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平林理事長の論文ーわが国のTPP参加と農業強化策

2011年3月1日掲載


当協会の平林 博理事長は、(財)日本国際フォーラム副理事長として、自民党の週刊機関紙「自由民主」の要請で下記の提言を投稿し、3月1日付同紙に掲載された。TPPの締結とそれに伴う日本農業の改革の方向について提言したものである。菅内閣においては、菅直人総理等はTPPへの参加を標榜しているが、閣内及び党内において、これに対する消極論が出ている。


タイトル:TPP参加と農業強化策を両立させ国益を追求するのが政治

菅直人首相は、昨年以来TPPへの参加意欲を表明しているが、野党のみならず与党民主党からも反対論が出ており、前途多難だ。
TPP(環太平洋連携協定)は、2006年に発効したシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイ4カ国間の経済連携協定から始まったが、昨年3月以来、米国、豪州、ベトナム、マレーシア、ペルーを加えた広域的な連携協定を目指す交渉が始まった。環太平洋の他の諸国も、参加の可能性を探っている。協定は、市場アクセス(農業を含む)、原産地規則、貿易の円滑化、セーフガード、政府調達、知的財産権保護、競争政策、各種サービス(一時入国を含む)、投資、環境、紛争解決など24の項目に及ぶ。要するに、参加国は、広範な開国を目指す。
メリットは、わが国の強みである物・サービス・技術輸出の拡大、技術や知的所有権の保護、資源・食糧の安定供給など多岐にわたる。工業製品ばかりではない。コメを含むわが国の農産物も、品質、安全、デリバリーの正確性など国際的に評価されており、益々豊かになるアジア近隣国や日本食ブームの米欧への輸出機会は大きくなる。政府は、原発や新幹線と同様、農産物の輸出について今以上に力を注ぐべきだ。日本人の英知、産業・技術力、チャレンジ精神や逆境での強さなどはどの国民にも引けを取らず、TTP参加で最大限発揮されよう。逆に参加しない場合には、参加国へのアクセスで大きな不利益を蒙る。
他方、農業は国内総生産の約1.5%を占めるにすぎないが、コメを中心に食糧安全保障、農山村の景観や農業に由来する各種無形文化遺産の保存、保水の必要性など、農業の多面的機能を守る必要がある。
これまでの政策は兼業農家・零細農家を含めて無差別に保護するという政策であり、改革・強化に向けてインセンティブを与えるものではなかった。国境措置(高関税や輸入割当)による価格支持という考え方に基づく受身の対応であった。TPPの参加を機に農地の集約と大規模化を進めよう。経営マインドを持ったプロの農家を育成しよう。これによって、生産増→価格低下→国際競争力強化→輸出機会の増大という好循環が生まれる。兼業ないし零細農家は、専業農家に自己の農地を売るか、リースできるようにしよう。TPPへの参加によって商工業の成長が加速されば、兼業からの所得も伸びる。国境措置は、所得補償に代える。これは特に、景観保護、保水等の理由によって守るべき農山村には必要だ。
過去において、市場開放をすると当該産物は壊滅的な打撃を受けるとの論理で、抵抗がされてきた。しかし、かんきつ類、さくらんぼ、リンゴ、牛肉などいずれも壊滅どころか、栽培者の創意工夫により種類も品質もさらに改善され、輸入品と共存している。コメや果物や和牛は、中国などで大いにもてはやされている。
政治は特定の政策の犠牲者を救う必要はあるが、まずは大局的に見た国益を推進するのが本旨だ。狭い視野で「木」のみを見るのではなく、日本経済と言う大きな「森」の中の農業という見地から見るべきだ。フランクリン・ルーズベルト大統領は、1929年の大恐慌に直面した米国民に対し、「恐れるべきは、恐れそのものだけである」と激励して経済を立て直した。わが国の政治家や農業関係者に対して同じ言葉を贈りたい。