
1.内政
【連邦政府・連邦議会】
11月17日
17日、米格付け会社ムーディーズがインドの格付けをBaa2に格上げしたことに関し、ジャイトリー財務相は、最近2、3年間で実施された構造改革が特に評価されたとして、13年ぶりの格上げを歓迎すると述べた。これを受け、コングレス党は、モディ政権は経済を破壊したことで失った信用を取り戻すために、格付けのような藁にもすがっているのだと批判した。
11月24日
冬期国会の会期(12月15日-1月5日)が発表された。
11月30日
第2四半期のGDP成長率が6.3%と発表された。第1四半期の5.7%から回復したことを受け、ジャイトリー財務相は、旧高額紙幣廃止及びGST導入の影響が収束しているとも見られ、第3四半期以降の成長率は更に上昇軌道に乗るのではないかと述べた。
【コングレス党】
11月17日
コングレス党は、12月16日投票、19日開票とする党総裁選挙日程を発表した。ラフール・ガンディー副総裁が唯一の候補者となる可能性が高く、この場合、立候補取り下げ期限である11日までに無投票で総裁が決定することとなる。
【ビハール州】
11月27日
ジャナタ・ダル統一派(JDU)のシャラド・ヤーダヴ派は、コングレス党と選挙協力を行っているグジャラート州議会選挙の完了後に、新党を立ち上げると述べた。
2.経済
【国営銀行合併・再編に向けた省庁間会合の新設】
11月1日
インド財務省は国営銀行合併・再編に向けた省庁間会合(Alternative Mechanism)の新設に係る政府承認についてプレスリリースを公表した。新機構はジャイトリー財務兼企業大臣を議長とし、ゴヤル鉄道兼石炭大臣、シタラマン国防大臣を構成員とする。合併スキーム策定の原則承認を受けるための銀行からの提案は新機構に付され、承認を受けた提案について3か月毎に内閣に報告される。新機構は合併に係る提案について審査を行うため、銀行に指示を与えることができ、また、新機構は原則承認の前にインド準備銀行(RBI)から情報提供を受けることがある。新機構は合併提案の審査のため独自の手続きを行うことができ、全体として銀行国有化法(Nationalization Act)の目的に沿って運営される。策定された合併に係る最終案は中央政府により承認され、国会に付される。新機構の事務局は金融サービス局が務める。
【タミルナド州シングル・ウィンドウ・ポータルサイトの設立】
11月2日
タミルナド(TN)州において、投資環境改善のためのシングル・ウィンドウ・ポータルサイトが立ち上がった。同サイトは、オンライン上でTN州政府内11省庁部局にかかる投資に関する37のサービスを一元化したシステムで、オンライン上で操業許可、環境アセスメント等にかかる許認可申請や更新、手数料の支払いが可能となる。投資手続きが迅速化され、許認可取得までの所要時間や作業量の削減と効率化を図る。今後、TN州はシングル・ウィンドウ・モニタリング委員会や投資促進モニタリング委員会の設立も計画しており、更なる投資環境改善策による投資促進が期待されている。
【ワールド・フード・インディア】
11月3-5日
ニューデリーにてワールド・フード・インディア2017が開催され、日本はパートナーカントリーとして参加し、谷合農林水産副大臣が出席したほか、約60の日本企業が出展した。モディ首相及びバダル食品加工大臣は、日本企業が出展するジャパン・パビリオンを視察し、谷合農林水産副大臣と面会した。また、谷合農林水産副大臣及び平松大使出席の下、ジャパン・セッションが開かれ、日本企業によるプレゼンテーションが行われた。閉会式では、次回ワールド・フード・インディアは2019年に開催されることが発表された。
【物品・サービス税(GST)】
11月10日
GST委員会の第23回会合が開催され、213品目の物品のGST税率引下げ、申告手続の緩和及び簡易課税制度の改正、サービスに係るGST税率の変更等の決定がされた。また、2017年7月期、8月期及び9月期について期限内に申告できない納税者が多かったため、これらのケースについて遅延料を免除する等、一部申告手続等が緩和された。
【格付会社ムーディーズによるインド国債の格上げ】
11月16日
大手格付会社ムーディーズ(Moody's)は、インド政府の自国通貨建て及び外国通貨建て長期債券発行体格付けを「Baa3」から「Baa2」に引き上げた。
【アンドラプラデシュ州とトヨタキルロスカの電気自動車導入に係る覚書締結】
11月16日
トヨタ・キルロスカ・モーターとアンドラプラデシュ(AP)州は、AP州内への電気自動車(EV)導入にかかるフィージビリティ調査の実施に関し、覚書に署名した。同覚書は、AP州が現在開発中の新州都アマラーヴァティーのスマートシティ構想の一環として、アマラーヴァティーにおけるEV導入の実現の可能性を探るもので、EV導入に関し民間企業と州政府が作成する覚書としてはインド初となる。
【コルカタ・バングラデシュ間自動車運搬船の就航】
11月23日
コルカタのネタジ・スバス船渠からバングラデシュのモングラ港に向け、240台のトラック及びミニバン等の車両を搭載した自動車運搬船(RORO)船が出港した。タタ自動車が同船による託送を契約しており、月4回程度の輸送を計画している。同社の自動車総輸出台数は年間約6万台、その内、バングラデシュへの輸出は2万2千台とされている。バングラデシュの自動車需要は1か月あたり3千~3千5百台程度で、その内約2千台をペトラポール経由での陸上輸送とし、残りの約1千台を同船にて海上輸送する予定。
【グローバル・アントレプナーシップ・サミットの開催】
11月28日
グローバル・アントレプナーシップ・サミット(GES)2017がハイデラバードで開催され、モディ首相が出席したほか、トランプ米大統領の娘であるイヴァンカ・トランプ米大統領顧問も出席した。本年のGESのテーマは「女性を第一に、全ての者に繁栄を(Women First, Prosperity for All)」とされた。
【2017年度第2四半期のGDP成長率】
11月30日
インド政府統計・計画実施省(MOSPI)傘下の中央統計局(CSO)は、2017年度第2四半期(7月~9月)のGDP成長率を発表、今四半期の実質GDP成長率は6.3%(前年同期比)となり、前期の5.7%(注:約3年ぶりの低水準)から持ち直す格好となった。今回経済成長率が回復した要因としては、①工業部門、特に製造業において、GST導入後の企業における在庫圧縮の反動が見られたこと、②民間セクターによる設備投資が加速したこと等が指摘されている。
3.外交
【印シンガポール関係】
10月31日-11月1日
シンガポール外相が訪印し、31日、共同閣僚級委員会の枠組みでスワラージ外相と会談し、今後のハイレベル交流、ASEAN50周年及び印ASEAN対話開始25周年行事、政治・防衛・安保分野での協力、貿易・投資、観光・文化協力、連結性、国連・国際機関での協力等について話し合われた。1日、アッサム州グワハティを訪問し、ソノワール州首相と会談した。シンガポールの支援を受けて設立される技能開発センターに関するMOUが署名された。
【印ブータン関係】
10月31日-11月3日
ブータン国王王妃両陛下が訪印した。大統領、副大統領、首相、外相、その他閣僚と会談した。
【印英関係】
11月8日-11月9日
英皇太子殿下が訪印し、モディ首相と会談した。来年4月に英国で開催されるコモンウェルズ首脳会合、気候変動、持続可能な開発目標、経済協力等が話し合われた。皇太子殿下はインドの他、シンガポール、マレーシア、ブルネイを訪問。
【印フィリピン関係】
11月12日-11月14日
モディ首相はフィリピンを訪問し、マニラで行われた第15回印ASEAN首脳会議及び第12回東アジア首脳会議等に出席したほか、日米豪印局長協議が行われた。フィリピンを訪問中、モディ首相は、安倍総理、トランプ米大統領、フィリピン大統領、豪首相、ベトナム首相、ブルネイ国王、ニュージーランド首相と会談したほか、マニラでインド人コミュニティに対してスピーチを行った。
【印仏関係】
11月17日-11月19日
ル・ドリアン仏欧州・外務大臣が訪印し、スワラージ外相と代表団レベル協議を行った後、プレス・ステートメントが発出されたほか、モディ首相を表敬した
【印スリランカ関係】
11月21日-11月24日
ウィクラマシンハ・スリランカ首相が訪印し、ニューデリーで開催された第5回サイバー空間に関する国際会議2017(GCCS 2017)の開会式に出席したほか、モディ首相と会談及びコヴィンド大統領を表敬した。またスワラージ外相から表敬を受けた。
【印米関係】
11月28日-11月29日
28日-29日、イヴァンカ米大統領補佐官が訪印し、世界起業サミットに参加したほか、そのサイドラインでモディ首相の表敬及びスワラージ外相と会談を行った。
【印露関係】
11月29日-12月1日
スワラージ外相がSCO(上海協力機構)首脳会議出席のためソチを訪問した。
4.日印関係
【第5回日印テロ対策協議】
11月7日
東京において第5回日印テロ対策協議が開催された。日本側からは山本栄二外務省国際テロ対策・組織犯罪対策協力担当大使が、インド側からはラヴィ・タパール外務次官補(H.E. Mr.Ravi Thapar, Additional Secretary (Counter-Terrorism), Ministry of External Affairs)が、それぞれ代表を務めた。また、両国のテロ対策関係省庁からも関係者が参加した。今回の協議では、地域テロ情勢や両国のテロ対策措置、また、国際的なテロ対策協力について意見交換が行われた。
(メモ)日印テロ対策協議(2005年4月の日印首脳会談において開催が決定)
これまでの開催状況:
2005年7月 第1回協議(於:東京)
2007年12月 第2回協議(於:デリー)
2012年11月 第3回協議(於:東京)
2015年11月 第4回協議(於:デリー)
【日米豪印のインド太平洋に関する協議】
11月12日
フィリピンのマニラにおいて、日本、オーストラリア、インド及び米国の外交当局は、インド太平洋地域における法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の確保に向けた取組につき、議論を行った。協議では、インド太平洋地域におけるルールに基づく秩序・国際法の尊重の堅持、圧力を最大化させることが必要な北朝鮮による核・ミサイル問題を含む拡散の脅威への対応、インド太平洋地域における航行の自由及び海洋安全保障の確保、テロ対策等に関する協力の方向性につき、域内各国との協力を含め、議論が行われた。参加者は、議論を継続するとともに、共通の価値と原則に基づく協力を深化させていくことを確認した。
【第11回日印首脳会談】
11月14日
ASEAN関連首脳会議出席のためにフィリピン・マニラ訪問中の安倍総理は、モディ・インド首相との間で会談(両首脳間で11回目)を行った。
【インド高速鉄道に関する第6回合同委員会の開催】
11月22日
インドのニューデリーにおいて、インド高速鉄道に関する第6回合同委員会が開催された。この会合には、和泉洋人内閣総理大臣補佐官(日本側の共同議長)を団長として、関係部局(外務省、財務省、経済産業省、国土交通省、JICA等)の幹部が参加し、インド側からは、ラジブ・クマール行政委員会副委員長(Mr. Rajiv Kumar, Vice-Chairman, NITI(National Institution for Transforming India)Aayog(Committee)) (インド側の共同議長)を団長として、鉄道省、外務省、商工省等の関係各省及びインド高速鉄道公社の幹部が参加した。この会合では、インド高速鉄道事業の進捗や今後の工程を確認するとともに、メイク・イン・インディア(現地生産)の推進や駅周辺の交通基盤の整備について議論を行った。
【堀井学外務大臣政務官のサイバー空間に関するニューデリー会議出席】
11月23日-24日
堀井学外務大臣政務官は、ニューデリーにおいて行われた「サイバー空間に関するニューデリー会議」(Global Conference on Cyber Space (GCCS) 2017)に出席した。堀井学政務官は、この会合の機会を利用して、スワラージ・インド外務大臣(Mrs. Sushma Swaraj, External Affairs Minister)と会議場で立ち話を行うとともに、アクバル・インド外務担当閣外大臣(Mr. M.J. Akbar, Minister of State, Ministry of External Affairs)と会談し、本年9月の安倍総理大臣インド訪問をフォローアップする観点から、日・インド関係や地域情勢につき幅広く意見交換を行った。
【JENESYS 2017によるインド人大学生・大学院生・社会人の訪日】
11月28日-12月5日
JENESYS 2017の一環として、インドの大学生・大学院生・社会人19名が訪日した。一行は、「日本語コミュニケーション・日本文化交流」をテーマに、最先端技術から歴史的建造物まで幅広く視察した。また、地方訪問(奈良県)、日本文化体験や地域住民との交流などを通して日本についての理解を深めた。このプログラムを通じて、インドの将来を担う若者が、我が国の強みや日本的な価値を理解し、一人一人が日本の魅力について、積極的に発信することが期待される。
(メモ) JENESYS 2017
日本とアジア大洋州の各国・地域との間で、対外発信力を有し将来を担う人材を招へい・派遣し、政治、経済、社会、文化、歴史、外交政策等に関する対日理解の促進を図るとともに、親日派・知日派を発掘し、日本の外交姿勢や魅力等について被招へい者・被派遣者自ら積極的に発信してもらうことで対外発信を強化し、我が国の外交基盤を拡充することを目的としている。
今月の注目点: 第11回日印首脳会談
11月14日、約40分間にわたり、ASEAN関連首脳会議出席のためにフィリピン・マニラ訪問中の安倍総理は、モディ首相との間で会談(両首脳間で11回目)を行った。概要は以下のとおり。
安倍総理より、9月のインド訪問時の盛大な歓迎に対する謝意を伝え、モディ首相と共に、日印関係の潜在力を全面的に開花させ、法の支配に基づいて自由で開かれたインド太平洋を実現し、「日印新時代」にふさわしい関係に発展させたい旨述べた。また、安倍総理から、沖縄南方での貨物船沈没により、行方不明となっているインド人乗組員に対するお見舞いを述べた。
これに対し、モディ首相より、総理のお見舞いに対するお礼を述べるとともに、9月の地元グジャラート州訪問に謝意を表しつつ、総理の訪問はインド国民の心に残る歴史的な訪問となった、引き続き、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて連携していきたい旨述べた。
両首脳は、9月の安倍総理インド訪問の成果を踏まえ、高速鉄道、US-2、連結性、人的交流、さらに地域情勢について率直な意見交換を行った。
安倍総理から、モディ首相と共に9月の高速鉄道起工式典に立ち会えたことは大変喜ばしい、高速鉄道の開業に向けて、引き続きよく連携していきたいと述べたのに対し、モディ首相より、本件事業の成功は非常に重要であり、早期の開業に向けてあらゆる努力をしたい旨述べた。
安倍総理から、US-2に係る協力について早期の具体的進展を期待する旨述べ、両国間で議論を続けていくことで一致した。
安倍総理から、質の高いインフラ整備を含む連結性強化のための日印協力を一層具体化したい旨述べ、両首相は具体化に向け引き続き協力することで一致した。
安倍総理から、人的交流の拡大に向け、インド国民に対する更なるビザ緩和措置を明年1月1日から開始する旨述べたのに対し、モディ首相より日本の取組への謝意が表明された。
安倍総理から、北朝鮮は核・ミサイルの開発を継続しており、9月の日印共同声明を踏まえ、圧力を最大限まで高め、北朝鮮が非核化を前提とした対話のテーブルにつかざるを得ない状況に追い込むべき、中国が更なる役割を果たすことが重要、拉致問題は最重要課題であり、早期解決に向けた理解と協力を期待する旨述べた。モディ首相より、北朝鮮は地域の脅威であり、国連安保理決議の履行が必要である旨述べ、両国は緊密に連携していくことで一致した。