寄稿・提言

キャリアパスの改革で日系企業はインドでのビジネスに本腰を

2011年12月26日掲載


 インドは巨大な潜在力を持ち、地政学的な観点やビジネスチャンスを考慮すると日本にとって非常に高い重要性を持つ国でありながら、日印間の人的交流が大変遅れているということは周知の事実であろう。そこで、「日系企業には積極的にインドへ進出してもらい両国の人的交流を促進させる担い手になって頂きたい。」という意見をよく耳にするになった。日系企業のインド進出によって両国の人的交流が促進されることはインドとの関係性を考えるうえで有益なことであるのは間違いないだろう。しかし、現在の日系企業にはインドで成功を収めるという気概が足りない気がするのは私だけだろうか。すなわち、批判を恐れず敢えて言えば、日系企業にはインドでのビジネスにおける本気度が足りないということである。
 知っての通りインドでのビジネスにおいては脆弱なインフラや複雑な法制度、日本人とは大きく異なる気質を持つインド人の管理など、特有のリスクがあり、世界の中でも特にビジネスがやり難い国であると言えるだろう。世界銀行とその傘下である国際金融公社(IFC)が今年発表した、世界各国のビジネス遂行の容易さを表す指標である「Doing Business 2011」によると、対象となった183ヶ国中インドは134位とアジア諸国の中でかなり低い順位である。上記のような特有のリスクがあり、やりがいのある奥が深いインドでのビジネスにおいて、日系企業としては物事に果敢に挑戦できるだけの強いマインドと情熱を持つ人材を配置し、先例を学んだり独自の工夫を凝らしたりすることで、本気でビジネスに取り組むことにより、大きな成果を収められるはずだ。しかし、現在の日系企業のインドでのビジネスにおける本気度はどうだろうか。
 日系企業の場合、駐在員をインドに送り込む際には他の国でのビジネスと同じように、3年ほど赴任させるケースが一般的である。しかし、インドのようなやりがいのある奥が深い国を攻略するにあたっては長期的な戦略を持って臨む必要があり、駐在員を数年単位という短期間で替え続けるのは本気度に欠けるのではないだろうか。10年間とまではいかなくとも、インドに適した良い人材にはそれなりの年数、現地に留まってもらうという体制を取るべきである。また、それに伴いキャリアパスを見直す必要があるのではないだろうか。現代の潮流では、いまだに将来のリーダー候補である人材にはキャリアパスとして先進国でのビジネスを経験させる日系企業が多いように感じる。世界をリードしている文化に触れる、という観点からは先進国での経験も確かに重要だが、やりがいのある新興国・途上国で経験を積み、成果を収めた人材を次世代のリーダーにする、といったキャリアパスへ転換する時代が到来しているのではないだろうか。特にインドは日本とはあらゆる環境が異なるため、駐在員にとっては心身共に厳しい経験となるだろう。そのような厳しい環境の中でビジネスにおいても成果を収める人材こそ、次世代のリーダーにはふさわしいのではないだろうか。また、インドを経験した人材は少なくとも他に比べ、面白味がある多様性を持っているように感じる。そのような背景を持つリーダーが増えれば、同質性が極めて高く多様性の欠如が問題視される日本のリーダー層に変革が生まれるのではないだろうか。
 兎に角、インドでの実績をキャリアパスにおいて重要視する風土を日系企業が築くようになれば、それに伴い各々の企業がインドでのビジネスへ本気で取り組むようになるはずだ。その結果として、インドで成功を収める日系企業が飛躍的に増えることを期待したい。
                    (了)
“筆者について
今年7月~10月末までチェンナイの現地企業でインターンシップを経験。
日系企業のサポート(不動産仲介や航空券やレンタカーの手配、外国人登録のサポート等) を中心としたコンサルティング業務を行う”