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月間インドニュース(2016年10月分)

内政・経済・外交・日印関係を分かり易くお届けいたします。

1.内政

【連邦議会・州議会同時選挙】
1.冬期国会
10月13日
 アンサリ上院議長は、上院の小政党所属議員、無所属議員、大統領任命議員22名からなる連合を正式に認めた。右連合はNDA(国民民主同盟)、UPA(統一進歩同盟)に次ぐ第3勢力となる。

2.統一民法(Uniform Civil Code)
10月13日
 全印ムスリム家族法委員会(All India Muslim Personal Law Board:AIMPLB)は、記者会見を開き、連邦政府が導入を検討中の統一民法に断固として反対することを宣言した。
メモ:インドでは統一された民法がなく,婚姻や離婚等に関する規則は,各宗教の慣習や規則に従っている。BJPは統一民法導入を提案しているが,少数派コミュニティは反対している。

3.物品サービス税(GST)
10月18-19日
 3度目となるGST委員会が開催された。しかし,税率については合意に至らなかった(次回開催は11月3日)。

【タミル・ナド(TN)州】
10月6日
 アポロ病院は,9月22日にジャヤラリタ州首相が入院して以来初のプレスリリースを発出し,同州首相が長期的治療を必要としていることを明らかにした。

【パリ協定】
10月2日
 9月28日のモディ内閣の閣議決定のとおり,パリ協定をガンディーの生誕記念日である10月2日に批准した。

2.経済 

【金融政策委員会】
10月3日及び4日
インド準備銀行(RBI)は、発足後初めてとなる金融政策委員会(MPC)会合を開催したところ、RBIプレスリリースのポイント以下のとおり。
なお,9月に就任したパテル総裁(ラジャン前総裁の後任,任期は3年間)にとって初めての金融政策会合であり、かつ新たに創設されたMPCの初会合。政策金利の据え置きを予想する声も多かったが、そうした事前予想を覆し、約半年ぶりとなる政策金利の引下げが行われた。
(1)政策金利(レポ・レート)を0.25%引下げ、6.25%とする。
(2)今回のMPCの決定は、経済成長を支えつつ、2017年3月までにCPI5%を達成するという目標及び、中期的にCPI4%(プラスマイナス2%)を実現するという目標と調和した、緩和的な金融政策のスタンスと一致する。
(3)物価については、農業生産における播種の大幅な改善が、食料品のインフレの見通しを改善すると予想している。また足元でインフレ率が大幅に低下したのは、単なるベース効果というよりも、むしろ食料インフレのモメンタムが下方向にシフトしたことを反映したものであり、RBIの政策余地を広げた。円滑な流動性環境や、昨今の銀行による預金利率の小幅な低下は、金融政策行為の伝播を促すであろう。一方でMPCは、公務員の住宅補助に関する第7次公務員給与支払委員会の勧告や最低賃金の上昇等の、潜在的なコストプッシュのインフレ圧力に留意する。従って、2017年3月までにインフレ率は5%に収束するものの、上振れリスクが存在していると予測する。ただし、第2回(6月)、第3回(8月)金融政策声明時点よりも上振れリスク自体は低下している。
(4)国内経済全体については、農業活動の見通しが大幅に改善している一方で、鉱工業部門では、第2四半期始めに、製造業を中心に生産活動に落ちこみがみられた。しかしながら企業心理は第2、第3四半期においても引き続き回復しており、また力強い公共投資や、第7回公務員給与支払委員会勧告による家計支出の後押し等が、鉱工業の見通しを改善するであろう。サービス業においては、第1四半期における活動のペースの拡大が、維持されたとみられる。
(5)経済成長のモメンタムは、公務員給与支払委員会の勧告による、都市部の消費支出の刺激に加え、正常なモンスーンが農業生産及び農村地域における需要を押し上げることにより、加速すると予想される。緩和的な金融政策のスタンス及び、安定した流動性環境は、生産的なセクターへの信用供与の回復をサポートするはずである。しかしながら、継続する世界的な貿易縮小及び、過去と比べて低い貿易利益は、外部需要の更なる縮小へとつながるであろう。従って、2016年度のGVA(粗付加価値)ベースの成長率の見通しは、引き続き7.6%を維持する。
(6)今回のMPCでは、6人の委員全員が利下げの決定に賛成した。議事録は、10月18日に公表される予定。次回のMPCは、12月6、7日に行われ、会合結果は、12月7日に公表される予定。

3.外交 

【インド・シンガポール関係】
10月4日
 3日~7日にかけて,リー・シェンロン・シンガポール首相がデリーを訪問した。同首相は,モディ首相及びスワラージ外相と会談し,共同記者会見において,二国間の経済連携の深化を強調しつつ,能力開発,スマート・シティー,投資促進,航空路線の拡大について言及した。
メモ:シンガポールは,今回,ラジャスタン州ウダイプルに観光トレーニングセンター(Center of Excellence for Tourism Training, CETT)を開所した。またアンドラ・プラデシュ州の新州都のスマート・シティーのマスタープランの策定及びシンガポール・コンソーティアムの入札への参加を始めとしたインドにおけるスマート・シティー拡大への貢献を強調した。インドにとってシンガポールは有数の投資国であり,投資促進のために双方が大臣を指名(インド側:アルン・ジャイトリー財務大臣、シンガポール側:ターマン・シャンムガラトナム副首相)して引き続き協議していく旨合意した。さらに,インドの観光客及び投資の増加に寄与するよう航空路線を拡充。スクート(シンガポールの格安航空会社)がジャイプールへの乗り入れを開始し,インド路線直行便の15個目の都市となった。

【インド・スリランカ関係】
10月4日
 ウィクラマシンハ・スリランカ首相が訪印し,サマラウィーラ外相,サマラウィクラマ戦略開発・国際貿易相,フェルナンド通信・デジタル・インフラ相が同行した。訪印では,ムカジー大統領,モディ首相,スワラージ外相,シン内相,ガドカリ道路交通海運相,プラダン石油・天然ガス相,ドバル国家安全保障担当補佐官(NSA)と会談した。また,世界経済フォーラムとインド産業連盟(CII)が共催する経済サミットに出席した。

【インド・中国関係】
 10月7日
 デリーにおいて,「発展,イノベーション及び,相互利益のための協力」と題し,第4回印中経済戦略対話(4th India-China Strategic Economic Dialogue)が開催された。インド側代表はNITI Aayogのパナガリア副委員長,中国側代表は国家発展改革委員会(National Development and Reform Commission:NDRC)の徐紹史委員長。世界経済の動向や両国のマクロ経済環境,二国間協力の強化等について議論が行われた。
メモ:印中経済戦略対話は2010年に設置され,これまで2011年に北京,2012年にデリー,そして2014年3月に北京においてそれぞれ開催された。今回は2年ぶり,またモディ政権下では初めての開催となる。


【BRICS首脳会合/BIMSTEC】
10月15日-16日
 ゴアにおいて第8回BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ5か国会合)首脳会合が開催された。「ゴア宣言」及び「ゴア・アクションプラン」が発表された。
 あわせて16日,BIMSTEC(ベンガル湾多角的技術経済協力イニシャティブ)首脳リトリート会合及びBRICS-BIMSTECアウトリーチ首脳会合が開催された。
 モディ首相は,BRICS首脳会合及びBRICS-BIMSTECアウトリーチ首脳会合のサイドラインで,習近平中国国家主席,ズマ・南アフリカ首相,シリセーナ・スリランカ大統領,トブゲー・ブータン首相,ハシナ・バングラデシュ首相,ダハール・ネパール首相と会談した。

【インド・ロシア関係】
10月15日
 BRICS首脳会合に先立ち,ゴアにおいて第17回印露年次首脳会談が開催された。プーチン大統領及びモディ首相は共同宣言「地球における平和と安定のためのパートナーシップ」を採択した。また,プーチン大統領とモディ首相は,ビデオ会議の形式でクダンクラム原子力発電所3号機及び4号機の起工式に参加した。
メモ:今回の共同声明では,両国の革新的利益に対する比類なき相互支援及びユニークな個人間の友情に特徴付けられた,長きにわたる相互信頼に基づく「特別・特権的な(Special and Privileged)戦略的パートナーシップ」をレビューするとともに,9月13日に開催された第22回貿易,経済,科学,テクノロジー及び文化協力に関する印露政府間委員会(IGC)の成果を歓迎。また両国間の貿易促進のため連結性がもたらす役割を認識し,物品輸送の時間短縮を通じて地域の経済統合を促進させる南北輸送回廊(INSTC)の履行に関する重要性を確認。さらに,民生用原子力協力,炭化水素分野における協力,LNG調達、炭化水素エネルギー・パイプライン及び再生可能エネルギー分野の協力について「エネルギーの橋」と銘打ち更なる協力を打ち出した。
防衛分野の協力については,本年のロシア極東における印露陸軍共同演習INDRAに対する満足を表明するとともに,訓練,共同演習及び両国軍間の制度化された交流拡大の必要性を強調した。また,ハイテク軍事装備の共同設計・開発・生産分野の成果を評価し,Ka-226Tヘリコプターのインドにおける生産のためのジョイントベンチャー設立を評価した。さらに,2016年末に印露軍事産業カンファレンスの開催及び二国間科学・テクノロジー委員会の設立を歓迎した。

【インド・ブラジル関係】
10月17日
 ゴアにおいて,印ブラジル首脳会談が実施された。印ブラジル共同声明が発表された他,両国間で3つの覚書が署名された。

【インド・ミャンマー関係】
10月16―19日
 アウン・サン・スー・チー・ミャンマー国家最高顧問(外相兼任)が,BRICS-BIMSTECアウトリーチ首脳会合に参加するため,ゴアを訪問した。続く17日-19日,同国家最高顧問は,インド公式訪問のためデリーに移動した。ムカジー大統領公邸で歓迎式典が開催され,モディ首相が昼食会を催した他,スワラージ外相と会談が行われた。テロ,国境画定問題,海洋,連結性,安保理改革,BIMSTEC等につき幅広く議論が行われた。


4.日印関係 

【高速鉄道協議】
10月7日
 デリーにおいて,インド高速鉄道に関する第3回合同委員会が開催された。本年2月にインドのムンバイにおいて第1回会合,5月に東京において第2回目を開催したものに続くもの。同委員会では,事業スケジュールや事業の具体的な進め方について議論し,インド側事業主体の体制整備や高速鉄道に係る人材の育成など,ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道計画の進捗が確認された。また,11月中旬に予定されている首脳会談に向けて,両国間で協議を重ねていくことで一致した。

【外務次官対話】
10月28日
 デリーにおいて,杉山晋輔外務事務次官とS.ジャイシャンカル・インド外務次官との間で,第12回日印外務次官対話が開催された。11月中旬に予定されているモディ首相訪日を控え,政治・安全保障,経済関係を含む二国間関係,地域情勢,グローバルな協力関係など幅広い課題について意見交換を行った。
メモ:両次官は,両国をとりまく戦略環境について,今後,大きく成長が見込まれるインド洋・太平洋地域を自由で開かれた地域として発展させることが,地域全体の安定と繁栄のために不可欠との基本認識を共有し,このために両国で緊密に協力を進めることで一致した。二国間関係については,特にムンバイ・アーメダバード間の高速鉄道計画を着実に進展させるとともに,両国の産業協力を支える基盤の整備や人的交流の拡大を通じ,「日印新時代」に相応しい強固な二国関係を築いていくことで一致した。国際情勢については,拉致問題や核開発を含む北朝鮮の行動は国際社会の秩序に対する挑戦であり,断固とした対応が必要であること,テロはいかなる理由によっても正当化されず,世界的に拡大するテロへの対策のために連携していくこと,国連安全保障理事会改革を前進させるために日印協力を進めていくことで一致した。

今月の注目点: 第8回BRICS首脳会合
 今回のBRICS5か国首脳では「責任ある包含的で集団的な解決策を立てる(Building Responsible, Inclusive and Collective Solutions)」をテーマに,国際社会の各種課題や持続的開発のための連携を更に強化することで一致した。まず,新開発銀行(NDB)及び緊急時外貨準備金基金(CRA)の運用化が,グローバル経済及び国際金融構造に大いに貢献する旨確認するとともに,BRICS加盟国における再生可能エネルギー事業に対するNDB初の借款の承認,およびNDBによる初の人民元建てグリーンボンド発行を歓迎した。安保理改革では,国連がグローバルな課題に適切に対応できるよう,より代表性かつ効率的なものとし,発展途上国の代表性を高め,安保理改革を含む国連の包括的改革の必要性を再確認した。中国及びロシアは,国際問題におけるブラジル,インド及び南アフリカの立場と役割の重要性を強調し,国連におけるより大きな役割への願望を支持した。
経済に関しては,グローバル経済の回復が進む一方で,グローバル経済の下方リスクが継続しているため,強く,持続可能で,均衡の取れた成長を達成すべく,金融政策,財政政策,構造政策,あらゆる政策を個別及び共同で取る決意を再確認。均衡の取れた持続可能な成長のため,金融政策に加え構造改革及び財政政策の重要性を強調した。またIMFへのコミットメントを再確認し,新興経済国の取組に対する支援,多極的貿易システム及びルールに基づく,透明で包括的な貿易システムの基盤としてのWTOへの支持を強調した。国際協力及び財政協力の主要フォーラムとしてのG20の役割を認識し、G20杭州サミットの結果を実施する重要性を強調した。また,パリ協定の遵守及び長期的な温室効果ガス排出の削減のため原子力エネルギーが果たす役割の重要性を確認するとともに,パリ協定の採択及び多くの国による4月22日の署名及び11月4日の発効を歓迎した。
テロに関しては,いかなる形態のテロも強く非難し,いかなる理由があろうとも,テロ行為は決して正当化され得ない点を強調。国際テロと戦うための協力強化に合意し,化学・生物兵器テロの脅威に対処するための国際協定の交渉立ち上げを支持し,2016年9月14日の第1回BRICSテロに関する共同作業部会立ち上げを歓迎した。さらに国連が果たすテロに対するマルチの取組の調整に係る中心的役割を強調し,全ての国が関連安保理決議の効果的履行を行うよう促し,国連のテロ対策の枠組みの有効性向上へのコミットメントを再確認した。
 今回のBRICS首脳会合に対する各国報道は,BRICS衰退を論じるものが多く見られ,シリア紛争に関する見解の相違やテロに対する対応の濃淡も指摘されているが,世界の主要途上国が集まる組織として,その重要性は引き続き大きい。実際,最近は経済分野だけでなく政治安全保障分野でも存在感が大きくなってきている。特に今回はBRICSとBIMSTECがアウトリーチ会合を行ったが,地域的枠組みとしてインドがBIMSTECを重視していることの現れであろう。2017年の次回首脳会合は中国で開催される。