寄稿・提言

中国周辺諸国との連携を強化せよ

2010年10月14日掲載


 今回の尖閣諸島への中国漁船の領海侵犯と我が国巡視艇への体当たり・公務執行妨害、わが国に対する中国政府の恫喝と理不尽な対日制裁措置、さらには日本政府への「謝罪と賠償」の要求は、日本国民の怒りと対中嫌悪の増大をもたらした。さすがに、腰の定まっていなかった民主党政権も、菅総理、前原外相をはじめ一致して「東シナ海には領土問題は存在しない」とのこれまでのわが国の正論を内外に繰り返し、謝罪・賠償要求を蹴った。枝野民主党幹事長代理は「中国は悪しき隣人」と喝破した。
 中国が得たものはほとんどない。かねてから国益に無関心な一部の政治家や日本国民も、中国という国の正体を理解し、尖閣諸島が日本固有の領土であることを教えられた。米国は、日米安全保障条約は尖閣を含めることを改めて内外に明らかにした。東南アジア諸国も警戒心を新たにし、米国との連携を強化した。フランスのルモンド紙は「中国が粗暴な顔をさらし」、東シナ海や南シナ海沿岸諸国に「恐怖を呼び起こした」と批判した。
 しかし、中国はいったん決めた国家戦略を容易には放棄しないだろう。わが国が尖閣諸島をはじめ領土領海を守るために今後とるべき国内措置については、当掲示板への投稿でも多くの正論が出ているので、私は外交を論じたい。要は、中国周辺で対中脅威感を抱いている親日国との連携を強化することである。
 まず、日米同盟をより堅固にすることだ。普天間基地問題も、沖縄と真剣に協議し、必要な支援を惜しまず、早期に決着させる必要がある。海兵隊を含めた米軍の沖縄駐留の重要性は、今回の事件であらためて証明された。沖縄の心ある人々が今回の件で米軍駐留に理解を深めたと期待するのは、無理だろうか?
 つぎに、中国と領土領海問題を抱え脅威にさらされているインドや東南アジアの友邦との連携を強化することだ。これら諸国はいずれも親日国であり、わが国と基本的価値観や対中脅威感を共有する。最後に、中国との関係を重視しながらも、警戒心を持っている中央アジア諸国との関係を一段と強化することだ。これら諸国は、貴重な鉱物・エネルギー資源を有しており、すべて親日国である。
 インドは、1962年に中国解放軍の侵入を受け、押し戻したものの、カシミールの一部を中国に占拠されており、また東北のアルナチャル・プラデシュ州のヒマラヤ国境では国境が確定できていない。最近中国は、アジア開発銀行がアルナチャル・プラデシュ州で行おうとしたプロジェクトに異議を唱えた。マンモハン・シン首相が自国の一州である同州を訪問しようとした際には、訪問の取りやめを要求した。勿論、インド政府は一蹴して、シン首相は訪問した。核を保有するインドは、中国との経済的互恵関係を重視するが、中国の無理難題には一切譲歩しないこととしている。ちなみに、中国は、友邦パキスタンのアラビア海沿岸、国際的異端児ミャンマーのベンガル湾沿岸に加え、スリランカにも港を建設しつつあり、ネパールのマオイスト政党を応援することと併せて、四方からインドを締め上げる「真珠の首飾り」戦略を推進している。
 東南アジア諸国は、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、インドネシアと、すべての南シナ海沿岸国が中国の領土・領海要求にさらされている。中国は、南沙諸島のみならず、自国から遠い西沙諸島の領有権、さらにはインドネシア海域にまで領海を主張している。中には、中国の艦船と海上で銃火を交えた国もある。ベトナムは、歴史的に中国王朝の侵略を受けたのみならず、1979年にも共産中国から侵略を受けて、押し返した国である。最近、ベトナム政府は、最初の原子力発電所を、潜水艦の供与を条件にロシアに発注したが、これも対中国牽制である。
 これら諸国は、日中のやり取りを固唾を飲んで見守っていたが、日本政府は「屈服」したと受け止め、落胆しているものの、今後の対応についてはわが国との連携強化を望んでいる。中国は太平洋の西半分を押さえ、さらにはインド洋にまで進出する海洋戦略を進め、空母の建造など、着々と手を打っている。しかし、中国人も実利を重んじる国民である。中国共産党政府は、弱みを見せると増長するが、毅然とした相手には一目を置く。国際社会が反発し、特に中国周辺の自由と民主主義を重んずる東アジア、東南アジア、南アジア、中央アジアの各国と日本が連携し、これに米国や豪州・ニュージーランドが協力する場合には、中国も一定の自制を働かせるであろう。
 要は、まずは日本政府や国民が自国の領土・領海を守る堅い意思を示し、次いで国際的にわが国の主張を強く発信し、味方につける外交力を発揮できるかどうかである。鳩山、菅と続く民主党政権は、普天間問題と尖閣問題で失態を犯したが、今こそ教訓を学んで、外交を立て直してもらいたい。

    (日本国際フォーラム 百花斉放より転載)