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日印関係最新情報

月間インドニュース(2018年8月)

2018年9月21日掲載


1. 内政
【パジパイ元首相の死去】8月15日
全インド医科大学(AIIMS)は、入院中のバジパイ元首相の容態が重篤であり、生命維持装置が使用されていると発表した。モディ首相、複数の閣僚等が見舞いに訪れた。16日、同元首相の死去が発表された。バジパイ元首相の国葬は、17日、ニューデリー市内国立記念場(Rashtriya Smirti Sthal)にて行われた。
【マハーラーシュトラ州】
8月10日:MKMは、部外者が彼らの抗議活動に便乗して暴動を起こしているとして、今後路上での抗議活動を行わないと発表。
8月14日:警察当局は、一番被害の大きかったと言われる8月9日のオーランガバード県ワルジ工業地帯の暴動に関与したとして、CCTVによる捜査で拘留された53名全員がMKMとの直接の関係がなかった旨、発表。
8月14日:別のマラーター団体Sambhaji Brigadeは、MH州首相によるマラーター留保枠付与に向けた具体的な立法議会特別審議の日程を発表していない、約束したとおりに抗議者にかけられた訴状を取り下げていないとして、9月1日より抗議活動を再度実施する旨、発表。
【アッサム州】8月1日
リジジュ内務担当閣外相は、政府には偽の国民や不法移民ではなく真のインド国民の利益を守る責任があると述べたほか、NRCが内戦を引き起こすとの発言をしたママータ・バナジー・ウエストベンガル(WB)州首相を強く批判した。
【コングレス党】8月21日-25日
●ラーフル・ガンディー・コングレス党総裁は独・英を訪問し政府要人と面会した他、講演会を行った。25日、同総裁は、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスにおける意見交換会及びラマダホテルで行われたインド・ジャーナリスト協会における講演の中で、インドの司法、選挙管理委員会、インド準備銀行がモディ政権により苦しめられている、モディ首相はインドが独立後2014年まで発展しなかったとしてインド国民を侮辱している、と述べた。また、モディ政権によるドクラム対峙(注:ブータン領ドクラム地区への中国軍の侵入とインド軍による対抗措置)における対応を批判した。
●厳重な警備の中1500人以上が参加したラマダホテルでのイベントに、カリスタン政治グループ(注:カリスタン独立運動は、パンジャブ州のインドからの独立を主張するもの。)の4名が侵入し、「カリスタン万歳」と叫び現地警察により退出させられた。4名は、メディアに対し、1984年に2800人のシク教徒が殺害された暴動にコングレス党が関与していないとする同総裁の前日の発言に対し抗議運動を行ったと述べた。

2. 経済
【ITハブ起工式】8月13日
コルカタ市内北部の計画都市ニュータウンに位置するシリコンバレーにて東部インド最大(100エーカー)のITハブの起工式が行われた。壇上には、州政府(バナジー州首相、ミトラ商工相、バスIT電子相・技能教育訓練技能開発相、センIT電子首席次官等)、及び同地に出資する主要企業が並び、産業界、州内にあるIT集積地進出済の起業家、工科大学、IT系の学生、領事団等約500人が参加した。
【グジャラート州経済】8月23日
タイムズ・オブ・インディア紙は、グジャラート(GJ)州への今後2年間の投資が1兆印ルピーに上る見込みである旨報じているところ、概要以下のとおり。
(1)GJ州政府工業資源省の公式な記録によると、GJ州ではGJ州産業ポリシーの下、35件以上の大型投資(big-ticket projects)の手続き承認・奨励金のための申請がなされており、今後2年間で1兆印ルピーの投資を受け取る予定である。また、約束されている露Rosneft社からの8450億印ルピーと台湾CPC Corporationからの4160億印ルピーの2件の高額投資をこれに含めると、GJ州への今後2年の投資総額は2兆印ルピーを超える模様。
(2)日本、中国、台湾、韓国や少数の欧州の会社による投資計画が計2622億印ルピー分あり、このうち、中国の会社からの投資が1810億印ルピーである。日本企業からは、スズキ・東芝・デンソーによるリチウム・イオン製造電池工場の115億印ルピー、豊田通商の120億印ルピー及び三菱電機自動車機器の30億印ルピーの投資計画がある。
(3)主に鉄鋼、自動車、科学、石油化学、セメント及び繊維分野での投資が進んでおり、外国企業は鉄鋼、自動車付属品及び石油化学分野、インド企業は化学、石油化学、繊維分野への関心が高い。
(4)ルパニGJ州首相・工業資源省付マノージ・ダス(Manoj Das)首席秘書官は「高速鉄道、高速道路、ドレラ特別投資地域、マンダル・ベチャラジ特別投資地域、デリー・ムンバイ産業大動脈(DMIC)、デリー・ムンバイ貨物専用線建設計画(DFC)事業が実施され、大型投資を惹きつけていることから、2022年までの大きな投資増大を見込んでいる。」と述べた。

3. 外交
【印中関係】8月21日-24日
魏鳳和(WEI Fenghe)中国国務委員兼国防部長(上将)が訪印し、モディ首相を表敬したほか、シタラマン国防相と会談した。シタラマン印国防相と訪印中の魏鳳和・国務委員兼国防部長は、中印国境に関する現在の信頼醸成措置(CBM)の完全なる履行に向けた取組及び二国間の軍事交流の強化に合意した。
【印モーリシャス関係】8月18日-20日
第11回世界ヒンディー語会議に出席するためにスワラージ外相はモーリシャスを訪問し、ジャグナット・モーリシャス首相を表敬したほか、同会議のサイドラインでドゥヴァル野党代表、ラングーラム元首相、ポール・ベレンジェ元首相と会談した。また、スワラージ外相は、VKシン外務担当閣外相と共に、マハトマ・ガンディー研究所(Mahatma Gandhi Institute)でガンディー像に献花を行った。
【印ベトナム関係】8月27日-28日
スワラージ外相が訪越し、フック越首相を表敬したほか、ファム・ビン・ミン副首相兼外務大臣とともに代表団協議を実施、第16回共同委員会会議で共同議長を務め、それぞれプレスステートメントの発出、MOUの署名がなされた。また、スワラージ外相は、第3回インド洋会議で演説を行ったほか、サイドラインでウィクラマシンハ・スリランカ首相を表敬、中根外務副大臣、カマル・バングラデシュ計画大臣と会談した。
【BIMSTEC】
8月29日:第16回BIMSTEC(下記注)閣僚級会合がカトマンズで実施され、VKシン外務担当閣外相が演説を行った。
8月30日-31日:第4回BIMSTEC(注)首脳会合出席のためモディ首相はネパールを訪問し、同会合の本会議で演説を行ったほか、BIMSTEC各国首脳と共にバンダリ・ネパール大統領を表敬した(詳細、今月の注目点参照)。また、モディ首相は、同首脳会合のサイドラインで、オリ・ネパール首相と会談し印ネパール間でMOUが交換されたほか、シリセーナ・スリランカ大統領、ハシナ・バングラデシュ首相、プラユット・タイ首相、ウィン・ミン・ミャンマー大統領、ツェリン・ワンチュク・ブータン暫定政権主席顧問と会談した。
(注)BIMSTEC(The Bay of Bengal Initiative for Multi-Sectoral Technical and Economic Cooperation:ベンガル湾多分野技術経済協力イニシアティブ)は、インド、ネパール、ブータン、バングラデシュ、スリランカ、ミャンマー、タイをメンバーとする地域経済協力枠組み。

4. 日印関係
8月27日-28日:中根副大臣は、ベトナムで開催されたインド財団等主催の「インド洋会議2018」(注)に出席し、約250名の参加者を前に、「自由で開かれたインド太平洋戦略」の意義・重要性を説明しつつ、同戦略の下での日本の取組についてスピーチを行った。中根副大臣は、ベトナム滞在中、同会議に参加していたスワラージ・インド外相を表敬した。
(注)インド洋会議2018:8月27日から同28日にかけて、インドの主要シンクタンクであるインド財団が、インド政府等の支援を受けて、ベトナム、シンガポール、バングラデシュの学術機関と協力してベトナム・ハノイにて開催した国際会議。今回が3回目(第2回は、スリランカで実施)。この会議では、インド洋地域の主要な国や海洋パートナーと、「Building Regional Architectures (地域構造の構築)」を全体テーマとして、安全保障や開発に関係する様々な問題につき議論が行われた。


今月の注目点:第4回 BIMSTEC首脳会合 におけるモディ首相演説
8月30日-31日にかけてネパールにおいて開催された第4回 BIMSTEC首脳会合にモディ首相は出席し、30日に演説を行ったところ、概要以下のとおり。
1. 今次首脳会合を主催したネパール政府及びオリ首相に心から感謝する。自分(モディ首相)は、本首脳会合に初めて参加するが、2016年にゴアで実施したBRICS首脳会合の際、 BIMSTECリトリート首脳会合を主催する機会があった。そこで合意した行動計画に則り、我々はこれまで以下に述べる素晴らしい行動を実践してきた。
- 初の BIMSTEC災害マネジメント年次訓練の立ち上げ
- 国家安全保障機関の長(National Security Chiefs)による2度の会議の開催
-  BIMSTECの貿易円滑化協定締結に向けた議論における進展
-  BIMSTECのグリッド・インター・コネクション(送電線網連結)における議題の合意
2. 何世紀にもわたり、我々は民族、歴史、文化、言語、食を通じて繋がってきた。一方にはヒマラヤ山脈一帯があり、もう一方にはベンガル湾が存在する。ベンガル湾はインド洋と太平洋の間に位置し、我々の発展、安全、前進にとって特別な重要性を持っている。したがって、インドの「近隣第一政策」、「アクト・イースト」政策がこのベンガル湾において全盛を迎えているという事実は何ら不思議ではない。
3. 我々は皆発展途上国であり、平和、繁栄、幸福の実現が最大のプライオリティである。しかし、今日、相互に影響し合う世界において、これらを一国で達成することは誰もできず、ともに協力し合う必要がある。その最大の機会が連結性(Connectivity)、すなわち、貿易、経済、移動、デジタル、人の移動の連結性である。将来的に、 BIMSTEC内における沿岸輸送と自動車に関する合意に向けた会議を実施することも可能であるし、インドは BIMSTEC内の投資家間の連結性促進のためのスタートアップ会議(BIMSTEC Start Up Conclave)の開催の準備ができている。
4. デジタルの連結性について、既にインドはスリランカ、バングラデシュ、ブータン、ネパールにおけるNational Knowledge Networkの強化にコミットしており、今後は、さらにミャンマーとタイも加えて、これを拡大したいと考えている。自分(モディ首相)は、すべての BIMSTEC加盟国が今年ニューデリーで開催予定の印モバイル会議(India Mobile Congress)に参加してくれることを期待している。
5. 我々を繋ぐ特別な存在は仏教と瞑想である。インドは、2020年に国際仏教徒会議(International Buddhist Conclave)を開催する。そこに私はすべてのBIMSTEC加盟国を主賓として招待する予定である。若者同士の繋がりを促進するため、インドはBIMSTECユース・サミット、BIMSTECバンド・フェスティバル、さらに、BIMSTECユース・ウォーター・スポーツの開催を考えている。BIMSTEC加盟国の若者のため、ナーランダ大学における30の奨学金及びGIPMER協会における先進医療研究に関する12の奨学金が与えられる。さらに、同大学には、ベンガル湾の芸術、文化、海洋法等に関する研究のためのベンガル湾研究センターが設置される予定である。ここで、我々は互いの言語の繋がりについても研究することができる。
6. ヒマラヤ山脈とベンガル湾によって繋がるBIMSTEC加盟国は、洪水、竜巻、地震等、頻繁に自然災害に直面している。そのため、災害救援対策として互いに連携して人道支援にあたることが非常に重要である。地理的に、同地域は世界的な海洋貿易航路と繋がっており、ブルー・エコノミーもまた、我々の経済にとって特別な重要性を占めている。将来のデジタル時代では、サイバー・エコノミーの重要性が、ますます高まるだろう。したがって、自分(モディ首相)は、来月インドで実施されるBIMSTEC多国間軍事演習及び陸軍指揮官会議を歓迎する。さらにインドは、BIMSTEC加盟国間の三軍間人道支援・災害救援(Tri Services HADR)訓練を開催する予定であり、さらに第2回BIMSTEC災害マネジメント訓練の準備ができている。また、ブルー・エコノミーに関し、インドはBIMSTEC加盟国内の若者によるハッカソン(Hackathon)イベントを主催する予定である。
7. この20年間、BIMSTECは、目覚ましい進歩を遂げてきた。しかし、我々の前にはまだ長い道のりがある。我々の経済統合をさらに深化させる機会が沢山あるし、国民もまたそれを望んでいる。第4回BIMSTEC首脳会合が、その期待に応えられる重要な機会であるとともに、本首脳会合の成功が、今後のBIMSTEC強化にむけた重要な節目となるであろう。