モディ首相がオルバーン・ハンガリー首相と電話会談を行った旨発表した。両首脳は、ウクライナ情勢について議論し、即時停戦と外交及び対話による解決の必要性について合意した。そのほか、モディ首相は、ハンガリー国境を通じ、6,000人以上のインド国民が避難できたことに感謝の意を述べた。
(印・モルディブ関係)
3月9~10日
モルディブでコロンボ安全保障コンクラーベの第5回国家安全保障担当補佐官級協議が開催された。モルディブ、インド、スリランカに加えて新たなメンバーとしてモーリシャスが参加した。
3月26日-27日
ジャイシャンカル外相がモルディブを訪問した。
(印・韓国関係)
3月10日
モディ首相が、韓国大統領選挙に勝利したユン次期大統領に祝意を表した。モディ首相は、「ユン次期大統領の勝利をお祝いする。印韓特別戦略的パートナーシップの更なる拡大・強化に向けて協力することを楽しみにしている」とツイートした。
3月17日
モディ首相が、ユン韓国次期大統領と電話会談を実施した。モディ首相は、大統領選挙に勝利について、ユン次期大統領に祝意を伝えた。両者は、印韓特別戦略的パートナーシップの更なる拡大と深化の重要性に合意した。両者は、加速的な二国間協力に向けた潜在性を提供する様々な分野について協議し、協力していくことに合意した。両名は、2023年の印韓国交樹立50周年を共同で祝賀する意向を強調した。
(中印関係)
3月12日
モルド・チュシュルの会談地点の印側において第15回軍指揮官級会談を行った。双方は、1月12日に行った前回の会談を基礎とし、中印国境西側の実効支配地域に関連する問題の解決を推進することについて引き続き討議を行った。双方は、残された問題をできるだけ早く解決することに関する両国の指導者の指針に従い、率直かつ突っ込んだ意見交換を行った。双方は、残された問題を解決することは、西側の実効支配地域の平和と安寧の回復及び二国間関係の発展の促進に寄与することになると重ねて表明した。この間、双方は西側地区の第一線の安全と安定を維持することについて合意した。双方は、軍事・外交ルートによる対話を維持し、双方が受け入れ可能な解決案を努めて早く取りまとめることについて合意した。
(印・オーストリア関係)
3月21日
訪印中のオーストリア外相は、ジャイシャンカル外相と印オーストリア外相会談を実施した。
(豪印関係)
3月21日
第2回豪印首脳テレビ会談が実施された。モディ首相とモリソン豪首相は本日、第二回印豪首脳テレビ会議を行い、二国間の多面的関係をレビューし、地域及び国際情勢について意見交換した。
両首脳は2020年6月の第一回首脳テレビ会議の際に立上げられた包括的戦略パートナーシップの下での進展に満足を表明した。モディ首相は、現在貿易・投資、防衛・安全保障、教育・イノベーション、科学・技術、重要鉱物、水管理、新エネルギー・再生可能エネルギー技術、新型コロナ関連研究等の多様な分野をカバーする、拡大された印豪関係のスコープに満足を示した。
モディ首相は29の古代インド美術品をインドに返還する特別な心遣いに関してモリソン首相に感謝した。これらの古代文化遺物は異なる像、絵画や写真からなり、何世紀にもわたり、一部は9世紀から10世紀にまで遡り、インドの異なる地域に由来する。これらの文化品には、12世紀のチョーラ朝の青銅、ラジャスタン由来の11世紀から12世紀のジャイナ教の彫刻、12世紀から13世紀のグジャラート由来の砂岩のマヒシャスラマルディニ女神、18から19世紀の絵画や初期の銀塩写真が含まれる。
モディ首相は新型コロナウイルス禍のオーストラリアにおいて、モリソン首相がインド人学生を含めたインド人コミュニティを支援したことに感謝を表明した。
両首脳は、自由で、開かれ、包摂的で、繁栄するインド太平洋を含む共通の価値と共有された国益を有する民主主義国の仲間として、拡大する二国間の戦略的一致に満足を表明した。
首脳テレビ会議の機会に、深化する包括的戦略的パートナーシップの多様な側面をカバーする共同声明が発表された。両者はまた、包括的戦略パートナーシップの下で両首脳間の年次首脳会談を立ち上げ、二国間関係に特別な側面を加えることで合意した。
(印英関係)
3月22日
印英首脳電話会談が実施された。両首脳は、ウクライナ情勢について協議した。モディ首相は、戦闘行為の停止及び対話と外交の道に戻るというインド政府の一貫した主張を強調した。モディ首相は、現在の世界秩序の基礎として国際法、領土一体性、すべての国の主権の尊重というインドの信念を強調した。両首脳は、二国間の利益についても協議し、貿易、テクノロジー、投資、安保・防衛、人的交流等の分野における協力の更なる深化の潜在性に合意した。モディ首相は、二国間自由貿易合意の交渉のモメンタムに満足の意を表した。モディ首相は、双方の都合のよいタイミングでジョンソン首相をインドに招待する希望を示した。
3月31日:トラス外相が訪印し、ジャイシャンカル外相と印英外相会談を実施した。
(印・ギリシャ関係)
3月23日:ギリシャ外相が訪印した。
(印・スリランカ関係)
3月28日-30日
ジャイシャンカル外相がスリランカを訪問し、29日に開催されたBIMSTEC閣僚会合に出席した。
(BIMSTEC  ベンガル湾他分野技術経済協力イニシャティブ)
3月30日
第5回BIMSTEC首脳会合がテレビ会議形式で開催され、モディ首相がヴァーチャル形式で出席した。

4 日印関係
3月19日
岸田総理が訪印し、日印首脳会談を実施した。この機会に、日印首脳共同声明「平和で安定し、繁栄した新型コロナ後の世界のためのパートナーシップ」が発表された。
今月の注目点:日印首脳会談
3月19日(土)、現地時間17時03分頃から18時56分まで、インド・デリーを訪問中の岸田総理大臣は、ナレンドラ・モディ・インド首相(H.E. Mr. Narendra Modi, Prime Minister of India)と日印首脳会談を行ったところ、概要以下のとおりです。なお、会談終了後、両首脳は、共同声明を発出しました。
(ご参考:共同声明PDF添付いたしました)

モディ首相から、岸田総理の訪印を歓迎し、「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」としての両国関係を更に発展させたい旨述べました。これに対し、岸田総理から、総理に就任して初めての二国間訪問先としてインドを選んだことに言及しつつ、これは、日本として、また岸田総理自身として、基本的価値を共有し、戦略的に重要なインドとの関係を極めて重視しているためであると述べました。また、岸田総理から、「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」の深化、そして「自由で開かれたインド太平洋」の実現のため、引き続きモディ首相と緊密に連携していきたいと述べました。
両首脳は、厳しい国際情勢の中で、民主主義や法の支配といった基本的価値を共有する日本とインドが、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、二国間や日米豪印等を通じて緊密に連携していく重要性を共有しました。また、今後数か月のうちにモディ首相の訪日も得て開催すべく調整中の日米豪印首脳会合において、ワクチン協力、インフラ、気候、技術といった様々な分野での実践的な協力や、4か国が直面する地域の課題について議論を行うことを確認しました。
岸田総理から、ロシアによる侵略は明白な国際法違反の暴挙であり、改めて厳しく非難する、また被爆地広島出身の総理大臣として、核による威嚇も、ましてや使用も、断じて受け入れられるものではない旨述べました。その上で、国際社会が一致して、毅然と対応する必要があるとの日本の立場を強調しました。また、両首脳は、戦闘の即時停止と対話による事態の打開に向けた働きかけを行うことの重要性で一致し、岸田総理から、モディ首相に対し、プーチン大統領に対する更なる働きかけを含め、協力を要請しました。両首脳は、インド太平洋のみならず、いかなる地域においても、力による一方的な現状変更を許してはならないこと、国際法に基づき、紛争の平和的解決を求める必要があることを新たに確認し、こうした状況だからこそ、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組を一層推進していくことが重要であることを確認しました。また、岸田総理から、我が国は既にウクライナや周辺国に対する1億ドルの緊急人道支援を行うこととしているが、現地の状況悪化を受け、今後追加支援を行うこととした旨述べ、人道支援に関しても連携して取り組んでいくことで一致しました。
両首脳は、東シナ海及び南シナ海における力による一方的な現状変更の試みや、経済的威圧について、強く反対していくことで一致しました。両首脳は、先般のICBM級弾道ミサイル発射を含む北朝鮮情勢についても意見交換し、拉致問題を含む北朝鮮への対応において、引き続き連携していくことを確認しました。ミャンマー情勢について、両首脳は、議長国カンボジアを始めとするASEANの取組を共に支え、事態の打開に向けて引き続き緊密に連携していくことを確認しました。
岸田総理から、国交樹立70周年の節目の年に、先人達が紡いできた歴史を引き継ぎ、モディ首相と共に日印関係の新たなページを開いていきたい旨述べ、モディ首相の賛同を得ました。両首脳は、日印間の年次相互訪問を再び軌道に乗せることで一致し、岸田総理からモディ首相の訪日を招請したところ、モディ首相はこれを快諾しました。両首脳は、首脳間の相互訪問に加え、関係閣僚の間で重層的に対話を重ねること、第2回日印外務・防衛閣僚会合(「2+2」)を早期に開催することで一致しました。また、両首脳は、共同訓練において日印ACSA(アクサ)が活用されるなど二国間の連携が強化されていることに加え、日米豪印4か国が参加する共同訓練「マラバール」の実施など多国間での連携が活発化していることを歓迎しました。両首脳は、今回署名に至ったサイバー分野に関する覚書を歓迎した上で、安全で信頼性のある通信ネットワークの構築、サプライチェーンの多元化、強靭化を含め、共に経済安全保障上の共通の課題にも取り組んでいくことで一致しました。
両首脳は、産業競争力パートナーシップ、日本式ものづくり学校の取組の促進等を通じて引き続き協力していくことを確認しました。岸田総理から、インドは「新しい資本主義」においても重要なパートナーである旨述べ、両首脳は、今後5年間で官民あわせて対印投資5兆円目標を掲げることで一致しました。その上で、岸田総理から、日本企業のインドにおける円滑な活動のための更なる環境整備への支援を要請しました。経済協力について、岸田総理から、同日署名された3,100億円を超える円借款7件につき言及し、日本として、インドにおける質の高いインフラ整備に協力し、持続的な成長を後押ししたいと述べたところ、モディ首相より謝意の表明がありました。両首脳は、高速鉄道事業が着実に進展していることを歓迎し、引き続き日印の旗艦プロジェクトとして推進していくことを確認しました。また、両首脳は、「インド北東部の持続可能な開発に向けた日印イニシアティブ」が発出されることを歓迎し、地域の連結性を高めるインド北東部開発における協力を着実に実施していくことで一致しました。さらに、両首脳は、総額750億ドルの二国間通貨スワップ取極の延長を歓迎しました。気候変動対策については、両国の着実な取組が重要であることを確認し、世界全体でのカーボンニュートラル、多様かつ現実的なエネルギー・トランジションに向け、新たに発表される「日印クリーン・エネルギー・パートナーシップ」等を通じ、エネルギー安全保障にも資する形で、日印協力を進めていくことを確認しました。その他、両首脳は、喫緊の課題であるデジタル、新型コロナ対策を含むヘルスケア等の分野での協力も進めていくことで一致しました。また、日本産りんごのインドへの輸出解禁とインド産マンゴウの日本への輸入手続の簡素化を歓迎しました。
両首脳は、本年の日印国交樹立70周年を契機として、ポスト・コロナにおける青少年交流、スポーツ交流、観光、特定技能制度を含めた人的交流を進めていくことで一致しました。また、日印共同での月極域探査計画を含め、宇宙分野での協力が進展していることを歓迎し、引き続き協力を進めていくことを確認しました。岸田総理から、2025年の大阪・関西万博へのインドからの出展に謝意を表し、両首脳は、その成功のために協力していくことで一致しました。
現下のウクライナ情勢を受け、国連安保理改革を求める声が高まる中、両首脳は、安保理を現在の世界に相応しいものに改革すべく、G4の重要なパートナーとして、両国の連携を一層強化することで一致しました。また、双方が新たな常任理事国として相応しいことを改めて確認し、結束を確認しました。さらに、岸田総理から、被爆地広島出身の総理大臣として、核軍縮分野における国際的な取組をリードする決意を述べ、両首脳は「核兵器のない世界」の実現という目標に向け協力していくことを確認しました。