
1 内政
【中央政府】
8月6日、モディ首相は、独立75周年を記念祝賀行事「アザディー・カ・アムリット・マホトサヴ」の第3回全国委員会で演説を行い、英国当地からの独立闘争の時代に国民の間に広がった様な強い愛国心を、今のインド国民に植え付け、国家発展・建設に生かす必要がある旨述べた。
8月7日、NITI Aayog(政策委員会)の第7回運営評議会が行われ、モディ首相及び各州首相が出席した。会合では、ヴィジャヤン・ケララ州首相(CPI(M))から、中央政府はより協力的な連邦制の実現に取り組む必要がある旨の意見が出たほか、バナジー西ベンガル州首相(AITC)も、中央政府は州政府の要求を真剣に検討すべきで有り、いかなる政策も州政府に強制されるべきではないと訴えた。
8月10日、ムルム大統領は、8月26日に退任するN.V.ラーマナ司法長官の後任として、ウダイ・ウメーシュ・ラリット判事を第49代司法長官に任命した。
【副大統領選挙】
8月6日、インド副大統領選挙の投票と開票が行われ、与党連立候補のジャグディープ・ダンカル候補が副大統領に選出された。
8月11日、宣誓式が執り行われ、ジャグディープ・ダンカル氏が副大統領に就任した。
【モンスーン国会】
8月1日、今次国会会期中全ての参加停止処分を受けているコングレス議員4名に対し、コングレスが党として同党所属議員が議場内にプラカードを持ち込まないことを保証出来るなら、同議員への国会参加資格停止処分を撤回する旨打診した。
8月1日、国立大学(改正)法案(The Central Universities (Amendment) Bill、 2022)が下院で可決されたほか、上院では、インド南極法案(The Indian Antarctica Bill、 2022)並びに大量破壊兵器およびその運搬システム(非合法活動の禁止)改正法案(The weapons of mass destruction and their delivery systems prohibition of unlawful activities amendment bill、 2022)が可決された。
8月3日、国立大学(改正)法案、及び国家反ドーピング法案(The National Anti-Doping Bill、 2022)が上院で可決された。
8月3日、ライ内務担当閣外大臣は、上院に対し、警察の捜査・逮捕権の強化に向けて2018年に改訂された非合法活動防止法(Unlawful Activities Prevention Act: UAPA)に関し、2018年から2020年の間に同法に基づき4690名が逮捕されたものの、実際に有罪判決を受けたのはわずかに149名であった旨文章で回答した。
8月3日、印政府は、2019年に国会に提出された後、長年に渡り係争中であった個人データ保護法案(The Personal Data Protection Bill、 2019)を国会から取り下げた。今後はより「包括的な法的枠組み」を打ち出すことを目的としている。
8月4日、家庭裁判所(改正)法案(The Family Court (Amendment) Bill、 2022)が上院で可決された。
8月5日、午前11時、下院議会において、広島・長崎の原爆被害者を追悼するビルラ下院議長の発言があった後、議員による黙とうが捧げられた。
8月8日、モンスーン国会が当初の予定より2日早く閉会した。この度の国会では、開会前より審議待ちとなっていた35法案に加え、新たに6法案が提出された。そのうち、5法案が両院を通過したほか、1法案が取り下げとなり、35法案が審議中のまま閉会した。
【インド独立記念日】
8月15日、モディ首相は、独立記念日に際しデリーのレッド・フォートにて演説を行った。
【農民運動】
18日から20日にかけて、2020年から21年にかけて全国的な盛り上がりをみせた農業関連法抗議運動に於いて中核的な役割を担った農民組織であるインド農民組合(BKU)及び統一農民戦線(SKM)が、ウッタル・プラデシュ州ラキンプールケリー県において、昨年12月に同地で発生したアジェイ・ミシュラ内務担当閣外大臣の息子を含むBJP関係者を乗せた車が、農業関連法への抗議活動を行っていた農民の列に突っ込み、複数の参加者を轢殺した事件(ラキンプールケリー事件)に対する抗議運動を行い、ミシュラ大臣の解任を強く求めた。
22日、デリー市内のジャンタル・マンタルにおいて、BKU)やSKMなどの農民組織の呼びかけを受け、失業率上昇への行為や、農作物の最低支持価格(MSP)の法的保証などを求める数百名の農民による抗議集会が行われた。
【BJP】
8月10日、BJPは、近年のウッタル・プラデシュ州議会選挙に於いて重要な役割を担ったされるスニル・バンサル氏を、西ベンガル州、オディシャ州、及びテランガナ州担当の全国書記(National Secretary)に任命した。
8月17日、BJPは党内の議会理事会と中央選挙委員会の人事改変を行った。議会理事会には指定カーストやOBCの代表者が就任、中央選挙委員会にはファドナヴィス・マハーラーシュトラ州副州首相が新たに任命された。他方、ガドカリ道路交通大臣やチョウハン・マディヤ・プラデシュ州首相が議会理事会及び中央選挙委員会より解任された。
【コングレス】
8月4日、コングレスは同党所属の全ての国会議員を党事務所に招集し、コングレスの将来戦略に関する討議を行った。
8月6日、中央デリーに於いて、コングレス所属政治家及び同党活動家が、警察の禁止命令を無視し、インフレや失業、物価上昇に抗議するデモ行進を実施、ラーフル・ガンディー前総裁、プリヤンカ・ガンディー、及びサチン・ピロット・ラージャスタン州議会議員等の同党所属議員が警察に一時的に拘束された。
8月26日、アーザード元上院議員(元保健・家族福祉相、元ジャンム・カシミール(JK)州首相)が、ソニア・ガンディー、コングレス暫定総裁に宛てた5ページの書簡にて離党を表明した。ラーフル前総裁が党内における協議を軽んじ、一部の側近のみに頼り意思決定を行っているとして、ガンディー家による党運営を痛烈に非難した。
8月28日、コングレス・ワーキング・コミッティー(CWC:コングレスの意思決定最高機関)は、党総裁選挙を10月17日に開催する旨発表した。結果は同月19日に公表される予定。総裁選挙の実施は、2020年11月以来2年ぶりとなる。
8月29日、コングレスは、全国22カ所で記者会見を行い、9月7日から5カ月間に渡る「Bharat Jodo Yatra(インド連結行脚)」を開始し、ラーフル前総裁率いる全国3500キロメートルに及ぶ独立以来初の大規模な大衆との交流プログラムを実施する旨発表した。タミル・ナドゥ(TN)州からジャンム・カシミール(JK)州まで各州を横断し、国内の経済問題や社会の二極化等について国民に訴える予定。
8月30日、元JK準州副首相や3人の州大臣経験者を含む64人がコングレスを離党したほか、アーザード氏は新党を立ち上げる意向である旨報じられている。
8月31日、30日に続き、更に32人の党員がコングレス離党を表明した
【デリー準州】
8月17日、ケジリワル・デリー準州首相(AAP党首)は、健康、教育、農業、及び雇用に焦点を当て、インドを「ナンバーワン」にする「Make India No.1」ミッションを発表した。ケジリワル州首相は、この目標の達成に向け、国中で良質かつ無料の教育の提供、すべての人に無料医療の提供、若者の雇用確保、農民への公正な価格の提供、女性への平等な権利と尊厳の提供を5つの優先事項と説明した。
8月19日、中央捜査局(CBI)は、デリー準州における酒類販売の新制度導入に関する汚職疑惑で、シソディア・デリー準州副首相(AAP)をはじめ、準州物品税局の担当者や、企業関係者ら15名の自宅の家宅捜索を行った。
【ウッタル・プラデシュ(UP)州】
8月25日、ブペンドラ・シンUP州町村自治(Panchayati Rji)大臣が、BJP・UP州支部長に任命された。シン州大臣は、UP州西部のジャート・コミュニティ出身。2021年11月に廃止された農業関連法に対する抗議活動における中心的役割を果たしたジャートからの支持拡大を得て、2024年の総選挙で全80議席を獲得することを目指す旨述べている。
【マハーラーシュトラ(MH)州】
8月8日、シンデMH州首相は、BJPとシブ・セナによる連立内閣の改造を実施した。BJPとシブ・セナ双方からそれぞれ9名が選出され、計18名の大臣が宣誓式を行った。
【グジャラート(GJ)州】
8月10日、AAPは、2022年末に予定されるGJ州議会選挙において、仮に同党が選ばれた場合、同州の18歳以上のすべての女性に毎月1000ルピーの助成金を支給することを約束した。
8月15日、GJ州政府(BJP)は、2002年にGJ州で発生したコミュナル暴動の折、ムスリムの女性を集団で暴行したとして終身刑を受けていた11名のヒンドゥー教徒を刑期短縮により釈放する旨発表し、野党及び国内の人権団体より多くの批判の声が上がった。
8月27日から28日にかけて、モディ首相はグジャラート州を訪問。27日、モディ首相は、アーメダバード市において、カディ(インド国産の紡ぎ・手織り生地)製品のプロモーションイベントに参加した。28日は同州ブジ地区を訪問し開発計画の定礎式に参加、その後ガンディーナガル市に於いてスズキによるインド事業開始40周年の記念式典に出席した。
【西ベンガル(WB)州】
8月1日、バナジー州首相は、行政サービスの向上に向け、今後6ヵ月をかけてWB州内に7つの県を新設する旨発表した。これにより州内の県の数は30県となる見込み。
8月5日、デリー訪問中のバナジーWB州首相はモディ首相と会談し、中央政府からWB州に割り当てられている補助金のうち、約1兆96億8千万ルピーが未だに振り込まれていないとして、モディ首相自らが本件をフォローするよう求めた。同日、バナジー州首相はムルム大統領を表敬訪問した。
【ジャンムー・カシミール(JK)準州】
8月5日付、当地メディアは、2019年8月5日に印政府が印側カシミールの「特別な地位」を認める憲法第370条を無効としてからちょうど3年が経過した旨報じた。マノージ・シンハ暫定知事はメディアに対し、観光客誘致の成功をアピール、カシミール地方の観光客数が過去10年で最高の1万人を超え、観光インフラの整備・拡充が急ピッチで進んでいる旨説明した。また、JK準州では現在2700億ルピー相当の投資案件が承認されており、同準州政府は今年中に7000億ルピー相当の投資を行うことを視野に入れていると報じられた。
8月17日、憲法第370条の無効化以降、初の州議会選挙の実施に向けた準備の進むジャンム・カシミール(JK)準州において、クマール選挙管理委員長(Chief electoral officer)が、選挙人名簿に関する記者会見を実施、新たな選挙人名簿には、200万人から250万人が追加される点や、選挙人登録の対象者につき説明を行った。
【テランガナ(TG)州】
8月25日、元BJP所属のラジャ・シンTS州議会議員が、再逮捕された。シン議員は、預言者ムハンマドに対する侮辱的発言を行い、各地で抗議活動を引き起こしたことで、8月23日に逮捕、BJPの党員資格を剥奪されていたが、警察の逮捕に至った手続きに不備があったとし、刑事裁判所令により同日釈放されていた。
【ビハール(BR)州】
8月9日、ニティシュ・クマール・ビハールBR州首相は、自身が党首を務める人民党統一派(JDU)による、BJPとの連立解消及び国民民主連合(NDA)からの離脱を発表し、BR州知事に対し同州首相職からの辞表を提出した。その後、同州最大与党の国民人民党(RJD)党首のテジャシュウィ・ヤダヴと面会した他、コングレスやインド共産党マルクス・レーニン主義派などの政党も、「BJP抜き」の新政権樹立に意欲を表明。JDU及びRJDが主体となり非BJP政党による大同盟(Mahagathbandhan)が結成され、クマール氏が代表に選ばれた。
8月10日、JDU及びRJD主導の新政権が樹立、同州首相にはクマール氏が再び就任し、BR州首相として、自身8回目となる宣誓を行った。同州副州首相には、テジャシュウィ・ヤダヴRJD党首が就任した。
8月17日、クマールBR州首相は内閣改造を行った。新内閣は、国民人民党(RJD)から16名、人民党統一派(JDU)から11名、コングレスから2名、その他政党及び無所属議員から2名で構成され、計31名が宣誓式を行った。
2 経済
8月5日
インド中央銀行(RBI)は8月3日~5日まで開催された金融政策決定会合の結果を公表し、政策金利を50bps引き上げ、5.40%とすると発表し、2022年5月以降3会合連続の引き上げとなった。
2022年5月~6月のCPIインフレ率は、4月の7.8%から7.0%(前年同期比)に緩和したが、許容範囲の上限を超える状態が続いている。食品価格のインフレはある程度穏やかになったが、5月~6月のコアインフレ(食料と燃料を除くCPI)は穏やかとはいえ依然として高い水準にある。
今後の経済成長見通しについては、農村部、都市部いずれも消費が促進されると考えられており、企業活動についても新規受注が順次拡大するとみられているが、長引く地政学的緊張、世界金融市場のボラティリティの上昇、世界金融情勢の引き締めは、引き続き見通しに大きな影響を与えている。(RBIによる2022年度の実質GDP成長率予測は通期で7.2%を維持。)
3 外交
(印露関係)
8月16日
ドバル国家安全保障補佐官が、モスクワを訪問しパトルシェフ安全保障会議書記と会談。
(印仏関係)
8月16日
モディ首相が、マクロン・仏大統領と電話会談。
8月31日
印仏国連安保理協議をフランス・パリで開催。
(印・南米関係)
8月22日
ジャイシャンカル外相が、ブラジル、パラグアイ、アルゼンチンを訪問。外相による初の南アメリカ訪問。
ジャイシャンカル外相が、パラグアイを訪問し、ベニテス大統領を表敬し、アリオラ外相と会談。また、アスンシオンでインド大使館を開館。
(印・フィリピン関係)
8月5日
モディ首相が、マルコス・フィリピン大統領と電話会談。
(印・モルディブ関係)
8月29日
ジャイシャンカル大臣が、ニューデリーでナシード・モルディブ国家議長と会談。
(印・カナダ関係)
8月23日
ビルラ下院議長が、カナダ・トロントでコモンウェルス議会会議に出席。
(印・オランダ関係)
8月1日
ソリ・モルディブ大統領が、ムルム大統領、モディ首相、ジャイシャンカル外相と会談。
8月29日
マキシマ・オランダ王妃陛下が、ムルム大統領を表敬。
(印・UAE関係)
8月31日
ジャイシャンカル外相がUAEを訪問し、アブダッラー・UAE外相と第14回印UAE共同委員会を共同開催し、第3回印・UAE戦略対話に出席。
(その他)
8月3日
ジャイシャンカル外相が、カンボジアでアセアン・印大臣会合に出席。
8月4日
ジャイシャンカル外相が、アセアン・印大臣会合のサイドラインでブリンケン米国務長官、ウォン豪外相、サブリー・スリランカ外相、ソン・ベトナム外相及びセン・カンボジア首相とそれぞれ会談。
8月10日
ジャイシャンカル外相が、翌11日にニューデリーで実施されたASEAN各国議会代表団会談のサイドラインで、エルコギ・エチオピア女性・社会問題大臣、モーテンセン・デンマーク開発協力・北欧協力大臣及びマウラー・スイス財務大臣とそれぞれ会談。
8月23日
シン国防相がウズベキスタン・タシケントを訪問し、上海協力機構(SCO)の防衛年次会合に出席。