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日印関係最新情報

月間インドニュース(2021年11月)

2021年12月17日掲載


1 内政

【冬期国会】

11月29日:11月29日~12月23日の会期で、冬期国会が開会された。

【連邦政府】

11月2日:10月30日に13の州及び1つの連邦直轄領において行われた補欠選挙(下院議会3議席と州議会29議席)の開票が行われた。現地メディアによれば、コングレスがBJPの選挙区を奪った州もいくつか見られるが、両勢力が混ざり合い「mixed」との評価が報じられており、「野党が勢いづいた」とまでは言えない結果であったとの分析がなされている。

11月6日:現地メディアは、内閣議会委員会(CCPA)が11月29日から12月23日の会期で冬期国会を実施する旨承認したと報じた。

11月14日:中央捜査局(CBI)及び財務省監視局(Enforcement Directorate:ED)の長官の任期を2年から最大5年に延長することを認める条例が交付された。

【BJP】

11月7日:BJP全国幹部会議(BJP national executive meeting)がハイブリッド形式で実施され、モディ首相、シャー内相、ナッダ総裁など、350名を超える同党幹部が出席した。会議では2022年に控える各州議会選挙に向けた話し合いが行われ、ナッダ総裁は、「党の最盛期はまだ迎えていない」と述べ、選挙が行われる州での党組織強化を目標に掲げたほか、特に南部州への活動強化に取り組むよう述べた。


【農業法改正】

11月19日:モディ首相は、農業関連法の廃止と、29日から始まる冬期国会で廃止に向けた手続きを行う旨発表した。

11月20日:統一農民戦線(SKM)は冬期国会で農業関連法が廃止されるまで、抗議活動を継続し、26日の抗議運動記念日(抗議活動開始1年)や、29日の冬期国会初日の国会議事堂へのトラクター行進などを行う旨発表した。(なお、トラクター行進は後日中止)

11月29日:冬期国会初日に提出された農業関連法廃止法案(The Farm Laws Repeal Bill, 2021)が、審議されること無く、下院・上院双方で可決された。


【ジャンム・カシミール(JK)準州】

11月4日:現地メディアは、モディ首相がJK準州ラジューリ県ナウシェラ地区を訪問し、陸軍兵士と共にディワーリー祭を祝った旨報じた。


【パンジャーブ(PB)州】

11月1日:アマリンダル・シン前PB州首相は、ソニア・ガンディー・コングレス総裁に離党届けを提出、自ら立ち上げた新政党、「Punjab Lok Congress(パンジャーブ民主会議派)」の党名を発表した。

11月8日:現地メディアは、アシュワニ・シャルマBJP・PB支部長が、2022年に控える州議会選挙において、BJPが同州全117議席全てで擁立を目指すと発言した旨報じた。

11月20日:シドゥPB州コングレス委員長は、カルタルプール回廊の同州とパキスタン国境地点において、パキスタン政府関係者の出迎えを受けた際、「カーン首相はたくさんの愛を注いでくれた兄の様な存在である」と発言、BJPから非難の声が上がった。

【デリー(DL)準州】

11月14日:現地メディアは、DL準州政府が大気汚染による全ての教育機関の閉鎖を発表した旨報じた。15日から1週間、準州内の全ての教育機関、同準州政府機関が閉鎖され、遠隔授業または在宅勤務に移行されるほか、少なくとも17日まで準州内の建設作業が禁止された。

【ウッタル・プラデシュ(UP)州】

11月6日:現地メディアは、アディティヤナートUP州首相が、2022年同州議会選挙への州首相自身の出馬は党が決定すると述べた旨報じた。

11月8日:現地メディアは、UP州ラキンプール・ケリー県で発生した事案(10月3日、農業関連法反対デモ行進を行う農民らの列に同州政府関係者を乗せた車が衝突した)に対する同州警察の調査が不十分だとして、最高裁が、UP州以外の退任高等裁判所判事を監視につける必要があると述べた旨報じた。

11月12日:現地メディアは、ヤーダブ社会主義党(SP)党首が同党が州政権を取った場合、カースト国勢調査の実施を約束した旨報じた。

11月15日:現地メディアは、プリヤンカ・コングレスUP州支部長が、同党は来年の同州議会選挙において、他の政党と協力せず、単独で戦うと述べた旨報じた。

【ウッタラカンド(UK)州】

11月1日:現地メディアは、UK州政府が10年生から12年生の約16万人に対し、タブレットを無料で配布する予定であり、州議会選挙の日程が発表される前に配布を終える予定であると報じている。

11月5日:現地メディアは、モディ首相がUK州にあるヒンドゥー教聖地ケダルナート寺院を訪問した旨報じた。

11月12日:現地メディアは、SP党が2022年に予定される同州議会選挙において、全70議席全てで候補者を擁立すると発表した旨報じた。


2 経済

11月30日:インド統計・計画実施省は、2021年度第2四半期(7~9月)の実質GDP成⻑率(2011年基準)推計値を前年同期比8.4%と発表した。新型コロナによる厳格なロックダウンで経済活動が停滞し、マイナス成長を余儀なくされた前年同期とは対照的に、プラス成長に転じた。


3 外交

(印パ関係)

11月17日:現地メディアは、新型コロナウイルス感染症の為に閉鎖されていた、印パ間のカルタールプル・サーヒブ回廊(パキスタンに位置するシーク教寺院とインド・パンジャブ州アムリトサル市近郊のシーク教寺院とを結ぶ、両国のシーク教徒に開かれた、ビザ無しの宗教回廊)が再開された旨報じた。


(印米関係)

11月13日:印外務省は、モディ首相が、ジョン・コーニン上院議員ら米国議会代表団と面会した旨発表した。面会では、南アジアやインド太平洋の関連を含め、相互の関心事項である地域情勢について議論が行われた。


(印豪関係)

11月18日:印外務省は、豪州戦略政策研究所(ASPI)が17日~19日に開催したシドニー対話において、モディ首相がオンラインで基調演説を行った旨発表した。「インドの技術開発と革新」というテーマの下、モディ首相は、インド太平洋地域及びデジタル化した世界におけるインドの中心的な役割を認識している旨述べた。

(印露関係)

11月26日:印外務省は、第一回印露外務・防衛閣僚会議(「2+2」)が12月6日にニューデリーで開催される旨、また、プーチン大統領が12月6日にデリーを訪問し、モディ首相と共に第21回印露年次会合を開催する旨発表した。前回の印露年次会合は、2019年にモディ首相がウラジオストクを訪問し開催された。両首脳による対面での会談は、2019年11月以来となる。


(印中関係)

11月7日:現地メディアは、ジャンム・カシミール州ラダックやアルナチャル・プラデシュ州のLAC(実効支配戦)、沿いにおける道路計画を加速するために、道路建設を行う特別な建設部隊を展開させることを決定した旨報じた。

11月13日:現地メディアは、ラワット印国防参謀長が11日に実施されたシンポジウムで、インドにとって第一の敵(enemy number 1)は中国かと問われ、「疑いなくそうだ(no doubt)」と答え、パキスタンよりも「北部国境の脅威はより大きい」と述べた旨報じた。

11月18日:インド外務省は、第23回印中国境問題に関する協議及び調整のためのワーキングメカニズム会合(WMCC)が同日開催された旨のプレス・リリースを発表した。

11月19日:現地メディアは、中国がアルナチャル・プラデシュ州の国境沿いにおいて、2つ目となる村落の建設を行っている旨報じた。

11月29日:現地メディアは、最近印中間で実施された協議において、インドが中国軍の東部ラダックにおけるインフラ増強に対して懸念を表明した旨報じた。インドは、中国による道路の新設・拡張、新たな居住区、村落及び空港の建設のほか、ミサイル連隊を含む重火器の配備を懸念すべき理由として挙げている。


(印・ベトナム関係)

11月12日:印外務省は、オンラインで印・ベトナム政務協議及び戦略対話が行われた旨発表した。印外務省からは、ダス東担当次官が出席し、印越間における2020年12月のテレビ電話首脳会談以来の進展及び両国首脳が署名した「平和・繁栄・人々に対する共同ビジョン」の2021年から2023年アクションプランについてレビューした。


(印・アフガニスタン関係)

11月10日:印外務省は、第3回「アフガニスタンに関する地域安全保障対話」がニューデリーで参加者を拡大し開催された旨発表した。インド、イラン、カザフスタン、キルギス、ロシア、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの国家安全保障担当補佐官および安全保障会議事務局長が出席し、「アフガニスタンに関するデリー宣言」を発表した。


(印EU関係)

11月16日:印外務省は、シュリングラ外務次官がサニーノ欧州対外活動庁(EEAS)事務総長と電話会談を行った旨発表した。デリー地域安全保障対話を含むアフガニスタン情勢、ミャンマー情勢やベラルーシ・ポーランド国境情勢について議論し、今後継続的に協議を行うことで合意した。

(湾岸協力理事会)

11月10日:印外務省は、ジャイシャンカル外相が、10日~11日まで訪印した湾岸協力理事会(GCC)ナーイフ・ファラー・アル・ハジュラフ事務局長と会談した旨発表した。両者は、印GCC間における近年より強化された友好関係を振り返り、更なる協力関係の深化について議論を行った。


(COP26世界リーダーズ・サミット)

11月10日:現地メディアは、米国が101カ国目の加盟国として「太陽に関する国際的な同盟(ISA)」に加盟し、ジョン・ケリー米国気候問題大統領特使がブペンドラ・ヤーダブ環境大臣に加入文書を提出した旨報じた。ISAは2015年のCOP21開催期間中に、国際社会における太陽エネルギーの飛躍的な普及・拡大を目的とし、インドがフランスと共に立ち上げたイニシアティブで、事務局はニューデリーに所在している。


(環インド洋連合(IORA))

11月17日:印外務省は、ラージクマール・ランジャン・シン外務副大臣が、第21回環インド洋連合(IORA)閣僚会合にオンラインで出席した旨発表した。シン外務副大臣は、環インド洋及び更に広いインド太平洋における平和、安全、繁栄を促進するためにIORA強化に向けたインドの強固なコミットメントを再確認し、災害リスク管理の分野におけるインドの貢献を強調した他、インドの新型コロナ対応の経験について説明し、インドの経験と資源を共有する用意があることを強調した。


(上海協力機構(SCO))

11月25日:印外務省は、ジャイシャンカル外相がカザフスタンの主催するSCO各国政府代表会合に出席した旨発表した。本会議は毎年開催され、貿易及び経済に関する議題の他、年間予算の承認を行うものとされている。


(ASEMアジア欧州会合)

11月25日:印外務省は、ナイドゥ副大統領が、ASEM首脳会合における第一セッションで演説を行った旨発表した。演説では、国連安保理やその他の国際機関の改革を求め、現代の世界的な課題は、過去の課題に対応するために作られた旧来のシステムでは対応できないと述べた。また、ナイドゥ副首相はリトリート・セッションでも演説を行い、パンデミックにより現在のグローバルシステムの不足点が明らかになり、不足点の克服には、多国間の協力的なアプローチが欠かせない旨述べた。


(印露中)

11月26日:ジャイシャンカル外相が議長を務め、テレビ電話方式で第18回中露印3か国外相会議が開催された。


(BIMSTECベンガル湾多分野技術経済協力イニシアチブ)

11月26日:印外務省は、シンヴィ・テロ対策局長率いるインド代表団が、25日に開催された第9回テロ対策及び国際犯罪に対するBIMSTEC合同作業部会に参加した旨発表した。本会合は、ブータン主催のもと、バングラデシュ、ブータン、インド、ミャンマー、ネパール、スリランカ、タイが参加した。


4 日印関係

11月22日:林芳正外務大臣は、ジャイシャンカル外務大臣と電話会談を行った。

今月の注目点:日印外相電話会談

11月22日、林芳正外務大臣は、ジャイシャンカル・インド外務大臣(H.E. Dr S. Jaishankar, External Affairs Minister of India)と電話会談を行ったところ、概要は以下のとおりです。

1 冒頭、林外務大臣から、来年日印国交樹立70周年を迎えることに触れた上で、「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」を更に発展させるべくジャイシャンカル外相と緊密に連携していきたい旨述べました。ジャイシャンカル外相からは、林外務大臣の就任に対し祝意を表した上で、同様に、林外務大臣と日印関係強化のために緊密に連携していきたい旨述べました。

2 両大臣は、二国間関係につき意見交換を行い、首脳の年次往来の再開が極めて重要であり、双方の都合のよい適切なタイミングでの岸田総理大臣の訪印を実現すること、日印外務・防衛閣僚会合(「2+2」)の日程も調整していくことを確認しました。また、両大臣は、サイバーや宇宙、経済安全保障といった新たな分野を含む幅広い安全保障面での協力に加え、気候変動対策やデジタル、ヘルスケアといった経済面での協力を進めていくこと、日印の旗艦プロジェクトである高速鉄道事業を引き続き着実に推進していくこと等を確認しました。

3 両大臣は、日印が共有する「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日印や日米豪印で緊密に連携していくことを確認しました。

4 両大臣は、地域情勢についても意見交換を行い、その中で、両大臣は、東シナ海・南シナ海での力による一方的な現状変更の試みや経済的威圧への強い反対の意を改めて共有するとともに、サプライチェーン強靭化等の経済安全保障の面でも協力を深めていくことを確認しました。また、北朝鮮の核・ミサイル活動を含め、北朝鮮情勢についても意見交換し、林大臣から、拉致問題について理解と協力を求めました。この他、両大臣は、ミャンマーやアフガニスタン等の地域情勢、新型コロナ対策やテロ対策等の国際社会の課題での連携、軍縮・不拡散、国連安保理改革を含む国際場裡での協力等も進めていくことで一致しました。