日印関係最新情報

月間インド・ニュース(2013年4月分)

2013年5月20日掲載


Ⅰ. 内政
4月4日
ヒンドゥスタン・タイムズ紙(HT)紙は、4日、インド西部ムンバイ郊外で建設中の7階建てビルが崩壊し、72人が死亡したと報じている。犠牲者は、ビルに住んでいた建設労働者が大半であり、崩壊したビル自体は、未認可で質の悪い材料を使用して建設されていた。地元当局者は「7階建てのビルは、わずか2~3ヵ月で建設され、建材も劣悪ではじめから倒壊する運命だった」と語っている。
4月4日
5日付ザ・ヒンドゥー紙は、モディ・グジャラート州首相が、初めて、自身のインド首相への意欲を覗かせたと報じた。これは、4日、実業家のグプタ氏の著書出版記念式典での演説で、モディ氏が、グプタ氏の「モディ氏はそろそろインドに対して恩返しするとき」という発言に対し、「誰しも国に恩返しする義務があり、その機会を利用すべき」と返したもの。
4月14日
15日付HT紙によれば、14日、ニティーシュ・クマール・ジャナタ・ダル(統一派)(JD(U))党首(ビハール州首相)は、同党全国大会において、次期首相候補と目されるモディ・グジャラート州首相の世俗性に疑問を呈しつつ、BJPに対して、年末までに排他的でなく世俗的な首相候補を選ぶよう求めた。
4月16日
17日付タイムズ・オブ・インディア紙は、現地調査会社が1月-3月に実施した次期総選挙に関する世論調査について報じている。世論調査の結果、コングレス党及び現連立政権(UPA)は、議席を大幅に減らす見込みである一方、これにより現野党連合(NDA)の議席数が増加することはないことが判明。社会主義党(SP)、全印草の根会議派(AITC)、全アンナ・ドラビダ進歩連盟(AIADMK)等の地域政党が議席数を大幅に増やし、これら政党及び大衆社会主義党(BSP)、ビジュ・ジャナタ・ダル(BJD)及び左派政党が政権樹立のためのキャンスティング・ボードを握るとする。
4月17日
18日付HT紙他は、17日午前、カルナタカ州バンガロ-ル市のBJP事務所近くの路上で爆発があり、警察官を含む16人が負傷した旨報じた。同州では、5月5日に州議会選挙を控えている。
4月19日
20日付HT紙は、デリーで5才の少女が、25才の隣人にレイプされ部屋に監禁されていた状態から、17日に救出されたと報じている。少女は、14日、家の近くで遊んでいたところを誘拐され、その後3日間にわたり、レイプと暴行を繰り返された。少女は、病院に搬送され、現在様態は安定している。

Ⅱ. 経済
4月1日
2日付HT紙他によれば、1日、インドの最高裁は、スイス製薬大手ノバルティスが開発した同社の抗がん剤「グリベック」の改良版の特許認定について、従来の薬剤を微調整した形では真に新しい製品ではないとして、特許を認めないとの判決を下した。今回の判決は、患者を益するのみならず、インド国内のジェネリック医薬品を奨励するものとなった。
4月3日
4日付HT紙他によれば、3日、シン首相は、インド産業連盟(CII)年次総会にてスピ-チ行った。各紙は、同スピーチについて、経常収支を含むマクロ経済安定化、インフラ整備、海外直接投資(FDI)誘致を推進するとした点を評価すると報じた。
4月8日
10日付HT紙は、日系企業がムンバイメトロ3号線に関心を示していると報じている。コラバ~バンドラ~シープズ間の建設は、予算や技術面でリスクのある事業だが、日系企業数社が全線地下による建設に関心を示す。ムンバイ都市開発公社(MMRDA)によると、川崎、三菱、日立等は、8日にMMRDAと協議し、関心表明を行い、MMRDAに対し、期限内に事業を完了できると述べた。
 JICAは総工費2,450億ルピーの同事業への資金提供を決定しており、日系企業が有力な事業候補となっている。MMRDAは多国籍企業のみを入札の対象とすることを検討している。
4月15日
16日付HT紙によれば、15日、インド政府は、3月の卸売物価指数が、過去3年間で最も低い5.96%にとどまったことを発表。これにより、来月のインド準備銀行・金融政策会合における利子率切り下げへの期待が高まる。
4月18日
18日、インド商工省は、2013年3月分及び2012年度(12年4月~13年3月)の貿易額(暫定値)を発表。19日付ヒンドゥー紙他は、2012年度の輸出額は前年度比でマイナスとなったが、過去3ヶ月連続の成長となり、明るい兆しが見えてきたと報じた。
4月18日
18日、インド商工省は、貿易政策に関する2013年度の追加政策を発表した。新たに経済特区(SEZ)の承認要件を緩和した他、資本財の輸入関税削減制度(EPCGスキーム)による関税率を3%から無税にした。19日付各紙によれば、産業界には、今次措置を歓迎する声がある一方、効果は限定的との批判もある。

Ⅲ. 外交
4月7日
7日付HT紙は、インド洋に進出する中国潜水艦の増加が、インドの安全保障上の利益に重大な危険をもたらすという内容の印国防省機密文書の存在が明らかとなった旨報じている。文書は、中国海軍の暗黙の活動が、重要なシーレーンを確保するための印海軍の優位性を損ねつつあると警告するとともに、二国間の緊張が今後3年間で高まると予測している。一方で、専門家は、中国の戦略は過大評価されており、インド洋でのインドの影響を弱めるに至らないだろうと見ている。
4月11日~
12日付ザ・ヒンドゥー紙他によれば、シン首相とメルケル独首相は、11日、ベルリンにて、印独合同閣僚級会合後の記者会見において、インドEU間のFTA締結に向けた交渉が進展したとの見解を示した。また、両国は、本件会合をとおし、高等教育分野の協力に関するMOU等、6つの政府間文書に署名した。
16日付ビジネス・スタンダード紙他によれば、15日、ブラッセルにて、インドEU・FTA交渉の閣僚級会合が開催されたが、双方はそれぞれの立場を守ったまま、妥結に至らなかった。自動車分野について、インド側は、自動車関税の引下げを求めるEUに対し、これ以上譲歩しない旨述べた。
4月15日、16日
15日付インディアン・エクスプレス紙他は、中国の李克強総理が最初の外国訪問先として、5月にインドを訪問する可能性があると報じている。二国間訪問は交互に実施するという外交慣例に従えば、2010年の温家宝首相(当時)の訪印から、次はインドの首相が訪中する順番であるが、中国側は、(首脳会談を)強く望んでいることから、この通常の慣例から逸脱することを計画している。
16日付HT紙は、中国の李首相が、シン首相の訪日の前にインドを訪問することを希望している旨報じている。情報筋によれば、5月の第3週に李首相がインドを訪問する可能性を示唆している。

中国軍によるインド・カシミール・ラダック地方における
          インド側への侵入

4月15日~30日
インディアン・エクスプレス紙等各紙は、15日にカシミール・ラダック地方で、中国軍が、実効支配線からインド側に進入したとされる事案に関し、以下のとおり報じている。
18日、マタイ外務次官が駐印中国大使を招致し、インド側の懸念を伝達した。
22日、中国外務省報道官は、定例記者会見において、中国軍は実効支配線を越えていないと主張。同日、クルシード外相は、記者団に対し、今回の事案が雪だるま式に悪化することを望んでおらず、印中双方は、均衡からのいかなる逸脱にも反対していると述べた。また、同日、アントニー国防大臣は、「我々は、国益を守るため、あらゆる対応をとっており、また、あらゆる措置を講じていく」と報道陣に述べた。
23日、インド側の要請に基づき、フラッグ・ミーティングを開催したが、解決には至らなかった。
27日、シン首相は、記者団に対し、インドは状況を際だたせることを望んでおらず、この問題の解決を信じていると述べた。シン首相の発言を受けて、28日に中国外務省は、声明を発出し、その中で、「シン首相の発言に留意し、印中双方が国境における会談や外交チャネル等を通じて連絡を取っている。中印の戦略的かつ協力的なパートナーシップの健全かつ安定した発展促進のため、我々は、相違の適切な処理と、国境地域での平和と平穏の維持に向け、インドと協力する用意ができている」と述べた。
30日、中国軍が、実効支配線のインド側19㎞のところに、5つ目となるテントを設置したことが判明。情報筋によれば、侵入地点における中国軍の数は約40名になるという。第3回フラッグ・ミーティングを開催したが解決に至らず。

Ⅳ. 日印関係
4月1日
日本外務省の発表によれば、1日、訪日したチダンバラム財務大臣は、安倍総理大臣を表敬。同財務大臣は、来るべきシン首相の訪日に向け、両国関係を更に発展させていきたいと述べ、より多くの日本企業のインド進出を希望し、日本の技術によるインドのインフラ開発に協力を求めた。安倍総理大臣は、金融規制緩和や税制面の改善の必要性や、デリー・ムンバイ間産業大動脈構想及び高速鉄道等について更に協力が進むことに対する期待を述べた。