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日印経済連携協定(EPA)に大筋合意

2010年9月10日掲載


 日本とインドの貿易、投資等を総合的により開放するための経済連携協定締結のための次官級交渉が、9月9日に、日本外務省において行われ、大筋で妥結した。交渉団長は、日本側小田部外務審議官、インド側クッラー商務次官であった。
 以下、外務省の公表資料をもとに、大筋合意の概要を紹介する。
               (文責:日印協会理事長 平林 博)

1.交渉の経緯
 この交渉の前段階として、2004年11月、日印両国政府が日印共同研究会の立ち上げに合意し、2006年4月まで4回の会合が持たれた。
 これを受けて、2006年12月のマンモハン・シン首相の訪日の際、正式交渉開始が決定された。以後、14回の正式会合と多くの中間会合が開催され、徐々に進展したが、後発医薬品の承認手続き問題などにつき立場の相違がなかなか埋まらず、交渉は当初のもくろみより遅れることになった。この間、アセアンや韓国はインドとのEPAを発効させ、日本に先んじることになった。我が国の経済界には、特にインドへの輸出品が競合するライバルである韓国に先を越されたことへの危機感が高まった。
 去る8月、岡田外務大臣が訪印した際、シン首相とも会談し、シン首相が来る10月下旬に日本を訪問する際までには交渉を妥結させることに合意した。
 今回の次官級交渉は、これを受けて行われたもので、ごく一部の問題につき継続審議するが、大筋では交渉は妥結した。

2.主な内容
(1)関税撤廃
 日印間の往復貿易額の約94%につき、協定発効後10年間で関税を撤廃する。
 このうち、日本はインドからの輸入の約97%(2006年財務省統計)、インドは日本からの輸入の約90%(2006-07年インド貿易統計)を、10年間で無税にすることになる。
 インドから日本への主な市場アクセス改善品目は、ほぼすべての鉱工業製品、ドリアン、スイート・コーン、カレー、紅茶、製材、エビ及びエビ調製品等である。コメや麦、牛肉などは除かれた。
 日本からインドへの主な市場アクセス改善品目は、鉱工業品では、エンジン関連部品やマフラーなどの自動車部品、各種鋼板などの鉄鋼製品、DVDプレーヤー、ビデオカメラなどの電機・電子製品、トラクター、ブルドーザーなどの産業機械である。農林水産品では、盆栽、長いも、もも、イチゴ、かき等である。
(2)原産地証明
 迂回貿易の防止のために、一般規則としてより厳格なルールを採用しつつ、日本の関心品目については、より貿易促進的なルールを採用する。
(3)サービス貿易
 両国とも、WTOにおける約束水準を超える約束を行う。インド側は、電気通信、金融等、日本側は実務、教育、環境等に関して市場アクセスおよび内国民待遇の約束をする。
(4)自然人の移動
 両国とも、短期商用訪問者、企業内転勤者、投資家及び専門家を含む自然人の移動に関し、WTOにおける約束水準を上回る約束を行う。また、入国、滞在要件及び手続きの透明性を向上させる。
(5)投資
 両国は、内国民待遇、投資設立後の最恵国待遇、パフォーマンス要求の禁止、国対投資家の紛争解決などの投資自由化・保護規定につき、高いレベルの規律を確保する。
(6)知的財産
 両国は、知的財産の十分にして効果的かつ無差別な保護を確保するとともに、権利取得にかかわる手続きの簡素化措置をとる。また、具体的な知的財産保護水準に関しては、WTO水準を超えることとする。
(7)協力
 両国は経済連携を強化するため、環境、貿易・投資促進、情報通信技術、エネルギー、観光等の分野で協力を促進する。
(8)ビジネス環境整備
 政府、民間部門その他の関係機関の参加を得て、両国の企業のためのビジネス環境の整備向上に資する仕組みを提供する。
(9)強制規格、任意規格及び適合性評価手続き、並びに衛生植物検疫措置
 小委員会において、情報交換等の協力を促進するための協議メカニズムを設置する。
 (インド側が強く主張していた)後発医薬品問題については、その承認審査について、国内法令の要求を満たす限りにおいては相手国の申請者に内国民待遇を与え、合理的な期間内に手続きを完了させることで合意した。

3.今後の見通し
 両国政府は、今後、この協定の署名に向けて、全ての章及び付属書につき、条文確定のための作業を継続する。正式の協定条文が固まるのには、日本では内閣法制局などの審査もあり、多少の時間がかかるであろう。この作業が10月下旬のマンモハン・シン首相の訪日に間に合うかどうか。協定本文が仮に間に合わなくても、シン首相訪日の際に何らかの形で両国政府の最高レベルで合意達成を確認する、協定本文とは言わずともたとえば何らかの文書に署名することは可能になったと考えられる。
 なお、この協定は、わが国の国会の承認(批准)を要するため、来年の通常国会に上程されることになると思われる。従って、来年の協定の発効は批准の後ということになる。