
1. 内政
【野党連合に向けた動き】
3月3日:ラオ・テランガナ州首相は、BJP及びコングレス党に対抗するために、新たな枠組みの野党連合を結成することが重要であると述べ、志を共にする政党代表者等と接触していると述べた。
【予算国会の後半会期閉会】
3月5日:アンドラ・プラデシュ州が連邦政府に求める支援要求等を巡り、紛糾が続いているなか、予算国会の後半会期が開会した。
【プラブー商工大臣による民間航空大臣の兼任】
3月8日:プサパティ民間航空大臣の辞任を受け、10日、プラブー商工大臣が民間航空大臣(兼任)に就任した。
2. 経済
【インド企業によるサムライローンに対する関心の高まり】
3月1日:インド企業においてサムライローン(注:海外企業による日本国内の金融機関からの円建て借入れ)への関心が高まっている。
◆日本における歴史的な低金利と過剰流動性を背景に、インドの大企業は長期での借入れを行うため、預金を大量に抱える邦銀と接触している。インド鉄道金融会社のパタナヤック社長は、同社が1998年以来初となるサムライローンによる借入れを、満期10年、借入額2.5億ドル規模で行うことを検討していると述べた。また国内最大の電力会社である国営火力発電公社も、満期10年、借入額3.5億ドル規模でのサムライローンによる借入れを模索している。
【イセ食品の投資覚書締結】
3月13日:イセ食品は、インド政府との間で21億ルピーの投資に係る覚書に署名したと発表した。この覚書はインド食品加工省が日本の食品会社と締結する初の覚書である。伊勢イセ食品会長は、「今後、残留農薬のない鶏卵の生産分野おいて協力を拡大していきたい。また、再生可能エネルギー分野においては、既にデリー近郊に太陽光発電施設を設置しており、同分野でのインドの取り組みを支援していきたい。」と述べた。右事業以外に、イセ食品は近代的な穀物貯蔵庫の利用を通じ農産品の損失を減らすための支援を行う予定。
【2017年度第3四半期の国際収支】
3月16日:インド準備銀行(RBI)は、2017年度第3四半期(2017年10~12月)の国際収支を発表。経常収支赤字は▲135億ドル、対GDP比2.0%となり、前年同期(▲80億ドル、対GDP比1.4%)と比べて赤字幅が拡大し、また前四半期(▲72億ドル、対GDP比1.1%)と比べても大きく悪化した。貿易赤字は▲441億ドルとなり、前年同期(▲333億ドル)と比べると赤字幅が拡大し、また前四半期(▲328億ドル)と比べても悪化した。貿易収支については、工業製品において輸出よりも輸入の増加幅が大きく拡大したことによって、貿易赤字が拡大している。サービス収支黒字は306億ドルとなった。ソフトウェアサービスや観光分野での純収益の増加を背景に、前年同期(254億ドル)から17.8%の増加となった。また前四半期(256億ドル)と比べても黒字幅が拡大した。外貨準備高は94億ドルの増加となった。
3. 外交
【印ヨルダン関係】
2月27日-3月1日:アブドッラー・ヨルダン国王が訪印し、モディ首相と会談を行い、合意文書の署名が行われた。また、アブドッラー国王は、コヴィンド大統領と会談したほか、ナイドゥ副大統領及びスワラージ外相から表敬を受けた。
【印ベトナム関係】
3月2日-4日:クアン越国家主席は、コヴィンド印大統領の招待を受け、複数の閣僚及び大規模ビジネス代表団と共にインドを公式訪問し、モディ首相と会談及び代表者協議を行ったほか、防衛及び安全保障、エネルギー協力、連結性、地域協力及び多国間協力等を内容とする印越共同声明の発出及び合意文書が署名された。また、クアン国家主席は、コヴィンド大統領と会談したほか、スワラージ外相からの表敬を受けた。
【第4回印ヨーロッパ29ビジネス・フォーラム(IE29BF)】
3月5日-6日:IE29BFがニューデリーで実施され、アクバル外務担当閣外相が開会セッションでスピーチを行った。
【印マルタ関係】
3月5日-8日:アベーラ・マルタ外務・貿易振興大臣が、同省高官及び大規模ビジネス代表団と共に訪印し、IE29BFに参加したほか、スワラージ外相及びアクバル外務担当閣外相等と会談、ナイドゥ副大統領を表敬した。
【印仏関係】
3月9日-12日:モディ首相の招待を受け、マクロン仏大統領がインドを公式訪問し、モディ首相と会談したほか、印仏共同声明、インド洋地域における印仏協力の共同戦略的ビジョン、宇宙協力のための印仏共同ビジョンの発出及びその他合意文書が署名された。マクロン大統領は、コヴィンド大統領と会談したほか、スワラージ外相から表敬を受けた。
【ISA(国際太陽光同盟)】
3月11日:モディ首相及びマクロン仏大統領が共同議長を務めたISA創設会議が開催され、デリー太陽光アジェンダが発出された。
◆また、ISA創設会議のサイドラインで、モディ首相は、ニャシンベ・トーゴ大統領、ソポアンガ・ツバル首相、サルワイ・バヌアツ首相、ワンガ・ナウル大統領、イスフ・ニジェール大統領、ンゲマ赤道ギニア大統領、パイミ・パダケ・チャド首相、ダンカン・コートジボワール副大統領、シリセーナ・スリランカ大統領、ハミド・バングラデシュ大統領等と会談した。
3月26日:ニューデリーにおいて、印政府及びISAとの間の本部合意(Headquarters Agreement)が、シン外務担当閣外相及びトリパティISA暫定事務局長(Interim Director General)との間で署名された。
【印モーリシャス関係】
3月11日-14日:コヴィンド大統領は、ハイレベル代表団と共にモーリシャスを公式訪問し、ジャグナット・モーリシャス首相と代表団会談を行ったほか、合意文書が署名された。モーリシャス訪問中、コヴィンド大統領は、モーリシャス・ナショナルデー祝賀会に出席したほか、ギュリブ-ファキム・モーリシャス大統領と会談した。また、インド人コミュニティーに対して演説を行った。
【印サントメ・プリンシペ関係】
3月14日:サントメ・プリンシペ訪問中のアクバル外務担当閣外相は、ボテーリョ・サントメ・プリンシペ外務・共同体大臣と会談したほか、合意文書が署名された。また、アクバル外務担当閣外相は、カルヴァリョ大統領及びトロヴォアダ首相を表敬した。
【印マダガスカル関係】
3月14日-15日:コヴィンド大統領は、ハイレベル代表団と共にマダガスカルを公式訪問し、ラジャオナリマンピアニナ・マダガスカル大統領と会談及び代表団協議を行ったほか、印マダガスカル共同声明の発出及び合意文書の署名が行われた。また、コヴィンド大統領は、インド人コミュニティーに対して演説を行ったほか、印マダガスカル・ビジネスフォーラムで演説を行った。
【印アンゴラ関係】
3月15日-16日:アクバル外務担当閣外相は、アンゴラを訪問し、イニュンガ・アンゴラ農林大臣と会談したほか、代表団協議を行った。
【印露関係】
3月19日:モディ首相は、プーチン露大統領に電話をし、前日行われた露大統領選挙再選について祝辞を述べた。
【世界貿易機関(WTO)】
3月19日:WTO閣僚非公式会合出席のために、ニューデリー訪問中のアゼベドWTO事務局長は、モディ首相を表敬した。3月20日:同非公式会合に出席した閣僚及び高官がモディ首相を表敬した。
【印中関係】
3月20日:モディ首相は習近平国家主席に電話をし、国家主席再選について祝辞を述べたほか、両首脳は、急速に成長している2大国として、中印二国間関係は「アジアの世紀(Asian Century)」としての21世紀実現のために不可欠なものであるということで一致した。
【印独】
3月21日:モディ首相は、メルケル独首相に電話をし、4期連続首相就任に祝辞を述べた。
3月22日-26日:シュタインマイヤー独大統領がインドを公式訪問し、モディ首相及びコヴィンド大統領と会談したほか、ナイドゥ副大統領及びスワラージ外相から表敬を受けた。
【印アフガニスタン関係】
3月21日:印外務省は、同日に起こったカブールにおけるテロを強く非難する声明を発表した。
【印エジプト】
3月22日~23日:シュクリ・エジプト外務大臣が訪印し、スワラージ外相と第7回印エジプト共同委員会会議を開催したほか、モディ首相を表敬し、エルシーシ・エジプト大統領からモディ首相への書簡を手交した。
【第11回中印国境問題に関する協議及び調整のためのワーキングメカニズム(WMCC)】
3月22日:第11回WMCCがデリーで開催された。インド側代表団は、ヴァルマ印外務省東アジア局長が代表を務め、中国側代表団は、Yi Xianliang中国外交部辺境海洋司長が代表を務めた。
【第13回印アフリカのプロジェクト・パートナーシップに係る会議(CII-EXIM Bank Conclave on India Africa Project Partnership)】
3月25日-27日:第13回印アフリカのプロジェクト・パートナーシップに係る会議が実施された。そのサイドラインで、コヴィンド大統領はチウェンガ・ジンバブエ副大統領による表敬を受けたほか、ナイドゥ副大統領はチウェンガ・ジンバブエ副大統領、セカンディ・ウガンダ副大統領、チリマ・マラウイ副大統領と会談、スワラージ外相はファビアノ・マラウイ外務・国際協力大臣と会談した。
【印トルクメニスタン関係】
3月27日:アクバル外務担当閣外相は、アフガニスタンに関するタシュケント会議(Tashkent Conference on Afghanistan: Peace Process, Security Cooperation & Regional Connectivity)でスピーチを行った。
【印パキスタン関係】
3月30日:印外務省は、1992年の「印パにおける外交・領事関係者の扱いに係る行動規範(Code of Conduct for the treatment of diplomatic/consular personnel in India and Pakistan)」に則して、印パ両国が外交官及び外交官施設(diplomatic premises)の扱いに関する問題を解決することで一致したとするプレスリリースを発出した。
4. 日印関係
3月11日-16日:宮腰光寛内閣総理大臣補佐官は、インド及びマレーシアを訪問。今回のインド訪問において、宮腰総理大臣補佐官は、インドのシン農業・農民福祉大臣、バダル食品加工大臣と会談したほか、日本産農林水産物・食品の輸出促進に向けたセミナーや、国際食品見本市に政府を代表して出席した。
3月20日:岡本三成外務大臣政務官は、インドのデリーで開催された世界貿易機関(WTO)非公式閣僚会合に出席した。
(1)日本を代表し岡本政務官から、概要以下のとおり発言した。
ア. WTOと多角的貿易体制が大きな挑戦に直面している中、インドが今次会合を主催したように、各加盟国が責務を果たさなければならず、交渉については従来の立場を超えて真剣に議論すべき。
イ. 有志国の取組はマルチの成果につながり得るものであり、特に3月14日に有志国の第1回会合を開催した電子商取引の取組はWTOの将来にとって極めて重要であり日本が主導的役割を果たし続ける決意である。
ウ. WTOの通常機関の機能強化や紛争解決制度の機能確保が必要。
エ. 貿易と開発の問題については、新興国の台頭を始めとする世界経済の構造変化を踏まえ、各途上国の経済規模や開発課題等、個別の事情を踏まえたケース・バイ・ケースの議論が必要。
オ. 一方的な措置については、対抗措置の応酬が多角的貿易体制に深刻なリスクをもたらすおそれを懸念するとともに、背景にある過剰供給の問題への対応も必要。
(2)また、今般の会合のマージンで、岡本政務官は、会合の議長であるスレシュ・プラブー・インド商工大臣(H.E. Mr. Suresh Prabhu, Minister of Commerce and Industry)やロベルト・アゼベドWTO事務局長(Mr. Roberto Azevêdo, Director-General, WTO)と会談するとともに、他国の参加閣僚等とともにナレンドラ・モディ・インド首相を表敬した。また、韓国等からの参加者とそれぞれ短時間立ち話を実施した。
3月28日-30日:スワラージ印外相は日本を公式訪問し、第9回日印外相間戦略対話、安倍総理への表敬等を行った。また、スワラージ外相は、岸田自民党政務調査会長と会談したほか、インド人コミュニティーに対して演説を行った(今月の注目点参照)。
今月の注目点:スワラージ印外相の訪日
1. 第9回日印外相間戦略対話
3月29日、午後6時40分から約2時間、河野太郎外務大臣は、訪日中のスシュマ・スワラージ・インド外務大臣(H.E. Ms. Sushma Swaraj, External Affairs Minister of India)との間で、第9回目となる日印外相間戦略対話を行ったところ、概要は以下のとおり。
また、両大臣立ち会いの下でのインドに対する円借款(約1,500億円)に関する書簡の交換、共同記者発表が行われた。
(1)冒頭
河野大臣より、スワラージ大臣の外相としての初訪日を歓迎、日印外相間戦略対話を開催することができて大変喜ばしい、日印両首脳の年次相互訪問等を通じて、日印関係はかつてなく良好であり、本年のモディ首相訪日に向け議論したい、インドは自由で開かれたインド太平洋を実現する上での最重要パートナーであり、「自由で開かれたインド太平洋戦略別ウィンドウで開く」と「アクト・イースト」政策を更に融合させ、インド太平洋地域及び世界の平和と繁栄を主導していきたい旨述べた。
スワラージ外相より、外相として初の訪日となるが、桜の美しい時期に訪日することができて大変嬉しい、昨年9月のニューヨークでの河野大臣との日印米外相会合と安倍総理訪印は成功裏に行われた、本年はモディ首相が訪日する番であり、その成果について議論していきたい旨述べた。
(2)二国間関係
両外相は、政治・安全保障、高速鉄道やODAなどの経済関係、日本語教育、スポーツ交流や地方交流などの人的交流等の日印二国間の主要課題について、戦略的観点から幅広い意見交換を行った。
両外相は、海上保安庁や海上自衛隊の艦船のインド寄港等、日印両国の海洋安全保障を更に戦略的に進めていくこと、日印官民の協議枠組である日印トラック1.5対話を拡大強化し、「Indo-Pacific Dialogue」として開催していくことで一致した。
(3)グローバル課題、地域情勢
両外相は、テロ、安保理改革、軍縮不拡散等のグローバル課題について意見交換を行った。
両外相は、アジアを中心とする地域情勢について意見交換を行い、特に北朝鮮について、過去の教訓を踏まえ、北朝鮮による、完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法での核・ミサイルの放棄を実現するために、最大限の圧力を維持していくことで一致した。河野大臣から、核・ミサイル及び拉致の解決が必要であると述べ、理解を得た。
2. 安倍総理表敬
30日、午前10時過ぎから約15分間、安倍晋三内閣総理大臣は、訪日中のスシュマ・スワラージ・インド外務大臣(H.E. Ms. Sushma Swaraj, External Affairs Minister of India)による表敬を受けたところ、概要は以下のとおり。
(1)安倍総理大臣から、訪日を歓迎する、昨日の河野太郎外務大臣との外相間戦略対話は大変有意義だったと報告を受けている、日印は心と心がつながっている古い友人であり、世界で最も可能性を秘めた二国間関係である、この可能性を開花させ、二国間だけでなく、地域及び世界全体にとり有意義な関係とさせたい、インドは「自由で開かれたインド太平洋戦略」の最重要パートナーであり、日印関係の更なる強化に向けて協力していきたい、本年のナレンドラ・モディ首相訪日を楽しみにしている旨述べた。
(2)スワラージ外務大臣から、モディ首相から安倍総理大臣によろしく伝えてほしいとのメッセージをあずかっている、インドでは子供から大人まで良好な日印関係は安倍総理大臣とモディ首相のお陰であると考えている、日印は民主主義や法の支配といった普遍的価値を共有している、インドの経済成長に対する日本の協力に感謝している、今回は日印外相間戦略対話のため訪日し、河野大臣と有意義な議論を行った、本年のモディ首相訪日に向けて準備していきたい旨述べた。