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【日印協会 理事長 特別寄稿】安倍総理訪印に関連して

【特別寄稿】安倍首相のインド訪問:具体的協力案件の多さと日印の親密さを見せつけた

2017年9月15日 日印協会理事長 平林 博

以下は、今回の安倍首相の訪印を受けた個人的な観察と評価である。

Ⅰ.意義と印象

9月13日から14日まで安倍首相はインド・グジャラート州を訪問し、モディ首相との首脳会談のほか、新幹線プロジェクトの起工式、スズキのグジャラート工場の開所祝福式(実際には2月から操業)、平和の象徴ガンジー・アシュラム(旧ガンジー邸兼道場)の訪問などを行った。
今回は、首都デリーを訪問しなかったので、異例の訪問となったが、安倍首相には、インド国内で経済改革の先頭を切るグジャラート州、そこで長年にわたり州首相を務めたモディ首相への特別の配慮があったであろう。 また、両首相とも、日印関係特に安倍・モディ両首相の特別親密な関係を世界に発信する戦略があったと思われる。
今回の安倍首相訪印で何より印象的だったのは、インド側の大歓迎ぶりである。到着地となったアーメダバードの空港にはモディ首相が直々に出迎えてハグを繰り返した。安倍首相は、インドの政治家が良く着用するクルタとネルー・ジャケットに着替え、両首相と明恵夫人はジャスミンとマリーゴールドの花で飾られたジープのオープンカーに同乗してパレードした。町までの沿道では、グジャラートの人々が多数並び、日の丸の小旗が振られた。筆者の長年の経験では、天皇、国王(女王)といった特別の元首の訪問でもない限り、首相が出迎えて一緒にオープンカーで行進するということはほとんどないから、今回の歓迎は破格といってよい。
日本からの経済協力や投資、そして安全保障面での協力(中国の牽制を含む)など、ここ数年の日印関係は画期的に進んでいる。特に、安倍首相とモディ首相のウマ(英語で言うChemistry )はよく合っている。森首相とヴァジパイ首相が開始した「日印グローバル・パートナーシップ」は、その後、小泉首相とシン首相によって「戦略的グローバル・パートナーシップ」に格上げされた。安倍首相とモディ首相は、さらに「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」に格上げしたのであった。「特別」という形容詞は、モディ首相によれば、日印が仏教を縁(えにし)とした精神的絆で結ばれていることを示すのである。両国の親密ぶりを示す演出、マスコミの言う「絵になる」光景であった。

Ⅱ.具体的な成果

14日に行われた首脳会談では、目下アジア情勢における最大の懸案である北朝鮮問題についての共通の立場を確認し、北朝鮮を「最も強い言葉で非難した(共同声明第53項)」が、日印の「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」をさらに推進するための日印二国間の経済、安全保障、人的交流など多岐にわたる協力について話し合い、共同宣言に具体的な合意事項が盛り込まれた。
 
1.最大の目玉はムンバイとアーメダバード間の新幹線プロジェクトの両首相による起工式であった。日本側は、新刊線の建設に必要なあらゆる協力を行う体制である。最初は日本から車体を輸出するが、いずれインドでの工場を建設する。新幹線のために必要な技術や管理のための協力も日本へのインド人の派遣・養成のほか、現地に研修所を作ることになっている。今回は資金協力として、譲許性の極めて高い(償還期間が据え置き期間15年を含めて50年、金利0.10)総額1000億円の円借款(ODA)の供与が約束された。

2.安倍首相の「自由で開かれたインドアジア太平洋戦略」とモディ首相の「アクト・イースト」(東方戦略)をあわせて推進するための「日印アクト・イースト・フォーラム」の設立が合意された。

3.安全保障面での協力については、「価値に基づいたパートナーシップ」への強いコミットメントと「ルールに基づいた」海洋安全保障を謳い、既存の各レベルでの対話、海上兵力の協力(マラバール米印日共同演習)に加え、日印間の防衛技術やデュアル・ユース技術の協力推進、協力関係につき米国のみならず豪州の関与についても言及した。

4.日印によるアフリカ開発への協力のため、「アフリカとの産業回廊と産業ネットワーク」プロジェクトを推進する。インドは、歴史的、経済社会的に東アフリカおよび南アフリカと関係が深いので日本としてもインドと組むことは有意義であり、効果も大きい。中国のアフリカに対する援助がアフリカのためでなく中国のためであるとの批判がアフリカ内外からなされているが、日印は中国を反面教師とするであろう。

5.東北インドへのアクセス(連結性)と開発促進はインドの悲願であるが、日本は協力を約束している。今回は、西ベンガル州と東北インドを結ぶ道路建設に386億円の円借款の供与を約束した。いずれ東北インドとミャンマーとの連結性を確保し、さらにタイへ伸ばして、陸路インドとアセアンを結ぶ連結性を確保するという遠大な協力である。

6.原子力の平和利用における協力強化のため、作業部会を設置。クリーン・エネルギーなどについても種々の計画を推進することになった。インドは、ロシア、米国、英国、フランス、中国、韓国などと原子力協力協定を締結しており、日本はLate comerであるが、日本への期待は大きい。福島以後、日本人の原子力発電に関する姿勢は大きく変わったが、
日本の技術や製品のレベルは世界一級であることに変わりはなく、インドの日本に対する期待は大きい。インドが制定した原子力損害賠償法という障害をどう克服するかが、一つの課題である。
 
7.日本の得意とする「モノづくり」をインドで推進するための「モノづくり」学校の設立合意。すでに、グジャラート州、カルナータカ州、ラジャスターン州およびタミルナドゥ州において4校が開校しているが、さらに増設される予定である。

8.インドでの日本語教育推進のために、5年間で、100の高等教育機関で認証日本語講座を設立し、1000人の日本語教師を育成するという具体策に合意した。
 これは、「さくらサイエンスプラン」(日本・アジア青少年サイエンス交流事業)や「JENESIS2017」(21世紀東アジア青少年交流計画)と合わせて、青少年交流の厚みを増すものである。

9.観光促進のために日本政府の観光局(JNTO)をデリーの設置するほか、さらなるヴィザの緩和、観光ビジネス協力を推進する合意がなされた。日印双方とも観光大国であり(世界遺産はインド35、日本20、2017年現在。日本は2件増える見込み)、双方向の観光振興がなされるが、人口の多いインドから日本への観光客の増大が期待される。

10.オープン・スカイ合意により、両国間の航空便を自由化することになった。これにより、空港での発着枠の範囲内で、日印両国の航空会社が空港の選択や便数など自由に決められることになった。観光やビジネスなどの活性化と日印友好関係の増進に大きく寄与するであろう。

 結論として、日本とインドは今まさに蜜月時代を迎えていると言えるが、日印協力は両国のみならずアジアひいては国際社会全体にとって重要性を増しつつある。「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」は、国際社会の公共財となりつつあるといっても過言ではないであろう。

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