寄稿・提言

中国は品格ある大国になれ

2013年8月27日掲載


 「大国」中国が、国際的評価を急落させている。
最近の中国のなりふり構わぬ大国志向と国益拡大路線に対する反発の結果である。中国は力をもって諸国に脅威を与えるのではなく、品格のある尊敬される大国になるべきだ。6月11日付け「産経新聞」によると、5日付けの中国の国際情報紙「参考情報」は、英国BBCの調査結果を報じた。世界25カ国、2万6千人を対象としたアンケート(昨年12月から本年4月にかけて実施)によると、中国の国家イメージは昨年の5位から9位に落ちた。否定的評価が39%で、肯定的評価が42%。中国にもっとも否定的なのはフランス(68%)、ドイツ(67%)、米国(67%)など欧米諸国の由。人権や貿易摩擦が原因のようだ。日本(64%)、韓国(61%)での評判も悪いが、それを上回る悪さだ。これまで中国の大量「援助」(?)により高い評価であったアフリカ(7~8割)でも、10ポイント評価を落とした。中国のアフリカ進出は、資源の開発輸入、中国労働者の移住などにより新植民地主義であるなどの批判が起こりつつあるからであろう。

 6月7~8日のオバマ大統領との首脳会談で、習近平国家主席は「米中間の新型大国関係」を主張した。「広い太平洋は米中を受け入れるスペースがある」として、太平洋における覇権を米中で分けたい意欲も示した。習近平国家主席は、就任直後、かつての中華帝国の栄光(と領土?)を取り戻すと言わんばかりの意欲を示し、周辺諸国を懸念させてきた。さすがに米国を圧することができないことは分かっているのであろう。そこで、米中による世界のG2支配を目指しているわけだ。隣の大国ロシアは、中国の眼中にないのかもしれない。

 中国は、各国の知的所有権を犯し、歴史的事実をゆがめて尖閣諸島は日本が「盗んだ」と強弁して日本から奪おうとし、東南アジア諸国の沖合にある南沙・西沙諸島も同様の論理で武力領有する意図を隠さない。インドとも、カシミールや東北部国境で強圧的態度をとる。中国発の大量のサイバー攻撃を警告したオバマ大統領に対し、習近平国家主席が中国もサイバーテロの「被害者」だと言ったのは、ジョークにしてはタチが悪い。

 強大になった中国といえども、現代の世界ではアジアにおける「華夷秩序」はあり得ないことを理解すべきである。武力により最大の版図となった清帝国の再現を夢見るのは、中国の長期的国益を害するだけだ。あえて過去の栄光をいうのであれば、武力のみならず文化文明で世界をリードし、周辺の朝貢国のみならず遠くシルクロードの諸国にとっても大きな文化的求心力を持った漢帝国や唐帝国に学ぶべきであろう。ハードパワーで脅威を与えるのではなく、優れたソフトパワーと品格を備えてこそ、真の意味で中国は偉大になりうる。いかに共産党独裁国家とは言え、14億人にもなろうとする中国には良識のある人々も多いと思う。中国人の良識や正当な願望に期待しながら、中国が真の意味での大国、単なるBig Power ではなくGreat Powerとなるのかどうか見守りたい。

(本稿は、公益財団法人日本国際フォーラムの百花斉放に、6月11日付で掲載されたものです。)