日印関係最新情報

月間インドニュース(2016年9月分)

2016年10月14日掲載


1.内政
【カシミール情勢】
9月4日
 ラージナート・シン内相率いる各党からの議員代表団は、カシミール情勢について協議するため、同地を訪問した。代表団は、自宅拘留中の分離主義者サイード・アリ・シャー・ギラーニとも面会を希望したが、同氏から拒否された。
9月7日
 カシミールを訪問した議員団は、デリーで全党会議を開催し、中央及び州政府がカシミールの全ての関係者とダイアローグを開始することを求める声明を発出した。
【連邦議会・州議会同時選挙】
9月5日
 ムカジー大統領は、教師の日(Teachers' Day)の演説で、聴講者から連邦議会選挙と州議会選挙の同時実施について問われ、選挙が頻繁に実施されると政府の仕事が滞るので、基本的に同時実施に賛成している旨返答した。
【アンドラ・プラデシュ(AP)州に対する「特別な地位」の付与】
9月7日
 中央政府は、AP州に対し、今後5年間にわたり、「特別な地位(Special Category Status)」を有する州と同程度の資金援助を行うことを発表。この発表を受けて、AP州に対する「特別な地位」の付与を求めていたYSRコングレスやコングレス党は、州政権与党テルグ・デサム党(TDP)とBJPの裏切りであると批判した。

メモ:「特別な地位」は、山岳地の州や国境沿いの戦略的に重要な州,経済的後進州等に対して付与され、連邦政府から財政面等で他州以上の支援が得られる。AP州は、2014年にテランガナ州が分離独立したことに伴い、経済的に不利な状況にあるとして「特別な地位」を求めていた。

【カルナタカ州/タミル・ナド(TN)州】
9月12日
 最高裁は、カルナタカ州政府から、TN州に対するコーベリー川の水の供給を1日15000キューセック(立方メートル毎秒)供給するという5日の判決を再検討するよう要請されたことを受けて、代わりに12000キューセック/日を20日までTN州に供給するよう命令。この判決を受け、カルナタカ州ではベンガルール市内を中心に騒乱が発生し、死傷者がでたことから、カルナタカ州政府は同市内16カ所に外出禁止令を発出した。
【パリ協定】
9月28日
 モディ内閣は閣議を開催し、パリ協定をガンディーの生誕記念日である10月2日に批准することを決定した。同協定の批准は、モディ首相が25日の演説で発表していた。

2.経済
【RBI総裁の任命】
9月4日
 ウルジット・パテル氏は、2016年9月4日から3年間の期間を任期として、インド準備銀行(RBI)の新総裁に任命された。パテル氏は、ラグラム・ラジャン現総裁の後任となる。
【インド予算制度の改革】
9月21日
 インドの予算制度の改革が閣議で承認されたところ、改革の概要は次のとおり(財務省発出プレスリリースより)。
(1)インドでは、1924年以降、慣習として鉄道予算が一般予算とは別に発表されてきたが、下記の取極めの下、両者は統合される。
ア インド鉄道は、引き続き、政府運営ながら商業性を持った、個別の組織であり続ける。
イ 鉄道は、既存の規則に従い、機能の独立性及び財政に関し付与された権限を維持する。
ウ 鉄道は、給与や手当等の経常支出については(鉄道事業の)経常収入で賄うという既存の取極めを継続する。
エ これまで、鉄道省は約970億ルピーの年間配当を中央政府に対し支払ってきたが、今後この配当はなくなる。他方、鉄道省は予算支援(Gross Budgetary Support)を得る。
(2)毎年、予算案の発表は2月最終日に行われてきたが、これを1カ月早める。これにより、予算関連の議会手続きを3月末までに終え、各省は年度当初から施策を執行することができるようになる。また、税制改正についても年度当初から実施することができるようになる。但し、来年度予算案の発表日については、州選挙の日程等を踏まえ今後決定される。
(3)予算における計画支出・非計画支出の区別をなくす。但し、指定カースト等への資金の紐付け(earmarking)及び北東部州への配分は継続する。
【2016年度第1四半期の国際収支】
9月21日
 インド準備銀行(RBI)は、2016年度第1四半期(2016年4~6月)の国際収支を発表したところ,概要以下のとおり。
(1)経常収支
 第1四半期の経常収支赤字(CAD)は▲3億ドル、対GDP比0.1%となり、前四半期の▲3億ドル(同0.1%)に比してわずかに、また前年度同期の▲61億ドル(対GDP比1.2%)に比して大幅に低下している。
(2)貿易収支
 経常収支赤字の縮小は、主に貿易赤字が▲238億ドルとなり前年度同期の▲342億ドル及び前四半期の▲248億ドルから縮小したことに起因する。
(3)輸出入
 輸出(▲2.1%)に比べ、輸入が急激に低下(▲11.5%)した結果、第1四半期の貿易赤字は縮小することとなった。
(4)サービス収支
 サービス収支は、旅行業・金融サービス等からの収入低下により年度ベースで落ち込んだ。
(5)民間移転受入(Private transfer receipts)
 在外インド人からの送金などによる民間移転受入は152億ドルとなり、前四半期及び前年度同期と比して減少した。
(6)海外直接投資(FDI)
 FDIは41億ドルとなり、前年度同期(100億ドル)及び前四半期(88億ドル)より落ち込んだ。
(7)証券投資
 一方、証券投資は、前四半期が15億ドルの資金流出であったのに対し、21億ドルの資金流入を記録した。これは主に株式への資金流入を反映したもの。
(8)外貨準備高
 外貨準備高については、前年度同期の増加額114億ドル、前四半期の増加額33億ドルに比して、第1四半期は70億ドルの増加額となった。

3.外交
【インド・ベトナム関係】
9月2日
 モディ首相はベトナムを訪問し、グエン・スアン・フック首相と首脳会談を行った。印越関係を包括的戦略パートナーシップに格上げすることが合意された他、12の合意が署名された。モディ首相は、チャン・ダイ・クアン国家主席、グエン・フー・チョン共産党書記長、グエン・テイ・キム・ガン国会議長を表敬した。3日、ハノイにおいて、モディ首相とグエン・スアン・フック首相の間で首脳会談が行われ、印越関係を包括的戦略パートナーシップに格上げすることが合意された。
【インド・エジプト関係】
9月1日-3日
 エルシーシ・エジプト大統領が訪印し、ムカジー大統領、アンサリ副大統領、モディ首相、スワラージ外相と会談した。印エジプト共同声明が発表された。
【インド・イタリア・バチカン関係】
9月2日-5日
 スワラージ外相は、マザー・テレサの列聖式に参加するためバチカンを訪問し、フランシス教皇に拝謁した。また、ローマにおいてジェンティローニ伊外相と会談した。
【インドのマルチ外交】
9月3日-5日
 モディ首相は、G20首脳会合出席のため、杭州を訪問した。モディ首相は、習近平中国国家主席、メイ英首相、ムハンマド・ビン・サルマン・サウディアラビア副皇太子と会談した。また、BRICS首脳会合が実施された。
9月7日
 モディ首相は、第11回東アジア首脳会議(EAS)及び第14回印ASEAN首脳会合(ビエンチャン)の機会に,トンルン・ラオス首相、安倍総理、朴槿恵韓国大統領と会談した。
9月8日
 モディ首相は、ビエンチャンで開催された大11回EAS及び第14回印ASEAN首脳会合に出席した。また、サイドラインでオバマ米大統領及びアウン・サン・スー・チー・ミャンマー国家最高顧問兼外相と会談した。
9月16-18日
 アンサリ副大統領は、第17回非同盟諸国(NAM)首脳会合出席のためベネズエラを訪問した。同副大統領はベネズエラ訪問中、マドゥーロ・ベネズエラ大統領、ローハニ・イラン大統領、カストロ・キューバ国家評議会議長、プン・ネパール副大統領等と会談した。
9月28日
 インド外務省は、インドが11月9日~10日にパキスタン・イスラマバードで開催予定の南アジア地域協力連合(SAARC)首脳会合に出席しない旨の報道官声明をHPに掲載した。
【インド・北朝鮮関係】
9月9日
 印外務省は、同日の北朝鮮による核実験を遺憾とし、北朝鮮に対し地域及び地域を越えた平和と安定に悪影響を及ぼす行動を控えるよう求める声明を発表。

【インド・アフガニスタン関係】
9月14日
 ガーニ・アフガニスタン大統領が訪印し、ムカジー大統領及びモディ首相と会談した。印アフガニスタン共同声明が発表された。
【インド・ロシア関係】
9月13日
 デリーにおいて、第22回印露政府間委員会が開催された。印側はスワラージ外相が、露側はロゴジン副首相が代表を務めた。
【インド・国連】
9月26日
 スワラージ外相は、第71回国連総会において一般討論演説を行った。
4.日印関係
【日印友好議員連盟のインド訪問】
9月23日
 細田博之会長を団長とする超党派の日印友好議員連盟が約3年ぶりにインドを訪問し,モディ首相と会談した他,デリーメトロや日系企業の視察などを行った。


今月の注目点: カシミールをめぐる印パキスタン関係の悪化
カシミールをめぐり印パキスタン間で緊張が高まっている。7月8日,ジャンム・カシミール(JK)州のイスラム過激派ヒズブル・ムジャヒディンの若き指導者バーハン・ワニがインド治安部隊に殺害される事案が発生してから雲行きが悪化。同州住民一部が暴徒化し,治安部隊との衝突により,80名以上の犠牲者が発生したと言われている。その後,パキスタンは,印治安部隊の住民に対する過剰な措置を非難する外交活動を展開した。
9月18日,同州ウリ地区において,印陸軍基地が武装テロ集団4名により襲撃され,インド兵士17名以上が死亡,約30名が負傷する事件が発生。モディ首相は事件直後「この卑劣な攻撃の背後にいる国が,罰を逃れることはない点を保証する」との声明を発出し,暗にパキスタンを非難。9月28日,印外務省報道官は「現在の状況では,インド政府はイスラマバードにおけるSAARC首脳会合に参加することはできない」とSAARCをボイコットする意思を発表した。
9月29日,インド陸軍作戦部長は,28日(水)夜に,パキスタン支配下のカシミールにおけるテロリスト施設への攻撃を実施した旨を記者会見にて発表。インド側説明では,9月18日のウリ地区等に対するテロリストの攻撃の後、インド陸軍は、20回に及ぶ侵入事案を阻止。これらのテロリストによる攻撃及び侵入事案において、インドはGPS及びパキスタンのマークの入った物品を回収。捕らえたテロリストはパキスタン又はPOKに関連があり、パキスタン又はPOKで訓練を受けたと白状した旨を述べた上で,パキスタンはジャンム・カシミール州における侵入事案が増加していることに関与していると考えていると述べた。また,何人かのテロリストが管理ライン沿いの攻撃拠点(launch pads)にて,ジャンム・カシミール州でのテロ攻撃のための攻撃準備を整えたとの、昨日同作戦部長が入手した非常に明確かつ信頼できる(very specific and credible)情報を踏まえ、インド陸軍はこれら攻撃拠点に攻撃(surgical strikes)を実施したと述べた。 
インド軍による攻撃に対してパキスタンは激しく反発しており,パキスタンからインドへの物理的な反応が心配されるところであり,今後の事態を注視する必要あり。いずれにせよ,印パキスタンの関係悪化は,インドとパキスタン在住の邦人・日系企業の安全にも多大なる影響を与えるだけでなく,地域の不安定化にもつながることから,両国の外交努力と自制が求められる。