日印関係最新情報

月間インド・ニュース(2012年10月)

2012年11月12日掲載


Ⅰ. 内政
9月25日
*28日付のタイムズ・オブ・インディア紙によれば、25日、アジット・パワル・マハラーシュトラ州副首相が辞表を提出。これは、2009年の2,000億ルピーに上る灌漑プロジェクトについて、同副首相が、所定の手続きを経ずに早急に許可したことがインド各紙に取り上げられたことを受けたもの。同副首相は、シャラド・パワル民族主義会議派(NCP)総裁の甥にあたる。
9月28日
*29日付ヒンドゥー紙は、インドの初代国家安全保障補佐官であるブラジェーシュ・ミシュラ氏が、83歳で 亡くなったことを報じている。
10月1日
*2日付のヒンドゥー紙は、西ベンガル州のママタ・バナジー州首相が、社会主義党(SP)の支持を得られれば、次期冬期国会において、与党統一進歩同盟(UPA)に対し不信任案を提出する旨発言したことを報じている。同紙によれば、他の主要野党は本件にさほど関心を有していないも、タミル・ナド州の野党・ドラビダ進歩連盟(DMK)は、マルチブランド小売業のFDI自由化に反対する動きであれば支持をする姿勢を明らかにしているとのことである。
10月2日
*3日付のヒンドゥー紙は、インドの汚職と戦うIAC(India Against Corruption)が、新たな政党を立ち上げる旨発表したことを報じている。IACは、マハートマ・ガンディー、ラール・バハドゥール・シャーストリ元首相、B. R. アンベードカル博士(注: インド憲法起草者)、サルダール・パテル元内務大臣の名前を掲げ、インドのシステムを変え、権力を人々に戻すため、新たな政治の場を提供したいとしている。政党名はまだ発表されていないが、党の規約や党員と併せて11月26日のアンベードカル博士の誕生日に発表されると見られている。
10月3日
*3日、インド選挙管理委員会は、グジャラート州及びヒマーチャル・プラデーシュ州の州議会選挙の日程を発表。グジャラート州では、第1回投票を12月13日、第2回投票を17日に実施し、開票は20日の予定。また、ヒマーチャル・プラデーシュ州では、11月4日に投票が行われ、開票は12月20日を予定している。
10月5日
*ヒンドゥー紙は、野党第1党のインド人民党(BJP)党首のニティン・ガドカリ氏が、マハラーシュトラ州の灌漑プロジェクトについて、7月、バンサル水資源大臣宛の書簡にて、バンサル大臣と近い関係にあると言われている契約請負人に対し資金を支払うよう求めたことが問題となっている旨報じている。ガドカリ党首は、記者の質問に答え、バンサル大臣宛に書簡を発出したのは、マハラーシュトラ州の農民の利益を守るためであると答えた。これに対してコングレス党関係者は、ガドカリ党首、契約請負人が本来受け取るべきではない資金を得ることに関心を有していることが明らかであると主張している。
*6日付のヒンドゥー紙は、IACのアールビンド・ケジリワル氏とプラシャーント・ブーシャン氏が、ロバート・バドラ氏(注: ソニア・ガンディー・コングレス党総裁の娘婿)と同氏の母親が有する企業が、2007年~2010年の間(大手不動産会社である)DLFからの無担保・無利子の貸付の利子以外に収入がないこと、コングレス党が政権を握っているデリー準州及びハリヤナ州において、DLFを含む同氏の後押しを受けた企業が数百億ルピー相当の土地を得た疑いがあるとの主張を行ったことを報じている。
10月6日
*7日付のヒンドゥー紙は、DLFが、ロバート・バドラ氏からの便宜(注: IACの主張によれば、州政府を通じハリヤナ州やデリーの土地の割当てを受けた)の見返りとして無担保の貸付を行ったとの主張を否定した旨報じている。同社のプレスリリースによれば、6億5,000万ルピーは、ビジネスの上の前払い金であり、うち1億5,000万ルピーは返済され、5億ルピーは、スカイライト・ホスピタリティー社(バドラ氏の保有する企業)からグルガオンの3.5エーカーの土地を購入のために使われたとしている。
10月10日
*エコノミック・タイムズ紙によれば、マヤワティ大衆社会党(BSP)党首・前ウッタル・プラデーシュ州首相が、同州の州都であるラクナウにおいて、引き続きコングレス党率いる統一進歩前線(UPA)に対して閣外協力を行うことを決定した旨発表した。
10月15日
*16日付のヒンドゥー紙は、15日、メノン国家安全保障補佐官が、サイバー・セキュリティについての官民共同作業部会の勧告と題する報告書を発表し、安全保障の体制に民間部門との協力の可能性を開いた旨報じている。
10月17日
*ヒンドゥスタン・タイムズ紙は、ニティーシュ・クマール・ビハール州首相が、同州のハイレベル代表団を率いて、11月9~16日の日程でパキスタンを訪問予定である旨報じている。クマール州首相は、カラチ、ラホール及びイスラマバードを訪問し、ワガ国境経由で陸路にて帰国予定。ラッルー・プラサード・ヤダブ元州首相が、2003年にパキスタンを訪問した際には、彼のユーモアある発言によりパキスタン国内で一躍人気者となった。
*17日付のタイムズ・オブ・インディア紙他は、ラフル・ガンディー・コングレス党幹事長が、内閣改造について協議するためにシン首相と面会したことを報じている。シン首相は、ガンディー幹事長に入閣を打診したとのこと。
10月25日
*25日付のタイムズ・オブ・インディア紙は、シン首相が、28日にも内閣改造を行う予定であること、ラフル・ガンディー・コングレス党幹事長が入閣する見込みであることを報じている。ガンディー幹事長に近い国会議員は、同幹事長の入閣と共に、閣僚の若返りが図られるとの見込みであると話しているとのこと。(注: その後の改造では、同幹事長の入閣はなかった)
10月27日
*ヒンドゥー紙は、民族奉仕団(RSS)(注: BJPの支持母体の一つ)は、BJPのガドカリ党首の辞任の是非について、党首の辞任について決定を行うのはBJPの問題であるとしつつ、特定の主張のみに基づいて辞職する必要はないとの立場である旨報じている。
10月28日
*29日付ヒンドゥー紙は、28日に行われた内閣改造において、サルマン・クルシード氏が外務大臣、パワン・クマール・バンサル氏が鉄道大臣に任命されたこと等を報じている。同報道によれば、今回の内閣改造の4つのメッセージは、①若手の登用、②改革路線の継続、③アーンドラ・プラデーシュ州に対する積極的なメッセージの発出、④イスラム教徒であるクルシード外務大臣の起用によるインドの多様性を強調、とのことである。シン首相は、今回の内閣改造は、若さ、経験と関連するポートフォリオを考慮した結果であると説明している。
10月29日
*29日付のタイムズ・オブ・インディア紙は、ラフル・ガンディー・コングレス党幹事長が、同党の事務局長又は総裁代理の職に就く見込みである旨報じている。これらの二つの役職は、儀礼的なポストであり、常駐のポストではないものの、同幹事長が就任すれば、将来の総裁就任へ向けたメッセージとなるであることを報じる一方で、同幹事長は党の役職に就任するよりも、コングレス党の全国委員会(AICC)の若手を統括する立場を望むのではないかとの見方もあること報じている。

Ⅱ. 経済
9月29日
*30日付タイムズ・オブ・インディア紙他によれば、29日に、インド宇宙研究機関(ISRO)の情報通信衛星(G-SAT10)が、欧州のアリアン5号機により打ち上げられたことを報じている(同衛星は、10月3日に目的の軌道に投入された)。同衛星により、国内の情報通信及び放送の加速等が期待できるとのこと。
*30日付のヒンドゥー紙は、最高裁判事の就任式に出席したシン首相が、大統領官邸において、小売業等のFDI(外国からの投資)自由化等の一連の経済自由化策について、記者からの問いかけに対して、改革は1回限りのプロセスではなく、継続するプロセスである旨述べたことを報じている。モディ・グジャラート州首相が、一連の政策を米国の意に沿おうとする策だと批判したことに対しては、インドは独立した国であり、米国とは何の関係もない旨応答。また、今回の一連の自由化策は、次の総選挙の結果に(与党にとって否定的な)影響を与えるのではないかとの問いに対しては、今回の政策は国のための政策であること、また、選挙はまだ先のことである旨回答した。
10月4日
*インド政府発表によれば、閣議において、内閣が財務委員会の提言に基づき、審議中の保険法改正法案(The Insurance Laws(Amendment)Bill, 2008)及び年金基金規制法案(The Pension Fund Regulatory and Development Authority Bill, 2011)の案文について、保険業の外資出資比率制限を現行の26%から49%に引き上げる等の修正を加えることを決定した。同法案は、冬期国会に提出される予定。
*4日、インド政府は、閣議において第12次5か年計画案が承認されたことを発表。同法案は、国家開発評議会に提出され、最終承認を受ける予定。
10月5日
*6日付のフィナンシャル・エクスプレス紙は、米・インド・ビジネス評議会(US-India Business Council)代表団が、ウッタル・プラデーシュ州を訪問し、アキレシュ・ヤダブ同州首相と面会し、同州におけるビジネス・チャンスについて協議を行い、来年の3月には再度訪問することを約した他、2013年の訪米の招請を行った旨報じている。インディアン・エキスプレス紙によれば、同評議会は、同州が計画しているラクナウ・アーグラ間の高速道路計画、アーグラ空港計画、電力事業への機材供与、天然ガス・パイプライン計画に関心を示しているとのことである。
10月9日
*9日付タイムズ・オブ・インディア紙は、インドを訪問中のガイトナー米財務長官が、ムカジー財務大臣との面会において、インド政府による最近の規制緩和策は非常に意義深い政策であり、インドの経済成長にとって明るいものである旨発言したと報じている。
10月12日
*12日付けヒンドゥー紙は、11日に70歳の誕生日を迎えたインドの映画俳優アミターブ・バッチャンの自宅に、ファンが殺到したことを報道している。10日には、妻で女優であるジャヤ・バッチャン、息子で同じく俳優のアビシェーク・バッチャンの主催する誕生会が、ムンバイのフィルム・シティー(映画撮影所)で開催された。
10月16日
*16日付のヒンドゥー紙は、経済協力開発機構(OECD)が、インド外務省との間で、在インド事務所の開設の他インドのOECDへの加盟について協議を行った旨報じている。インドは、ブラジル、中国、南アフリカ、インドネシアと共に、OECDのキーパートナー国となっている。
10月17日
*ヒンドゥスタン・タイムズ紙他は、ボリウッド映画スターのサイフ・アリ・カーンとカリーナ・カプールが結婚したことを報じている。
10月21日
*25日付のビジネス・スタンダード紙は、民間航空総局(DGCA)が、21日にキングフィッシャー航空の航空許可を一時停止する決定を行ったことを報じている。これは、20日が期限となっていた実行可能な運営・経営再建策を提出できなかったことを受けて決定されたもの。一時停止措置には、明確な期限はなく、飛行の安全を確保するための運営と経営の計画を提出できれば解除される。
10月22日
*タイムズ・オブ・インディア紙は、ヤーシュ・チョプラ・フィルムの設立者であり、著名な映画監督であるヤーシュ・チョプラ氏が80歳で亡くなり、53年に亘る映画人生の幕を閉じたことを報じている。
10月28日
*29日付のヒンドゥー紙によれば、ビジャイ・マッリャUBグループ会長が、キングフィッシャー航空への資金補充のためには同グループ内において利益を上げている他事業の利益を注入する以外の方策はないというメディアの報道を否定したとのことである。
10月30日
*インド準備銀行は、第二四半期金融政策会合において、政策金利となるレポレートを8%に据え置き、預金準備率を0.25%引き下げ、4.25%とすることを決定した他、2012-2013年度の経済成長予測を5.8%に引き下げた(7月の発表は6.5%)。2013年末時点のインフレ予測については、7.0%から4.5%に引き上げた。

Ⅲ. 外交
10月4日
*5日付ヒンドゥー紙によれば、クリシュナ外務大臣は、米国を訪問し、グルドワーラー(シク教徒のお寺)での襲撃事件の被害者の家族と面会し、インドと米国は暴力と憎悪に対して強く立ち向かう旨発言した。
10月17日
*18日付ヒンドゥー紙は、ギラード豪首相が、国賓としてインドを訪問し、17日に首脳会談を行い、民生原子力協力協定交渉の開始、及びウランの対インド輸入について合意したことを報じている。また、オーストラリアにおけるインド人留学生への相次ぐ暴行事件については、既に過去の出来事となったとして、留学生の移動と福祉に関する覚書を締結した。
10月22日
*23日付インディアン・エキスプレス紙等は、駐インド英国大使が、グジャラート州を訪問し、モディ同州首相等と会見した旨報じている。インド報道は、同訪問は、10年にも亘る英国によるグジャラート州の「ボイコット」を公式に終結するものとの見方を報じている。

Ⅳ. 日印関係
10月22日
*22日付インド外務省発表によれば、22日に東京において、第2回次官級「2+2」対話が開催され、インドからマタイ外務次官及びシャルマ国防次官、日本から齋木外務審議官及び金澤防衛事務次官が出席し、それぞれの安全保障環境における自国の防衛・安全保障政策について説明を行った他、二国間の安全保障・防衛協力、海洋、サイバー、宇宙について議論を行った。22日付のヒンドゥスタン・タイムズ紙は、日本は同様の協議を米国、豪州との間で実施しているが、インドは日本との間でのみ次官級「2+2」対話を実施しており、両国の親密さの向上の現れであると報じている。マタイ次官の訪日中は、日印次官対話、日印外務次官級政務協議が開催された他、同次官による玄葉外務大臣への表敬が行われた。
10月29日
*30日付ヒンドゥー紙は、デリーにおいて、日・米・印の高官が、5時間に亘り海洋安全保障等について協議を行った旨報じている。第三回目となる今回の協議では、アフリカ、アフガニスタンにおける経済面での協力の他、戦略的な観点からアジア大洋州地域情勢についても協議が行われた。インド外務省のアクバルディン報道官の発言として、同協議では、東アジアサミットや、ASEAN等についても言及があったことが報じられている。

※編集の都合により、10月のニュースは9月25日以降からとなっております。