インド政府、中国製アプリ59本の禁止に続き、さらに47本のアプリを使用禁止に
2020年7月27日
平林 博 日印協会理事長
7月27日付のインド各紙報道によると、インドの電子・IT省(Ministry of Electronics and Information Technology)は、先に禁止したTikTok、US browser、Helo、Likee、SHAREit、MyCommunity,WeChat,CamScannerなど中国製アプリ59本の禁止措置に続き、CamScanner HD、LikeeやBigLiveやHeloの簡易バージョンなど中国製アプリ47本の禁止措置を公表した。47本のアプリは、前に禁止したアプリに似たアプリを含む由であり、インドではクローン・アプリだと皮肉交じりに報じられている。
禁止の理由は、インドの主権、領土保全、国防上の必要性とされており、中国による国境地帯でのインド領への野心やインド経済への影響力を警戒したものとされる。
なお、インドでは中国製のアプリはスマホ保持者の3分の2が使用している由。
インドで生活し事業を行う日本人や日本企業も注意していくべきところであろう。47のアプリ名は公表されていないが、詳細は、電子IT省などのHPで公表されると思われる。
先にブータンの西部、インドとつながるドグラム回廊への中国によるインフラ建設でブータン・インドとの関係が悪化したが、最近ではブータン東部でも問題が発生した。ブータンの東部、インドのアルナチャル・プラデーシュ州に接した自然公園Sakteng Wildlife Sanctuaryに対する世界銀行グローバル環境ファシリティ(Global Environment Facility, GEF)による資金援助について、中国はこの地域は「紛争地域」であると言い出し、資金援助の対象とすることに反対した。中国は、かねてから、インドが実効支配するアルナチャル・プラデーシュの帰属は決まっていないと主張し、同州とチベットとの国境線画定ができないままになってきたが、今回はブータン領まで巻き込んできたわけである。たまたま議長であった世銀日本人担当者の努力により、ブータンの立場も記録にとどめられたが、またまた中国の領土拡大の意図が明らかになり、インドのみならずブータンと中国との関係が悪化している。
近年、インドの北、ブータンの西に位置するネパールへの中国の影響力は強まりつつあるが、中国はブータンに対しても領土的野心を隠そうとしなくなったことにつきインドの猜疑心は深まるばかりである。
インドの最北西部ラダック地方における人民解放軍との衝突、その際の20人のインド将兵の犠牲で緊張した印中関係を契機として、インドの中国に対する反発と対抗措置は収まる気配がない。